2019年4月5日掲載 ITトレンド全般 ICR研究員の眼

盛況を見せる第3回AI・人工知能EXPO



2019年4月2日〜5日に開催中の、第3回AI・人工知能EXPOに参加した。

筆者は平日の昼間に会場に到着したのだが、今回の会場は東京ビッグサイト駅の前にあるビッグサイトから離れた会場であるにも関わらず、非常に盛況で人工知能への関心が引き続き高いことを強く感じた。

出展している企業がどのような分野で人工知能を活用しているのかについて定量的に数えたわけではないが、筆者の印象ではコールセンタなどで利用されるチャットボット、企業内部での定型業務の効率化(いわゆるRPA)の適用例が多かったように感じた。

AIの導入には「コスト削減を実現するもの」と、「新たな収入源」を目指すものの2つに大別できると考えているが、日本での労働人口の減少や働き方改革の導入を背景に、導入の効果が明らかになりやすい前者が会場内では目立っていたように考えている。

AI・人工知能EXPOでは、ブースでの展示以外にも、出展企業等によるセミナーも実施されている。筆者は4月4日の14時30分から開催された三井住友銀行 ITイノベーション推進部 事業開発グループ長 古賀正明氏が講演されたセミナーに参加することができた。

同氏の講演によると、1993年ごろから三井住友銀行として、ICTの分野に銀行業がどのように関われるのか、ということに取り組んでいるそうだ。開始当初は3名で始めたプロジェクトだったそうだが、銀行員のマインドだけでは考えられることに限界があるとのことで、銀行の外部から人を招き入れ、現在ではメンバーが40名程度在籍しているとのことである。

古賀氏の講演で最も印象的だったのは、人工知能の導入イコール人員削減ではない、ということだ。同行では人工知能を導入することによって効率化した結果、新しいことにチャレンジしていくということが目標として掲げられている。

マイクロソフトとともに開発したチャットボットの導入もその一環で、三井住友銀行の行内で利用を開始したところ、社内のOAに関する問い合わせが月間710件中、ボットで対応が完了したものが640件、人事関連照会が月間3,700件中、ボットで対応が完了したものが3200件とどちらも9割程度をチャットボットで完了できたとのお話があった。 具体的な件数は明かされなかったものの、電話での問い合わせに比べて、問い合わせ件数がかなり拡大したようだが、それを人工知能で解消することができたようで導入の効果は大きかったようだ。

上記の内容は主にコスト削減に焦点を当てたものですが、講演の最後では人工知能を活用した新たな収入機会の拡大を狙った取り組みに関しても言及が行われた。 具体的には、これまで三井住友銀行の顧客企業の出入金などデータを活用することによって、企業の業況変化を予測するというものである。講演によれば、三井住友銀行が人工知能(モデル)の開発を行い、システムの実装についてはJSOLが行うといった役割分担が行われるようだ。

この取り組みでは、三井住友銀行が他社のデータを受け取って、人工知能による解析結果を提供するのではなく、企業の業績予測に関するシステムを販売するという形になる。実際にこの予測がどの程度の精度で提供されるのか、という点は課題としてあるかと思うが、コスト削減に主眼が置かれ活用されてきた人工知能の活用が、新たな収入源を目指すビジネスになっていることが興味深いと筆者は感じている。

いうまでもなく、人工知能をコスト削減に活用することは大事なことであるが、人工知能を活用する利用シーンはそれだけにとどまらないのではないか。そういった意味では、上述した三井住友銀行の取り組みは今後も注視していきたい。

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