ホーム > ICR View 2009 >
ICR View
2009年5月掲載

次世代に残す4T融合産業を

社会公共システム研究グループ
グループリーダー 高橋 徹
 第4次経済対策とする平成21年度の補正予算が5月13日に衆議院を通過した。これまでにも、短期的な景気刺激策の一環とする定額給付金、高速道路1000円均一料金、そしてエコポイントなど、その効果を疑問視する声もあるものの、消費者の多くはそれなりに反応しているのが実情ではないでしょうか。
補正予算にしても、短期的なバラマキ予算だとする批判もあるでしょうが、今日の世界的な経済情勢であるならば、大勢はやむなしというところでしょう。
ただし、その財源となる国債という大きな借金を後世の残してしまうことが大問題であり、従って、次にやるべきことは、借金返済に貢献できる新しい成長産業を育成し、雇用の拡大につながる投資を行うことといえるでしょう。

 狙うべきところは、日本が誇る先端テクノロジーであるICT(情報通信),BT(バイオ)、NT(ナノ),ET(環境)であり、それらが融合した革新的技術と、それによる新しい産業群の創出であると考えています。21世紀の新産業は4T融合産業とでもいえるでしょう。
このような狙いはハイテク産業の育成に力を注いでいる各国でも同様です。

 最近、NHKテレビやNatureで紹介されたシンガポールのバイオポリス、フュージョンポリスの開発がわかりやすい事例かもしれません。バイオポリスは、BT関連産業をエレクトロニクス、化学、エンジニアリング産業に次ぐ経済の第4の柱と定めて世界中から人材を集めて世界に誇るバイオメディカル研究開発拠点の形成をはかるプロジェクトといわれています。そして、フュージョンポリスはICT、NT、マイクロエレクトロニクス、素材などの研究開発に重点を置いているようです。隣接するバイオポリスとフュージョンポリスに、次なるETの研究施設の建設計画とあわせると、ICT,BT,NT、ETが複合する研究開発拠点が形成されることになります。

 また、中国は北京の中関村地区やインドのバンガロールもICTからBT、ET、NTなど様々なハイテク分野の集積が進んでいるようです。

 こうした拠点形成プロジェクトは施設建設から始まるため、ハコモノ行政との誹りを受けるかもしれません。しかし、この施設には世界からヒト、モノ、カネを呼び込み、雇用の拡大と新産業を生み出す基盤となるのですから、無駄な投資にはならないでしょう。

4T融合産業 日本の場合、第三期科学技術基本計画(平成18〜22年度)でも重点推進4分野としてICT,BT,ET,NTが掲げられ、予算も重点的に配分されています。ただ、その多くは既存の大学や研究機関に対してであり、縦割り的な制度の中で研究開発が行われることになり、4T融合産業を生み出すような環境が出にくいのではないでしょうか。

4T融合産業という新しいコンセプトの具現化には新しい拠点整備が必要になっているといえるでしょう。“新しいワインは新しい皮袋に”が当てはまりそうです。

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。