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ICR View
2009年7月掲載

ICT産業の規模と役割の進展

 情報通信総合研究所ではICT産業の市場規模と動向を把握するため、四半期毎に「InfoCom ICT経済報告」を公表しています。最近では6月30日に2009年第1四半期報告として“ICT経済、一足早く回復か−生産、設備投資(官公需)、輸出に底打ち感−”と題し、直近までのデータを含めて動向分析を行いマスコミ及び当社のホームページに発表しています(注)。

(注)2006年第1四半期から全四半期の報告が情総研ホームページで入手可能です。

 これは、産業全体に占めるICT産業の割合が約1割に達し、また、GDP成長に対する寄与率が高いことから経済動向に与える影響が大きいので、その動きを定期的に把握分析しているものです。また、総務省においても本年3月に「デジタル日本創生プログラム」を公表し、中期的な成長を図り2015年から2020年時点でICT産業の市場規模を現在の2倍にするとしています。即ち、2006年時点での国内生産額は、全産業968兆円、ICT産業95兆円(比率9.8%)、また、GDPベースで見ても全産業509兆円、ICT産業48兆円(比率9.4%)となっている産業規模を倍増しようという挑戦的な政策です。

 我が国のGDPは日本が本格的なデフレに突入した1998年の505兆円からほとんど成長していません。2007年でも516兆円に止まっています。ICT産業の成長こそ今後のGDPの成長をもたらすものと期待されています。ICT産業は狭義の情報通信業(通信業、放送業、情報サービス業)に加えて情報通信関連サービス業、同製造業などを含んでおり、産業的な視点からは、基盤技術やインフラの普及に伴ってネットワークやプラットフォームの競争が進展して上位レイヤーの拡大がもたらされており、ICTで出来ることの範囲が大きくなっています。それに応じて、マクロ経済・社会的な観点からは安心・安全に対するニーズや大量の経済・社会行動情報のコンテンツ化などからICTに対する期待が一層増大して来ています。金融産業に対する社会的期待が見直し局面にある昨今、ICT産業に対する新しい期待と言えるでしょう。
 これを経済組織運営面から見ると、企業ではCIO(最高情報責任者)の配置が既に一般化していますが社会的にはまだ多くの組織に普及していません。行政、農業、健康・医療、教育・学習など多くの分野にも普及する必要があります。インフラである通信サービスはもちろんですが、更にICT産業全体を視野に入れてセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスなどの組織活動をすることがポイントでしょう。その流れからはCIOから更にCICO=Chief InfoCom Officerに役割を進めるべき時です。

 最後に、現状の我が国ICT産業の問題点としては、CIOの機能不足に見られるように、相互に有機的に関連付けるエコ・システム化の動きが不足していることが挙げられます。ICT産業の成長を活かして行くためには産業間、産業部門間の水平・垂直的提携や統合を一層進める必要があると考えます。

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