2015年8月28日掲載 IoT InfoCom T&S World Trend Report

IoTの見方~通信の視点から


【図1】爆発的な伸びを見せると推測されるIoT(世界規模) (出典:National Cable & Telecommunications Association)

この1~2年、 IoT(Internet of Things:モノのインターネット)が大きな注目を集めている。世界最大級のモバイル展示会であるMobile World Congress等の各種イベントでは、軒並み「IoT」がキーワードとなっている。人と人のコミュニケーションから我々の周囲のモノも通信に入ってくることにより、 インターネットの可能性がまた一段広がるとされている。IoTの重要性を示すのによく引き合いに出される数字の例として「インターネットに接続されたモノ」がある。この値は2015年現在では200億台に満たないが、5年後の2020年には約500億台になると言われている(図1)。この情報通信の大きな可能性にどのようにアプローチするかという観点から、様々な提案が示されている。

一方、日本の通信という視点でも、携帯電話の契約数が人口を大きく超えた約1.5億契約となり、固定ブロードバンドの世帯普及率が80%を超え、どちらも飽和しつつあるように見える中、人が通信を利用することを前提とした見方からIoTへ変化していくことに最も注目すべきというのは異論がないだろう。現在IoTについて語られていることは、どちらかと言うとデバイスメーカーや通信機器メーカーが中心であるようにも見受けられるので、本稿では「通信」という視点から今後のIoTの着目点について考えてみたい。

 IoTの利用動向

まず、IoTの利用動向について概観したい。一言で「IoT」といってもカバーする範囲は広く、どういう切り口で見るかは難しい。様々な利用シーンをある程度分類して見ていくことが必要と思われる。ここではIoTの利用シーンを特徴付ける要素として、インターネットが接続するデバイスの地理的な動きとデバイスの利用者に着目してみた(図2)。

注目すべき利用シーンとして以下の6つが挙げられる。まず、マスユーザーとしての利用を考えると、

  1. ウェアラブル・デバイスで注目を集める「人(個人)」を中心としたIoTの利用
  2. "Connected Car"といった言葉で取り上げられている「クルマ」に関するIoTの利用
  3. 今までのホームゲートウェイ等の話題から広がりつつある「家」でのIoT利用

の3つが挙げられる。
さらに、

  1. 鉄道、飛行機といった「公共交通機関」におけるIoT利用
  2. 大型プラント、製造業、オフィスといった「事業所・産業利用」でのIoT利用
  3. ショッピングモールや駅・ターミナル、路上等の「公共空間」におけるIoT利用

が注目される。これらについて以下に簡単に動向を述べたい。

IoTの利用シーン

【図2】IoTの利用シーン

 

 1. 個人(ウェアラブル)

ウェアラブル・デバイスの例

【図3】ウェアラブル・デバイスの例

人(個人)を取り巻くものとして、ウェアラブル・デバイスが活況を呈している(図3)。2015年4月に発売開始されたApple Watchに代表されるスマートウォッチや活動量計、Google Glassに代表されるスマートグラス、人間の視点からの映像を切り取るウェアラブル・カメラ等がある。

スマートウォッチの重要な機能はスマートフォンの入出力だ。出力機能としてはメール・電話の着信通知や、スケジュール通知などがある。また、入力部には加速度センサーやジャイロセンサー、心拍計等のセンサーを備えるものが多く、活動量計の機能を包含することが多い。これらの活動量をスマートフォンへ送信し、スマートフォンのアプリ、またはアプリと連動したクラウドサービスで可視化された身体データ等を、ヘルスケアやエクササイズに役立てる。スマートフォンとの接続には近距離無線の技術、BluetoothやWi-Fi、ANT/ANT+が使われている。活動量計はほぼスマートフォンの入力機能特化版と言えるが、 通常の腕時計のように腕に装着する以外にも、バッジとして衣服に装着するもの、NTTと東レで開発した「hitoe」のように衣服自体に機能を持たせるもの、また、足や靴に装着するものも出現している。

スマートグラスはメガネのように目に装着するものであるが、これも主な機能はスマートフォン等の入出力である。とはいえ、単なる入出力ではなく、多くの場合は仮想現実 (VR) の機能やレコメンドの機能と組み合わせてユーザーの動きをサポートするようになっている。また、このようなグラス型以外にも、ゲームやスポーツ支援中心のゴーグル型も存在する。スマートフォンとの接続にはUSB等の有線接続もあるが、多くはBluetoothやWi-Fiで無線接続されている。

