2015.6.25 地方創生 InfoCom T&S World Trend Report

広がる新たなサイクルシェアリング

みなさん、今年のGWはどのように過ごされたでしょうか。我が家は、当初、北陸新幹線の開通を受けて「北陸新幹線に乗って日本海の美味しいものを食べに行こう!」などと考えたのですが、福井、石川、富山方面の宿泊先が全く確保できない状況を目の当たりにし、あっさり諦めることとなりました。


そして、新幹線のチケットが取れず、交通手段はマイカーとなったにもかかわらず、家族間ですったもんだした結果、「北陸新幹線が走っていて宿泊先が空いている所」という妙な基準で、長野県の北信地域に行くことになりました。今回の旅行では、現地で自転車を借りて観光スポットを回ってみよういう、我が家としては新たなプランが組み込まれたのですが、晴天の下、北信五岳と呼ばれる美しい山々を遠くに眺めながら、雪解け水で水量豊富な千曲川の堤防や、幾重にも重なる広大な菜の花畑の中などを自分たちのペースで走ったことは、とても爽快でした。またいつもなら観光スポットに向かうたびに遭遇する手前での渋滞や駐車場の順番待ちも全くなかったので、自転車を使った観光スポット巡りは、家族から想定以上の好評を得ることとなりました(自転車で走っている途中、高台から北陸新幹線が疾走する姿を見れたことも溜飲を下げさせたのかもしれません)。


今回私たちが利用したのは、通常のレンタサイクルでしたが、近年、自転車とモバイルを融合させ、環境に配慮した次世代サイクルシェアリングシステムといわれるシステムが、全国各地の自治体などで導入されています。今年の2月には広島市(サイクルポート14カ所、電動アシスト付き自転車150台)、3月には神戸市(同 6カ所、60台)で新たにサービスが開始されました。このシステムが優れているのは、世界初という自転車本体に通信機能やGPS機能、遠隔制御機能(貸出・返却制御や電動アシストのバッテリー残量チェック等)が搭載させていることです。また自転車本体の操作パネルにカードリーダーを搭載しており、事前にWebサイトで会員登録しておけば、スマートフォンや交通系ICカードをかざすことで、その場ですぐに貸出・返却することができます


Webサイトでは、いつでも自転車の貸出可能状況を確認して即予約することが可能であり、自分の過去の利用履歴を確認することもできるそうです。利用料金も、1時間まで100円で30分超過毎に100円ととてもお手頃で、マイカーでの移動なら駐車場の確保が必要だし、マイカー以外での移動なら、なかなか到着しない定期運行バスを待ったり、タクシーで移動することなどを考えると、時間的にも料金的にもお得で便利な場合が多かったりするのではないかと思います。


このようなサイクルシェアリングシステムを導入している自治体は、広島市、神戸市のほかには、仙台市、横浜市などがあり、国土交通省が今年2月に発表した「交通政策基本計画」では、コンパクトシティ施策と連携した交通ネットワークとして、2020年度までに100自治体での導入が目標として掲げられています。


東京都では、江東区、千代田区、港区で、3区合せて800台弱(65ポート)という規模で実証実験が行われており、今年の10月には中央区でもスタートする予定となっています。東京都の検討は、元々はCO2の排出量削減の一環から開始されたものですが、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定して、にわかに取り組みに力が入ることとなりました。2014年12月に発表された「東京都長期ビジョン」の中では、東京都の活力を高めて国際競争力を向上させる交通インフラの1つとしてシェアサイクルが位置付けられ、舛添都知事も「2020年東京オリンピック・パラリンピックまでには、世界の都市に負けないシェアサイクルにしたい」と、今後の普及に意欲を見せています。2007年に導入したパリ市は23,000台(1,700ポート)、2012年のオリンピック・パラリンピックに向けて導入したロンドン市は10,000台以上(700ポート)という規模ですので、東京都の取り組みは、今後益々充実・強化されていくでしょう。


最後に、2020年にオリンピック・パラリンピックの開催を控えている東京都はもちろんのこと、全国の多くの自治体でも、地方創生という観点から、外国人をはじめとした観光客について、滞在中の利便性向上を図ることでいかに拡大させていくか、またその地での観光活動の回遊性をいかに高めていくかが検討されています。また地元住民の日常の移動手段の充実という点からも、新たなサイクルシェアリングシステムは、貢献しうる可能性を有しているので、今後、その普及拡大に向けた取り組みが、全国各地で一層本格化されていくことを期待したいと思います。

情報通信総合研究所は、先端ICTに関する豊富な知見と課題解決力を活かし、次世代に求められる価値を協創していきます。

調査研究、委託調査等に関するご相談やICRのサービスに関するご質問などお気軽にお問い合わせください。

ICTに関わる調査研究のご依頼はこちら

関連キーワード

山内 功(転出済み)の記事

関連記事

InfoCom T&S World Trend Report 年月別レポート一覧

2024(27)
2023(91)
2022(84)
2021(82)
2020(65)
2019(70)
2018(58)
2017(32)
2016(26)
2015(26)

メンバーズレター

会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。

メンバーズ登録(無料)

各種サービスへの問い合わせ

ICTに関わる調査研究のご依頼 研究員への執筆・講演のご依頼 InfoCom T&S World Trend Report

情報通信サービスの専門誌の無料サンプル、お見積り

InfoCom T&S World Data Book

グローバルICT市場の総合データ集の紹介資料ダウンロード