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トレンド情報 -トピックス[1997年]
<海外情報>

1996年の米国電気通信業界におけるM&Aの動き

(1997.3)

長距離通信事業者と地域電話会社(特にベル電話会社)の相互参入が認められる等、競争の促進を目的とした1996年通信法の成立後の市場の変化に備えて、まず、パシフィックテレシスとSBCコミュニケーションズ、ベル・アトランティックとナイネックスと、立て続けにベル電話会社どうしの合併計画が発表された。また、USウェストもケーブルTV会社であるコンチネンタル・ケーブルの買収計画を発表し、さらに、第4位の中規模長距離通信事業者であるワールドコムとCAPのMFSの合併計画が明らかにされ、ユニークな組み合わせとして注目された。最後に、長距離通信事業者の大手MCIは、合併先を米国の地域電話会社でなく英国のBTに求め合併計画を発表した。1996年は、予想以上に電気通信業界におけるM&Aが加速した1年であった。

1996年の米国電気通信業界におけるM&Aの動き
2月 USウェスト、米国ケーブルTVグループのコンチネンタル・ケーブルビジョン社を10億ドルで買収することを発表。
4月 SBCコミュニケーションズ(元サウスウェスタン・ベル)、167億ドルでパシフィック・テレシス(パクテル)を買収することに合意。
4月 ベル・アトランティック及びナイネックス、230億ドルの合併計画を発表。合併後の会社の株式市場規模は510億ドル。
8月 米国第4位の長距離キャリヤであるワールドコム、140億ドルでビジネス電気通信グループのMFSを買収する計画を発表。
11月BTとMCI、完全合併計画を発表。

主要なM&Aの概要
新社名及び取得方法 規模
(1995年の数値の合計値)
特徴 進行状況
SBC/パクテル 新社名:
「SBCコミュニケーションズ」
買収方法:
SBCがパクテルを買収(株式スワップ方式)
買収規模167億ドル
収入:216億ドル
アクセス回線数:3,000万回線
従業員数:10万8,000人
南西部及び潤沢なカリフォルニア州市場を受け持つ2つの巨大なベル電話会社の合併により、アジア太平洋ビジネス市場に強いリンクを持つ新会社が誕生する。 現在、カリフォルニア州のみ承認を得られていない。司法省、FCC、ネバタ州については承認済み。(1997年2月現在)
ベル・アトランティック/ナイネックス 新社名:
「ベル・アトランテック」
買収方法:
ベル・アトランテックがナイネックスを買収(株式スワップ方式)
買収規模230億ドル
収入: 265億ドル
アクセス回線数:3,710万回線
従業員数:13万2,800人
合併によりマンハッタンとワシントンDCの2大企業市場を擁し、北東部-中部大西洋岸地域に広がる総収入265億ドルの巨大通信企業が誕生する。 現在、ニューヨーク州委員会は、ナイネックスのサービス品質の問題を重視。承認は得られていない。司法省は承認の方向へ。しかし、FCCの承認も必要。(1997年2月現在)
ワールドコム/MFS 新社名:
「MFSワールドコム」
買収方法:
ワールドコムはMFSの株式1株と、ワールドコム株2.1株を交換することになるが、MFS株主は59%のプレミアムを受取る
買収規模140億ドル
収入: 42億ドル
顧客数: 50万以上の事務用顧客
従業員数:1万1,700人
ファイバー・ネットワーク
ワールドコムとして、11,000マイル以上を運用、MFSとして9,000マイルを建設中52市場で227,000マイル以上を展開。
長距離資産の買収を最も積極的に進めるワールドコムと米国最大の代替市内サービス提供者のMFSとの合併。世界最大のインターネット提供事業者のUUNetも運用.豊富なサービス・ラインアップ。 1997年1月、規模は140億ドル、MFS株1株につきワールドコム株2.1株を交換で買収を完了。
BT/MCI 新社名:
「コンサート」
買収方法:
BTが既に所有しているMCI株20%以外の残りの80%を取得し、BTがMCIを完全買収する
買収規模210億ドル
収入: 420億ドル
従業員数:18万3,000人
太平洋をまたがる最初の通信会社の設立によりAT&Tを電気通信業界のリーダーの位置から蹴落とす。米国長距離市場の20%及び英国内市内及び長距離市場の90%を占め、加えて世界30ヵ国にネットワーク設備を所有することになる。 EU委員会、FCC、司法省でそれぞれ検討中。承認については楽観的見方が多い。

(海外調査第一部 小野 等)
e-mail:ono-h@icr.co.jp

(入稿:1997.3)

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