ウェアラブル・カメラは人間の視点で映像を撮影する目的のため、頭部やメガネの傍に装着するものが多い。映像という大容量の情報を扱うため、リアルタイムでスマートフォン等と接続するものは少ない。多くは内部にMicroSD等の記録媒体を持ち、撮影後にWi-Fi等でスマートフォンやPCに転送するようになっている。

 2.クルマ

クルマと通信との関わりについては、従来も、カーナビやカーオーディオをモバイル通信に接続することにより、音楽コンテンツ、店舗情報・メール等のコンテンツ配信機能、渋滞情報、天気等の運転支援に関する情報を運転者と同乗者に配信する機能を持たせる動きがあった(テレマティクス)。これに対し、近年注目されているのは自動車の走行状況の情報を収集し、ネットワーク(以下「NW」)を通じてサーバー・クラウドで解析して自動車の整備に役立てたり、運転の特性を自動車保険料の算定に加味したり、また車両の盗難時に追跡を可能にしたりするといった利用方法である。これらは車を情報の配信先として使うだけではなく、位置情報や速度、ブレーキ、エンジン等の情報を送信して活用するという意味で新たな動きと見られる(図4)。

これらの情報の流れであるが、車内の情報はCAN (Controller Area Network)と呼ばれる車載NWから収集し、モバイル通信でインターネット等に接続されたテレマティクス機器に集約して送信されることになる。

クルマのIoT~Connected Car

【図4】クルマのIoT~Connected Car

 

 3.家

家の中のNW化についてはこれまでにも色々な観点からの取り組みがあった。光 (FTTH) 回線やADSL回線といったブロードバンド回線をルーター・ホームゲートウェイで家庭内のNWに無線/有線のLANで接続することにより、PCだけでなく家電製品もNWにアクセスできるようになってきた。これにより、NWからのコンテンツ入手、PC以外のデバイスでのWeb閲覧が可能になってきた。

最近の動向でこれまでと異なるのは、家庭内の情報をサーバー・クラウドへ送信して処理することで生活の支援をするサービスが始まってきたことである。最も代表的なものはエネルギー消費の削減・適正化を目指したHEMS (Home Energy Management System)であり、使用電力量や蓄電量、発電量を見える化する、接続した家電製品を自動制御するといった機能を持つ。また、Googleが2014年に買収したNest Labsはサーモスタットを家庭内のNWハブと位置付け、不在時でも温度や洗濯機等を自動制御できるようにしており、更に、その範囲を広げようとしている。この他にも、CATVのイッツコム(東京都世田谷区)が米iControlと提携して、ドアや窓の開閉を知らせるドア・窓センサー、人の動きを検出して知らせるモーションセンサー、さらにドア・窓センサーやモーションセンサーと連動して映像を記録するIPカメラ等を家の外からコントロールするサービス「イッツコム スマート」を2015年2月から提供している。

これらは、ブロードバンド回線・ゲートウェイ装置・家庭のセンサーデバイスという流れで接続するが、家庭内のNWはWi-Fiを使うものだけでなくZigBeeやWi-SUN を使うものが出てくるなど、ブロードバンド回線もPC用に設置したものだけでないことが特徴的と言えよう。

4.公共交通機関(飛行機、鉄道)

公共交通機関での動きとして目につくのは、車内・機内でのWi-Fi提供が拡大していることだろう。車内Wi-Fiサービスは2007年に東海道新幹線で始まったが、航空機でも2014年から日本航空 (JAL)が国内線での機内Wi-Fiを利用可能にするなど、公共交通機関内でのWi-Fi提供は進んでいる。

これらの実現には、車内・機内のWi-Fiをどのように外部のインターネットと接続するかがポイントとなる。鉄道の場合は線路に沿って設置されている漏れ波同軸ケーブルからの電波によって接続している。一方、航空機の場合は人工衛星と飛行機の間で衛星通信や地上基地局との間で3G等の通信が行われ、それにより接続している。これらから想定されるように外部との間の接続はボトルネックになる可能性があり、サービスは多くの場合、有料または公衆無線LANの契約が必要である。

