トレンド情報
トレンド情報 -トピックス[1997年]
<国内情報>

続々登場、インターネット電話は
既存の電話の脅威となるか
(1997.10)


「国際公専公接続」の解禁に先だって、国際インターネット電話はこの9月から解禁となった。これにより日米間の国際電話が従来(KDD日米昼間3分450円との比較)より8割近く安い3分100円足らずで提供される。当社ではサービス開始以前の試用期間からインターネット電話の契約を行い実験的に利用してきた。そこでインターネット電話の強み、弱みおよび将来の利用形態などを解説してみよう。
  1. インターネット電話には2つの形態がある
  2. 弱みはインターネット部分の混雑による遅延
  3. 主役はインターネット電話?

1.インターネット電話には2つの形態がある
 まず、インターネット電話には、大きく分けて2つの形態がある。一つは、マイクとスピーカを接続したパソコンに、電話機能を持ったソフトをインストールし、インターネットに接続する形態。もう一つは、電話回線からの音声をIPパケット化してインターネットに送出するゲートウェイ(GW)による一般の電話機どうしの通話形態である。「公−専−公」ならぬ「公−インタ−ネット−公」とも呼ぶべき形態である。
 前者のパソコンによるインターネット電話は、マイクから音声を入力すれば、ソフトが音声データをIPパケット化してネットワークに送出する。受信時はその逆でソフトが、受信されたIPパケットからデータを取り出し、音声に変換してスピーカで再生する。今のところ、標準仕様が決まっていないため発着両側で同じソフトを起動しなければならないが、標準化が行われれば電子メールのように気軽に使えるようになるだろう。既にインターネットを利用しているユーザーにとっては、コストはインターネット・プロバイダーへのアクセス料金とインターネット使用料である。さらに他のアプリケーションと併用できるため、マルチメディア通信として今後が期待される。
 後者のGWによるインターネット電話は、今、話題になっている手持ちの電話から発信できるインターネット電話である。この形態は電話網とインターネットを接続するGWの開発によって実現した。東京−ニューヨークで通話する場合をみてみよう。ユーザーは、インターネット電話会社と契約した上で、東京のGWへダイヤルする。つながったらユーザーID等および相手先の電話番号をダイヤルすればよい。ただし、ダイヤル数が30桁近くあるためかなり面倒ではある。コストは、発信側から東京のGWまでとニューヨークのGWから着信側までのダイヤル通話料、およびインターネット使用料となる。具体的にみてみると日米間の国際通信の場合3分100円以下の低料金が実現する。理論的には、既に国内長距離通信で行われているインターネット電話の料金、3分45円〜60円でも可能なはずだ。気になる品質は、当社が利用しているインターネット電話会社のサービスの場合、音質および遅延はほとんど気にならないレベルに達していた。

2.弱みはインターネット部分の混雑による遅延
 上記2つの形態に共通する弱みは「インターネット部分の混雑による遅延」である。この問題については現在、対処のメドが立っていない。RSVP(帯域確保プロトコル:発信時にあらかじめ帯域を確保する通信手順。これにより一旦つながったら他の通信の混雑による影響を受けずに通話できる)技術なども登場しているが、 RSVPの利用者が増えれば増えるほど他の利用者の使い勝手が悪くなり、ネットワーク全体の利用効率は低下する。回線を共有することによって実現する高いコストパフォーマンスがインターネットの大きな魅力の一つと考えれば、 RSVPでは根本的解決にはならないことが理解できよう。
「それではインターネット部分を太くしたらよいではないか」とお考えの方もいるかもしれない。しかし、回線を太くすればその分コスト高となり、既存の電話並みにつながる計算で回線設計を行えば、結局のところ加入電話のコストに限りなく近づきインターネット電話の魅力がなくなる。

3.主役はインターネット電話?
 以上から、GWを使ったインターネット電話は、商談など特別な用件以外の通話で利用されることになるだろう。近い将来には、新しいLCR(最安値回線自動選択装置)が開発され、「通常はインターネット電話を、混雑時には既存の電話回線を自動選択する」といった利用形態が一般的となるだろう。既存の電話回線(長距離・国際回線)は、インターネット電話がつながらない時のバックアップ回線となるわけだ。
 今のところ、 GWを使ったインターネット電話のサービスエリアは、東京−大阪、日本−アメリカといった特定の区間に限られているが、今後急速に拡大していくと考えられる。
 インターネット電話には、いくつかの弱みがある。しかし、その弱みをカバーして余りある「安さ」という強みを持っているのだから、弱みを理解した上で上手につきあっていくことが望ましい。ともかく、インターネット電話は今後の音声通信市場の構造を大きく変える可能性を持っている点を強調したい。

(調査部 今別府 忍)
e-mail:imabeppu@icr.co.jp

(入稿:1997.9)

このページの最初へ


トップページ
(http://www.icr.co.jp/newsletter/)
トレンド情報-トピックス[1997年]