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トレンド情報 -トピックス[1997年]
<国内情報>

1996年度の移動体通信市場
-携帯・自動車電話を巡る光と影

(97.4)

 携帯・自動車電話の累計加入数は、2月末で1,968万となった。ペースから見て年度末での2,000万突破はほぼ確実である。ここ数年の累計加入数を見てみると、93年度末が213万、94年度末が433万、95年度末が1,020万であるから、3年連続で前年度の倍の加入数を増やしてきたことになる。
 本稿では、97年度の携帯・自動車電話事業の見通しを考える上でプラス材料及びマイナス材料と考えられる事項を、96年度の動向から探っていくこととする。

●プラス材料

(1)相次ぐ料金値下げ
 携帯・自動車電話のサービスは、ここ数年、年中行事のように料金値下げを繰り返してきた。最近では、96年12月に新規加入料を廃止、97年2月には月額使用料を値下げした。この効果が97年度の当初も継続すると予想される。
 料金値下げから来る加入数の増加が、さらなる新規加入を呼ぶ結果となっている。例えば、少し前までは、外回りの営業マンに携帯電話を持たせるということには「私用に使われてはかなわない」と否定的であったが、今ではむしろ持っている方が当たり前といった感がある。また、私用の場合でも「友達が持っているから私も」とのケースが増えている。

(2)携帯・自動車電話-PHS間の相互接続が実現
 95年のPHSサービス開始以来、両者間での相互通話はできなかったが、96年6月から「PHS→携帯・自動車電話」の通話が、96年8〜10月から「携帯・自動車電話→PHS」の通話が可能になった。但し、これは暫定接続ということで、通常の通話料と比べて高めの料金設定となっている。
 本格接続はNTT側の交換機の対応完了により、97年度後半に実現する見込みであり、これにより通話料金が下がることが期待されている。

(3)音声以外の通信サービスの開始・推進
 95年に「ハイパー・シリーズ」によって9,600b/sでの回線交換データ通信サービスを開始したNTTドコモは、97年2月から1.5GHz デジタル方式にデータ/FAX通信専用料金「データ・レート」を導入した。距離に関係なく、同一都道府県内の場合1分15円で利用できる。また、今春から800MHz デジタル方式によるパケット通信サービスも開始される。
 一方、デジタルツーカー東京は、96年8月から9,600b/sでの回線交換データ通信に使用できる「サイバー・ギガ・シリーズ」を発売した(ツーカーホン関西は9月から発売開始)。販売は好調。また、IDOも97年5月から9,600b/sでのデータ通信サービスを開始する。
 今後の課題は、現在全トラヒックの3%程度と言われている非音声のトラヒックをいかに増やしていくかである。そのため、NTTドコモやツーカーホン関西などのいくつかの事業者は、システム開発会社、大手ユーザーと共同で各種ソリューションの開発に取り組んでいる。

(4)1.5GHz帯事業者の全国サービスが実現
 96年12月にデジタルツーカー北海道及び東北、97年1月にデジタルツーカー北陸、97年2月にデジタルツーカー四国が開業し、1.5GHz帯の周波数を使用するデジタルホン及びツーカーグループの全国サービスが可能となった。デジタルホングループは、統一ブランド「J-PHONE」を採用し、全国サービスをアピールしていく。

●マイナス材料

(1)携帯・自動車電話事業者が販売奨励金を抑える方向
 携帯・自動車電話の販売に当たっては、携帯・自動車電話事業者が販売店に販売奨励金を出し、販売店側ではこれを新規販売時の値下げの原資としていた。その結果、極端な例では「端末価格10円」「1円」などという販売が見られ、これが加入数の増加につながったことは否定できないものの、一方で販売奨励金による営業費の上昇が携帯・自動車電話事業者にとって大きな負担となった。br>  96年秋ころから、携帯・自動車電話事業者は販売奨励金の拠出を抑える傾向にある。例えば、IDOの塚田社長は「加入ペースが落ちてもよいから、96年度下期の販促予算を半分に絞る」との意向を示している(日本経済新聞97年1月30日付)。販売奨励金を値下げに回せなくなれば、従来のように格安での販売方法は取りにくく、「携帯電話とは安く売っているものだ」と考えている消費者に今後どう販売していくべきか、発想の転換が必要となる。

(2)携帯・自動車電話を使用できない環境が増える
 普及率が増えていくと同時に、携帯・自動車電話の使用に対する弊害も社会問題としてクローズアップされてきた。
 この件については、大きくいって3つの問題点がある。1つ目は電車、コンサート会場、ホテルのロビーなど、主に静謐・快適を要求される場所での使用についてのモラルの問題で、タバコやウォークマンの使用などと相通じるものがある。2つ目は、携帯電話から出る電波が点滴やペースメーカーなどの医療機器、また各種警報装置や飛行機の計器に与える影響といった、安全に関わる問題である。3つ目は、自動車運転中の携帯・自動車電話使用による事故発生の問題である。
 携帯・自動車電話事業者やメーカーは、バイブレーターや留守番電話機能付携帯電話、ハンズフリー機能付自動車電話といった新機種で、この問題解決を図ろうとしている。しかし、機能が付いていてもユーザーがそれを使用してくれるか、ハンズフリーによっても運転中通話を行うことには危険が残っているのではないかとの議論があり、一部鉄道会社のように、今後携帯電話を締め出す動きが活発になることは十分予想される。

(移動・パーソナル通信研究部 正垣 学)
e-mail:shogaki@icr.co.jp

(入稿:1997.4)

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