5.事業所・産業利用

産業利用では、GEの提案する「Industrial Internet」、ドイツが提唱する「Industry 4.0」が注目を集めている。例えば、GEは大規模プラントのタービンといった産業用機械に温度、圧力、振動等の多数のセンサーをつけて継続的にデータを収集することにより、異常値を見極め、機械が破損する前に部品の交換といった予防保全で使用不可能な時間を予期し、短縮することを可能にする 等により生産性を向上させるというアプローチをしている。この営みのポイントは、多数のセンサーからの時系列データから機器の異常を発見するノウハウであり、このプラットフォームを「Predix」という名称で提供している。これを実現するための接続構成等は明らかにされていないが、プラント・工場内の有線のLANやWi-Fiによるものと思われる。

6.公共空間

公共空間は、ショッピングモールや駅・ターミナル等の閉空間と路上のような屋外の開空間に分けられる。ショッピングモールや駅・ターミナル等の閉空間は、公共交通機関(鉄道、飛行機)と同様、Wi-Fiのアクセスの提供という場合が多いが、公共交通機関と異なる点としては、Wi-Fiアクセスサービスの提供者、即ち、Wi-Fiのコスト負担をしている人がエリアオーナーであったり、通信事業者であったり、場合によって異なっていることである。また、路上のような開空間はWi-Fi等は提供されていないため、IoTデバイスは、産業用にモバイル通信が可能なモジュールや携帯電話そのものを組み込む形となる。よく知られている例では、小松製作所の建設機械がその所在地、車両状態、稼働状況を把握するためにGPSやセンサーを取り付け携帯電話や通信衛星経由でデータをサーバーに収集、分析し、点検等の保守・運用サービスの向上や盗難防止、需要動向予測等に活用しているというものがある。

最近の傾向

こうしてIoTの利用動向を見てみると、大きく2つの傾向が見えてくる。

1つは「上りデータ」の活用である。「上りデータ」の活用とは、IoTデバイスのセンサーを使い、そこから得られたデータを、NWを介してサーバー・クラウドへの入力とすることである。ウェアラブル・デバイスにおける位置や動作の情報や車における走行データ、家における温湿度、ドアの防犯情報等といった「上りデータ」の活用がIoTの活況の一因と考えられる。

2つ目はマス系での利用が進んでいることである。これまで多くのサービスでは、産業用の利用から価格が低廉化して、マスへ普及するというのが一般的だが、これまで述べてきた通り、IoTは個人、車、家といったマス系の利用が産業用と同等かそれ以上に動いているのが特徴的と言える。

これらは2000年前後に「ユビキタス」や「センサーNW」という言葉が聞かれるようになって以来、利用シーンとして挙げられてきたことであるが、ここ数年で急速に顕在化してきたように思われる。この最大の要因はスマートフォンの普及と考えて良いだろう。スマートフォンはインターネットへの接続機能を持つ一方、多くのものはBluetoothやWi-Fiの接続も可能になっており、ゲートウェイ (GW) 機能を有する。このGW機能が一般的になったことがIoTの普及の大きな要因といえよう。また、スマートフォンはGPSや加速度センサー、ジャイロセンサーを搭載するものが多く、それ自体がIoTデバイスであると考えられ、この普及によりセンサーの主な部品であるMEMS (Micro Electro Mechani­cal System) の需要の拡大と価格低下の要因にもなっている(表1)。 

MEMSデバイスの変化

【表1】MEMSデバイスの変化

 

通信から見たポイント

さて、通信という立場から見ると、IoTを実現するために「どのようにつなげるか(接続するか)」、すなわち通信(IoTのコネクティビティ)の構成はどうなるか、ということがテーマとなる。IoTデバイスとインターネット上のサーバー・クラウドの間で、どんなNWを介していくか、どこにどんな機能を置くかということだ。これは、そのNWを誰が提供し、どうコストを負担するかということも考え合わせていかなくてはならない。

IoTにおける機能の配置

ここでIoTのコネクティビティの構成を見てみたい。上述した利用状況からも明らかだが、接続構成は大きく2つのモデルに分類できる(図5)。ここでは、IoTデバイスがゲートウェイ (GW) を介してインターネットと接続する形態をGW接続型、GWを介さず、基幹NWからインターネットと直接接続する形態を直接接続型と呼ぶこととする。基幹NWでインターネットに接続し、サーバー・クラウドでIoTプラットフォーム、IoTアプリケーションが処理をするという部分は共通なので、以下にIoTに特徴的となるIoTデバイス、エリアNW、GWについて簡単に述べたい。

