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トレンド情報 -トピックス[1997年]
<海外情報>

インターネット電話の将来は?
〜海外での論議、実例から〜

(1997.11)
インターネット電話は、格安な通信手段として注目をあびているが、将来的にみてもこの価格優位性は保てるのであろうか?インターネット電話の将来について、海外での論議や実例をもとに述べる。
  1. インターネット電話の宿敵は、インターネット網の混雑。混雑解消方法
  2. 安いだけのインターネット電話には疑問
  3. 魅力的なインターネット電話のアプリケーション

1.インターネット電話の宿敵は、インターネット網の混雑。混雑解消方法
 インターネット電話は、格安な通信手段であるとはいえ、しばしば、その品質の悪さが問題視されている。その原因は、インターネット網が混雑していて、音声パケットの伝送に遅延や欠損が生じてしまうからである。インターネット電話にとって、インターネット網の混雑は宿敵なのである。

 近年のインターネット利用者の急増、ならびに帯域を従来よりも多く消費するアプリケーションの増加が原因で、インターネットの混雑は深刻になってきている。とりわけ、住宅用加入者が市内電話料金もインターネット利用料金も月額定額料金で利用できる米国では、人々に、一度接続した回線を切断するインセンティブが働かないため、最近では混雑はより深刻となってきた。

 この混雑を解消するために、海外ではインフラ面と料金面の2つのアプローチで議論されている。

 インフラ面では、第1に、ネットワークそれ自体を大容量化したり、ルーターを高速化したりする方法である。第2は、インターネットの容量を変更しなくとも、より効率的にネットワークを利用するために、インターネットに何らかのサービス品質(QoS:Quality of Service)保証機能を設けることである。すなわち、現在のインターネットでは、最初にネットワークに送り込まれたパケットは最初に送り出され(FIFO: First In First Out)、どのパケットも一律に扱われているが、本来は、混雑による遅延があっては困るアプリケーション(まさに音声を伝えるインターネット電話)とそれほど困らないアプリケーション(たとえば電子メール)があるはずであり、それを区別して伝送できるようにすることである。具体的に現在考えられているものの1つに、インターネット・プロトコル(IP)を現在のIPv4からIPv6にすることがある。これにより、ヘッダーに異なる識別子を持たせて緊急度等の属性に応じた伝送を可能にする。

 料金面では様々な料金プランが提案されているが、単純なものとしては、不必要な利用を抑えるために料金体系を従量制に変更するというものである。その他では、インフラ面の変更とも関わるが、混雑時だけ追加料金を課すことや、リアルタイム性を要するアプリケーションにはそうでないものよりも高い料金を課すことなどが検討されている。すなわち、インターネット上でも、特急料金と鈍行料金等のように料金の差別化を図ることである。

2.安いだけのインターネット電話には疑問
 インターネットそのものがQoSをもつようになり、料金体系も差別化されるようになれば、リアルタイム性が要求され、他のアプリケーションよりも帯域を多く消費するインターネット電話は、今よりも品質が良くなる代償としてより高い料金が課されることになる。

 いつ頃このようになるかは別にしても、、電話料金が現在よりも値下げされた場合には、インターネット電話の価格優位性は失われることになる。現在、国際的に相互接続料金や国際清算料金が下方修正されつつある。また、国際公専公が解禁になれば、電話料金は値下がりする可能性があるのは、すでに解禁されている英米間の通話料金を見れば明らかである。さらに英米間では、すでに国際単純再販事業者の方がインターネット中継電話事業者よりも安価な通話サービスを提供しており、「インターネット中継電話=格安」の構図は崩れている。

 さらに、現行のインターネット網では混雑時に音声品質が悪化するとの理由で、インターネット網を利用せずに、専用のインターネット回線を設けてインターネット中継電話サービスを提供することが提起されているが、音声をインターネット・プロトコルに乗せるVoice over IP(VoIP)ではなく、フレームリレーに乗せたり(Voice over Frame Relay)、ATMに乗せたり(Voice over ATM)する代替的な手法がある。調査会社のヤンキー・グループは、インターネットによる音声の伝達は第3の選択であり、フレームリレーやATMに次ぐものとしている。実際にカナダのアルファネットはモンディアール・サービスを6ヶ月間のVoIPでの試験を終えた結果、IPはヘッダーが重たくて非効率との理由で、フレームリレー上でIPを用いずに伝送するサービスに変更している。安いだけのインターネット電話は、他の技術進歩や規制上の変更などの外部要因の変化により、存在意義が失われてしまう可能性もある。

3.魅力的なインターネット電話のアプリケーション
 もともと、インターネット電話は、パソコンソフトの形で開発され、パソコン同士での通話を可能にするものであった。現在は、ホワイト・ボードやファイル転送などの様々なアプリケーションが加わり、通話をしながら視覚的なコミュニケーションも可能な、魅力的なものとなってきている。

 また、米国では、テレマーケティングが盛んであるが、インターネットを利用したインターラクティブな販売活動が行われている。各長距離事業者は、コンピュータ・テレホニー・インテグレーション(CTI)の一種である、ウェッブ・サイトと電話サービスとを結びつけたサービスを提供している。例えば、AT&Tの「Project iA」サービスがあるが、顧客は、インターネット画面上の「Call Now」アイコンをクリックしてエージェントに電話番号等の個人情報を送信して、電話網で折り返し電話をしてもらい、画面を見ながら注文をすることができる。このサービスを利用するには、顧客は、ウェッブ・サイトを見るための回線と通話をするための回線として電話回線を2回線必要とする。しかし、これが、電話サービスではなくインターネット電話と組み合わされるようになれば、電話回線を2回線持たない顧客も、インターネット画面を見ながら通話(注文)できるようになる。ユーザにとってもエージェントにとってもコミュニケーションが広がり魅力的である。

 パソコンが普及し、インターネットが人々に浸透していけば、将来的には、通話だけでなく、様々なアプリケーションと結びつけられたものが、魅力をもつようになっていくであろう。

(海外調査部 横山 邦江)
e-mail:yokoyama@icr.co.jp

(入稿:1997.11)

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