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トレンド情報 -トピックス[1997年]
<国内情報>

構造変化が浮き彫りになった
通信事業者の平成9年度中間決算
(1997.12)


 この程、通信事業者の中間決算が出揃った。通信事業全体としては大きな伸びを示しているのが特徴的である。しかし、細部を見てみると、ここ数年潜行していた構造変化が一挙に表面に出てきたことが分かる。即ち、(1)固定系通信に対する移動体通信の比重の顕著な高まり、(2)固定系通信の中でも電話サービスから非電話サービスへの移行、及び(3)国際通信の伸び悩みの3つである。以下、これら3つのポイントに焦点をあてて通信事業者の平成9年度中間決算を見てみよう。
  1. 固定系通信に対する移動体通信の比重の大幅な上昇
  2. 電話サービスから非電話サービスへの移行
  3. 国際通信の伸び悩み
  4. おわりに

1.固定系通信に対する移動体通信の比重の大幅な上昇
 通信事業全体では、当年度中間期の売上高が6兆6,098億円と前年度に比べ17.1%の伸びを示している。しかし、その内訳を見ると固定系が国内、国際とも料金値下げ、割引制度の拡大等の影響もあって、それぞれ、0.6%、5.4%減少し、全体では0.9%のマイナスとなっている。一方、移動体は53.1%と大きく伸びたものと推計される。
 この結果、全売上高に占める、移動体の比率は34%から45%へと大きく上昇している(通信設備使用料を控除した実質の推計では、42%になる)。今や、売上高で見る限り、移動体は通信事業全体の5割に迫る勢いである。相互接続を始めとする公正競争の議論が従来、固定通信のみを念頭において進められてきたが、こうした数字を見る時、こうした議論のあり方に改めて見直しが迫られていると言えよう。

2.電話サービスから非電話サービスへの移行
 固定系サービスの中でも、電話サービスから非電話サービスへの移行が顕著である。図表2に示す通り、国内固定系サービス全体では売上高が0.6%と小幅であるが減少に転じている。これは、電話が6.5%と大きく減少しているのが影響している。事実、NTTの電話加入数も6,156万4千から6,124万4千と戦後初めて絶対数で減少している。これに加えて、電話収入の減少には、本年2月に実施した長距離通話料金の値下げ、及びカード会社を経由した割引サービスの拡大が影響していると考えられ。このことは、長距離NCC3社の電話収入が揃って、ほぼ10%減少していることに現れている。これに対してインターネットを中心とした需要に支えられて、非電話サービスは、専用が17.8%、ISDNが95.4%、データ伝送が33.6%と大きく伸びているのが注目される。(もっとも、NCC各社が平成9年4月からISDNサービスを開始したことに伴い、従来、電話サービスとして提供されていた電話サービスがISDN通話モードに移行していると考えられるので、この影響を割引いて考える必要はある。)

3.国際通信の伸び悩み
 国際通信各社の収入は図表4の通りである。全体としての売上高が5.4%減少し、国際通信が伸び悩んでいることが分かる。これは昨年11月に実施した料金値下げに加えて、コール・バック、インターネットの拡大等が影響しているものと考えられる。さらに、KDDの売上高の減少率が、8.1%と大きいのに対して、IDCは1.8%の減少に過ぎず、ITJの場合には、逆に2.9%伸びているという事業者間の格差が注目される。この12月には国際公―専―公接続の自由化も予定されており、既存の国際通信事業者の事業環境は一層厳しくなるものと考えられる。

4.<おわりに
 通信各社の通信事業の本業の収益性を示す電気通信事業営業利益は図表5の通りである。設備産業で、しかも、電力、ガス等と異なって、原材料費が0に近い通信事業の特徴であるが、概ね、売上高の減少がそのまま営業利益の減少に反映されていることが分かる。前述した構造変化の中で、各社の今後の戦略が問われているといえよう。

(経営研究部長 福家 秀紀)
e-mail:fuke@icr.co.jp

(入稿:1997.12)

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