IoTのコネクティビティのモデル

(a)GW接続型   (b) 直接接続型
【図5】IoTのコネクティビティのモデル

 

IoTデバイス

IoTデバイスは、スマートウォッチのようにスマートフォンの出力部として使ったり、活動量計のようにセンサーによる入力部として使われることもある。また、出力の形態としては音声や画像、映像の出力だけでなく、遠隔操作のような機械的動作もあり、アクチュエーターにより機械を駆動する場合もある。これらの入出力に加えて、NWに接続するための信号・データ処理、通信接続処理というのがIoTデバイスの基本的な機能となる。

IoTデバイスを考える上で重要なこととして、省電力化と小型化が挙げられる。これは、IoTデバイスは通信機能を組み込んだ上で屋外や遠隔地に設置されるものも多く、一度設置されると10年といった単位でしか機器の交換等がされないと想定され、低速度でも省電力のデバイスで可能なNWへの接続技術が必要だからだ。

エリアNW

IoTがGW接続型の際は、エリアNWが必要となる。近距離無線技術(次ページ図6)や有線LAN、PLC(電力線通信)等がある。IoTデバイスは上述の通り省電力が要求されるため、近距離無線技術である無線LAN (Wi-Fi) やPAN (Personal Area Network) が用いられており、PANは無線LANより1桁以上消費電力が小さくなっている(次ページ表2)。現在、使われている技術としてはWi-Fi(無線LAN)、Bluetoothが中心だが、活動量計等にANT/ANT+、HEMSにはWi-SUN等も使われている。

ゲートウェイ (GW)

GW接続型の際はGWが必要になる。GWはエリアNWと基幹NWの間でデータの集約と振り分け、プロトコルの変換等を行う。例えば、ウェアラブル・デバイスの項で述べた活動量計の場合、活動量計で取得した加速度センサーのデータをエリアNWに相当するBluetoothでスマートフォンに送信され、スマートフォンがGWとなり、基幹NWであるLTE網でインターネットに接続し、サーバー・クラウドで受信することとなる。

また、GWには、多くの利用者が共用するGW(以下「共用GW」)とそれぞれの利用者が個別に用意するGW(以下「個別GW」)がある。例えば、上の活動量計の例ではウェアラブル・デバイスは個人のものであり、スマートフォンも個人で用意しているので、個別GWと言える。一方、ショッピングモールのWi-Fiアクセスポイントは不特定多数のスマートフォンやタブレット、PCが接続する共用GWと言える。

無線通信規格の分類イメージ

【図6】無線通信規格の分類イメージ

代表的なエリアNW用通信規格

【表2】代表的なエリアNW用通信規格

GW接続型と直接接続型の比較

【表3】GW接続型と直接接続型の比較

 

 GW接続型と直接接続型

こうして見て来ると、通信事業者の観点「どのようにつなげるのか(接続するか)」というテーマは、大まかに捉えると「GW接続型と直接接続型のどちらが主となるか」ということになる。以下、両者を比較してみよう(表3)。

 GW接続型

GW接続型はIoTデバイスに負担が少ない。基幹NWに接続しないので長距離通信は不要であり、このため省電力化や小型化が進めやすい。また、基幹NWの回線数はGWの個数に応じた数になる。一般にGWの数はIoTデバイスの数より少ないため、モバイル通信や固定ブロードバンドの基幹NWのコスト負担が直接接続型より小さい。この反面、GWの設置と運用が必要となる。また、サーバー・クラウドに直接つながっているのはGWであるため、エリアNWの複数のIoTデバイスを基幹NWを介してIoTプラットフォームにおいて識別し、管理する必要があり、管理コストは大きいといえる。

直接接続型

直接接続型は、GWを必要としないため、GWに関するコストは発生しない。また、IoTデバイスがランダムに動く時には捕捉する範囲が広く、有利に働く。更に、IoTプラットフォームのアドレス管理、ユーザー管理はGW接続型が2つのNWの管理であることに比べてシンプルになる。一方、IoTデバイス毎に基幹NWの回線が必要であるため、このコストは非常に大きい。このことは、基幹NWのアドレス等のリソースを消費するとも言える。

