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トレンド情報 -トピックス[1997年]
<国内情報>

1996年度の通信サービスの動き
(長距離/地域通信分野)
(1997.4)

 国内通信分野において、1996年度は「電話料金の価格破壊元年」であり、「業界再編元年」であったといえよう。

●横並び料金から、独自性のある割引サービスの登場
 NTTをはじめとする事業者は、市外通話料金値下げ以外にも、割引サービスを多数提供することで、料金の多様化と需要拡大を図ってきたが、それらは各社横並びの内容で、割引率も多くて20%程度と、欧米に比べれば見劣りするものあった。
 こうした中、各社とも細分化したユーザニーズに応えるとともに、囲い込み強化のため、独自の割引サービスを考案、提供を開始した。初期登録費用が必要なかわりに月額定額料の不要なDDI等の「まる特割引」、契約期間に応じた割引率が高くなるJTの「年々割引」、10分以上の通話であれば25%割引となるTWJの「なが電割引」などである。

●法人向けには公専公による割安電話
 96年10月末に自由化された公専公接続により、東京〜大阪といった主要都市間の長距離料金も70〜90円程度に割安となった。二種事業者の提供する公専公サービスを利用すれば、主要都市間の通話料金が割安となる、自前で専用線を持てないような企業向けのサービスである。しかし、長距離料金が110円にまで下がった現在においては、公専公によるメリットが小さくなったこともあり、提供事業者も多くはない。

●カード会社の登場により個人向けのリセールが浸透
 大企業ユーザ向けには、96年夏より、NTTがスーパーテレワイズを、長距離系3社もそれぞれ対抗サービスを開始した。従来の市外通話割引サービスに比べ、全国規模の名寄せ割引が可能で、最大割引率も25%と大幅であるため、日本も(アメリカほどではないにしろ)本格的な大口割引が登場したとされた。同時にこの大口割引は、特別二種事業者であれば異なる名義であっても名寄せが可能で、いわゆる利ザヤで稼げるというリセールビジネスが成立する内容であったことからも注目を集めた。顧客管理、料金請求・回収のコストをいかに効率化するかが特二事業者の課題であったが、クレジットカード会社との提携によってみごとに解決された。
 一般消費者との接点を持たない特二事業者と、毎月一定の料金収納を行える公共料金の決済を取り込もうとするカード会社との利害が一致し、小口ユーザ向けのリセールがビジネスとしても成立することとなったのである。今までは割引サービスの対象になりえなかった市外通話の利用の少ないユーザも、カード会社の割引メリットを受けることができるため、このサービスの浸透状況によっては、わが国の長距離料金が一律20%引き下げられる状況となる。

●再編の動きがスピードアップ
 長距離料金の価格破壊が進む一方、国内通信だけ、長距離だけといった限定された通信サービスの提供では、グローバル化の進む顧客のニーズに対応できないことから、通信のワンストップショッピングと、欧米メガキャリアの侵攻への対抗が急務となっていた。96年1月の「第2次情報通信改革に向けた規制緩和の推進について」の一環として業務区分の撤廃がなされたことと、12月に合意したNTTの経営形態見直しの決着によって、各社が標榜する「総合情報通信サービス」の提供と業界での生き残りをかけ、再編へのスピードは一気に加速した。
 まず長距離系のJTは国際系事業者ITJとの合併によって、国内・国際のワンストップショッピングを提供することとなった。デジタルホングループの他にもCATV事業者への出資を積極的に行っており、これにより自前の足回り回線を確保する戦略である。
 KDDも国内通信への参入が可能となり、今までNTTに依存していた国内伝送路のコスト削減のため、日本列島環状光ファイバー(JIH)を自前で敷設し、電力系NCCとも業務提携した。長距離系3社もこの光ファイバーの一部を譲り受け、自社ネットワークとして利用する計画である。
 電力系NCCも、従来は圏域内サービスに限定されていたが、電力系NCC同士の連係により全国での長距離サービスが可能となり、同時にKDDとの関係も強化している。
 成長著しかった携帯電話サービスにおいては、そのブランド力と技術力でNTTDoCoMoの一人勝ちと言われたが、次世代方式であるCDMAにおいては、DDIのセルラーグループとトヨタ系のIDOは、技術、調達、サービス提供において提携し、NTTDoCoMoに対抗していく。
 この再編劇の主役であるNTTが目指す先は「グローバルなマルチメディアサービスのプロバイダー」であるが、その相手はまだ決まっていない。バイプレイヤーであるDDI、TWJなども、それぞれの経営資源を最大限に活かせる方向(相手)を模索している最中である。
 来年とはいわず、今年中には、関係者が想像だにできなかったマッチメーキングが成立し、新しいサービス、料金体系が一般ユーザの関心の的となっているかもしれない。

(通信事業研究部 戸田 敦子)
e-mail:toda@icr.co.jp

(入稿:1997.4)

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