2015年1月24日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

電力と通信と

2014年も通信の世界では、SIMロックの解除が議論されたり、NTTが発表した光サービスの卸売が議論されたり、仕組みについて官民での議論がなされてきたが、通信と同じライフラインと言われ、隣接する業界とも言える電力の世界でも大きな構造的な変化が起きようとしている。電力の世界で耳目を集めるのは、再稼働について取り沙汰される原子力発電についてだが、ここでは、電力システム改革の動きについて、特に通信の立場から眺めてみたい。

電力システムに関する改革方針が2013年に出されて、3段階に分けて自由化が進められていくことになっている。第1段階の広域的運営推進機関の設立が2013年に立法化されたのに続き、2014年6月の電気事業法改正ではその第2段階として、2016年目途に実施となる小売業への参入の全面自由化が謳われた。また、2015年には第3段階として、送配電部門の法的分離による中立性の一層の確保、電気の小売料金の全面自由化を2018年から2020年を目途に実施するという法案が提出される予定である。つまり、ここ数年で、電気料金が全面的に競争状態に入り、その後、電力会社が発電会社と送配電会社に分社化されるということである。

情報通信はもちろん電力がなければ始まらないが、どの辺に着目しておくべきだろうか。

情報通信において電力を使う所を見ていくと、まず、お客様の端末がある。移動体通信ではスマートフォン等、固定通信では、終端装置やルーター、ゲートウェイ等の端末である。次に、お客様の手を離れると、移動体通信の基地局やルーター、伝送装置等の電気通信設備で電力を使っているし、更に、オペレーション・システムや顧客データベース等、通信に不可欠なものもある。これら全てが機能することで通信サービスを提供しているので、当然のことながら電力の安定供給が最重要である。

安定供給とは言っても、少し丁寧に見ておきたい。今年も雪害や地震、台風、大雨といった自然災害が土地土地で起こったが、通信サービスの途絶はほとんど伝送路故障と無線の停波である。このうち無線の停波は基地局自体の故障もあろうが、基地局までの伝送路故障と停電によるものも少なくない。バックアップ電源を持っていても停電が長引くと基地局の電波も止まってしまう。また、伝送路故障の際は、通信線と電力線が同じ柱や近隣の柱に添架(てんが、電柱に通信線やTVケーブルを設置すること)されていることも多く、修理等にも電力事業者と連携が求められることが多い。こうして見ていくと、安定供給は送配電会社との連携が重要であることが見えてくる。

もちろん電気料金も注視しなければならない。この観点では自由化の一つのトリガーとなっているスマートメーターにより、発電会社の選択が容易になったことに注目したい。スマートメーターは通信機能があるので、「今日までは○○電力の電気を使ったが、明日からは△△電力の電気を使う」ということが可能になる。価格競争が起きると共に、それに応じた賢い使い方が重要となるだろう。

また、電力自由化による新たなビジネスモデルによる影響も見ておく必要があろう。この部分についてはスマートグリッドの観点等からの検討が進められているので、紙幅を割かないが、大まかに見たところでもいくつか想定される。最もシンプルなものでは、電力と通信サービスの小売セット販売がある。ソフトバンクもKDDIも今年になって電力小売の開始について発表しており、セット販売は目前と言えるだろう。電力や電力コンサルその他を含めたワンストップサービスや他の業界も巻き込んだ顧客囲い込みのためのポイントサービスも派生型として出てくるだろう。また、省エネコンサル、ビッグデータ利活用もICT業界に近いビジネスと言え、多くの組み合わせが今後創出されていくだろう(表1)。

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以上、駆け足で電力システム改革について通信の観点から眺めてみた。安定供給という観点からは送配電会社との連携が重要であり、電気料金のコストという観点からは発電会社の選択方法が重要となるだろう。また、電力小売の新たなビジネスによって通信サービスとの組み合わせや情報処理技術の応用範囲も広がって行くと思われる。電力と通信とが相まって付加価値が高く、安価で、安定したサービスが提供されることを期待したい。

(表1)電力システム改革で登場、または活性化すると予想される
ビジネスモデルの例

(表1)電力システム改革で登場、または活性化すると予想されるビジネスモデルの例

(出典:日本経済新聞電子版 2014年9月10日「販売量は20年に22兆円超電力システム改革のシナリオ」より抜粋)

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