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志村一隆「ロックメディア」
2009年1月掲載
ロックメディア 第22回

マイクロ・ブロギングの可能性
Digital Hollywood Fall 2008レポート

写真1 年末のテレビで、つぶやきシローさんの芸を見た。久しぶり。「チャリンコで、1回も足を付かずに家に帰ったとき、ヤッターって思うよね」オモロかった。
そのあと、NHKでやってた昭和おもしろ亭で、桂米丸さん(小さい頃、中野坂上でよく見かけた)の高座を見ました。こっちは、「銭湯で、上半身の服全部まとめて脱ぐ人っていますよねぇ」っていう噺でした。
両人とも、聞いてる人に「こんなことってあるよねぇ」っていう話に、「あるある。そうそう。」っていう共感を誘って笑わせる。
最近は、「そりゃないだろっ」というツッコミで笑わせるものが多いので、シローさんの芸は新鮮だった。

つぶやきサイト「Twitter」で、つぶやく中身

 「つぶやき」=「独り言」は元来、人に聞かせるもんじゃない。つぶやきに、「違うだろ!」ってツッコマれたら、ちょっと傷つく。
Twitterは、つぶやきをインターネットで公開するサイトだ。これはちょっと怖い。独り言を公開してなにがオモロイのか疑問に思ってしまう。
Twitterのつぶやきは、今何してるか?どこにいるのか?、近況報告をするくらいだ。これなら誰にも否定されずにすむし、自分のつぶやきは、マイミクしか見れない(探せば見れるけど・・・)。

他人のつぶやきは聞きたい

 皆さんは、つぶやきを公開するのはイヤだけど、他人のつぶやきには興味ないだろうか。電車でブツブツつぶやかれるとちょっと怖いけれど、クスッと笑ってしまうこともある。
有名人のつぶやきだったらどうだろう。ゴア元副大統領ティム・オライリーCNNニュースの速報もつぶやきの一種。新聞の「首相の1日」も、Twitterでやれば面白い。

写真2 つぶやきの持つちょっとしたプライベート感が、より親しみを増す。シローさんは、つぶやくから引き込まれてしまう。
ブランド企業、ドラマ、タレント、政治家は、Twitterを利用して自分たちのプロモーションを行っている。ブランド、有名人たちが参入することによって、Twitter登録者が増えている。ゴア氏のつぶやきをフォローしている人は、1万人を超えている。

マイクロ・ブロギングは、3年前のブログ

 リアルな苦情、感想をオンライン上で「つぶやかれる」ことが、カスタマーサービス改善となるケースもある。昨年、コムキャストのサービスマンが家に来ないとTwitterに投稿したら、それを見ていたコムキャスト社員が即手配した、ということがあった。
掲示板と同じじゃないか?という意見もある。しかし、マイミクされている人だけが見れる(探せば誰でも見えるのだけど)のがキーである。この辺は、もうセンス?の問題でしょうか。
オライリー社の資料によると、3年前ブログの利用者は、8対2で個人が法人より多かった。ところが現在、その比率は逆転しているという。
3年前も、自分の食べたものをブログに書いてなにが面白いの???と思ってた人は多数いたはずだ。いま馬鹿にされている「つぶやき」も3年後は、いまのブログと同じ雰囲気になるんではないだろうか。

リアル世界の情報をインターネット語に翻訳

 僕自身も最初バカにしていたのだが、ケータイをiPhoneに代えてから、「Twitterific」をダウンロードして、そそくさとつぶやきに励む毎日だ。なに食べたか、どこにいるのか、僕のTwitterを見れば世間に筒抜けだ。他人のつぶやきも気になって仕方がない。
Twitterにつぶやきを入力する行為は、総して「マイクロ・ブロギング(または、マイクロ・メッセージング)」と呼ばれ、モバイルインターネットが普及し始めたアメリカで注目されている。
Twitterを始めると、なにしろ、自分のように1時間に何回もケータイをチェックするようになってしまう。Facebookにも連動していて、僕はネットへの入力をTwitterで済ませている。Twitterは、「メディア接触」の頻度が上がる仕組みなんである。

パソコン=検索、モバイル=つぶやき

 今までネット広告は、ブラウザの履歴情報を集め、履歴にあわせた広告を表示させてきた。今後、モバイルインターネットが普及するにあたり、ブラウザ の履歴情報と同じくらい有益な情報が、マイクロ・ブロギングで得られる。いま、なにをどこでしているのか?自ら公開してくれる。
パソコンの場合は、「検索」にあわせたビジネスが花開いた。モバイルでは、「つぶやき」がキーワードになるだろう。
今までは、「検索」行為が、インターネットの接触手法として、いちばん重要視されていた。けれど、「検索」ってどうもイイ子ちゃん風で、なんか前向きすぎ。つぶやきは、なんの役にも立たないけれど、楽しさがある。
この世の中誰もが好奇心いっぱいの人たちではないし、24時間向学心に満ち溢れているわけではない。インターネットがもっと普通なものになるには、ダラけてても楽しい!と思わせることが必要だ。

マイクロ・ブロギング、インターネットの方向性

写真3 マイクロ・ブロギングのベンチャーたちは、楽しい!に焦点を当てたサービスを提供している。
たとえば、Digital Hollywoodに参加していた「Cha Cha(カッちゃんがいたグループではない)」は、フリーダイヤルに電話して、なにか自分の知りたいことを話すと、Cha Chaのスタッフが調べて、ショートメールで返事をくれる。返信メールには、エリアや話題にあわせた広告が付けられている。
モバイル入力を簡単にできるように、電話に話しかけるとそれをテキスト化=IP化、インターネット語へ翻訳をしてくれる技術もアツい。

 さきほどのCha Chaは、お客さんが電話で吹き込んだ質問を、テキスト化しオペレーターがすぐ答えられるようにしている。テキスト化すれば、ウィキペディアで「検索」も可能だし、コピペも簡単だ。
モバイルが普及、音声入力が普通になり、音声認識技術が発達。ウィキペディアといったボランティアで作られたデータベースを、人力で調べて返信する、「つぶやき返し」サービス、がこれからのインターネットの方向性だろう。

つぶやきシローも、Twitterしないかな。

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