IoTのコネクティビティ~構成はどのように決まるのか

それではIoTのコネクティビティの構成はどのように決まっていくと考えれば良いだろうか。注目すべき利用シーンとして挙げた例を再度見てみよう(図7)。

通信環境のイメージ

【図7】通信環境のイメージ

近年注目を集めるのは、人(ウェアラブル)、クルマ、家であるが、これらはマスユーザーの利用シーンという以外にも共通点がある。IoTによる受益者が個人、家族等と特定されており、IoTデバイスは人、車、家と一定のエリアの中を動くということだ。これらはGW接続型となっているが、一定のまとまり(集合)として動くためGWと基幹NWが1つずつですむこととなり、通信に関するコストが最小限となる。また、受益者が特定小数であるため、その人が所有する個別GWを使うこととなり、IoTデバイスの識別に厳密性の要求が低く、IoTプラットフォームへの負担も低くなっているのである。

こうして考えると、IoTの通信構成を検討する上で、IoTデバイスの地理的ばらつきと受益者の多寡が主要な要因となると考えられる。ここで、IoTデバイスの地理的ばらつきとは、IoTデバイスのあつまりの中心(ここでは「情報重心」と呼ぶ)からの平均的な距離を指すこととし、また、受益者とはそれぞれのIoTデバイスからのデータを利用して便益(ベネフィット)を得る人とする。IoTデバイスの地理的ばらつきが大きい場合、カバーする範囲が広くなるので、直接接続型にするか、GW接続型の場合は多数のGWが必要となる。一方、受益者の多寡は、直接接続型とGW接続型で影響の出方が異なる。直接接続型の場合は基幹NWのコストがデバイス毎に発生するので、トータルコストが高くなる。GW接続型の場合、受益者が少ない場合は個別GWですむが、多い場合は共用GWとなり、誰が、GWと基幹NWのコストを負担するかが問題となる。

これを図示すると次ページ図8のようになる。IoTデバイスの地理的ばらつきが小さく、受益者が少数の場合は、GWを情報重心におくことで最もコストが小さくなり、IoTプラットフォームの管理も容易なので、GW接続型が適していると考えられる。例えば、スマートフォンでBluetoothイヤホンから音楽を聞いている人にとって、活動量計を使うのはBluetoothでペアリングするだけで使えるようになるということだ。逆に、IoTデバイスの地理的ばらつきが大きく、受益者が不特定多数の場合は直接接続型が適していると言えよう。

今後のIoT~通信の視点から見えてくるもの

今後のIoTはどう進んでいくだろうか。当面、現在活況を呈している人、車、家等のIoTデバイスはスマートフォン等のGWに「相乗り」した形で様々なIoTデバイスが利用されるようになるだろう。IoTデバイスの地理的ばらつきが小さく、受益者が少数である場合に適するというGW接続型の特徴から考えると、産業用では運送業等での応用は多くなっていく可能性がある。また、マス向けだと訪日観光客の団体毎に1台ずつモバイルルーターを渡してインターネット環境をサポートする等というのは手軽にできることと思われる。

「IoTデバイスの地理的ばらつき」と「受益者」による分類

【図8】「IoTデバイスの地理的ばらつき」と「受益者」による分類

大きな課題となるのは、IoTデバイスがランダムに動き、受益者が不特定多数となる場合、すなわち直接接続型の領域と考えられる。IoTデバイス毎に基幹NWの回線契約を用意するのはコストが大きく、IoTデバイスにとっても通信のための電力や専有するスペースの点でも負担になる。これを解決できるかどうかが、IoTがさらに広がっていくかどうかの試金石となるだろう。この解決策としては2つの方向が考えられる。

1つの方向はモバイル通信がこれらの課題を解決していく方向である。これは2015年6月にITUで「IMT-2020」と呼ばれることになった5Gが回答になるだろう。5Gはまさにこれから仕様についての議論が始まるところであるが、例えばNTTドコモは

  1. 大容量化、
  2. データ伝送速度の高速化、
  3. 低遅延化、
  4. 超多数の端末の同時接続、
  5. 低コスト・省電力化

を要求条件として提案しており、この内最後の2つ(4、5)はまさに本稿で述べたIoTの課題を解決しようとするものである。こうした方向は通信機器ベンダーも通信事業者も、細部は異なるものの、5Gへの要求条件としている。

こうした規格が確立した上で、IoTデバイスに組み込むモジュールの低コスト化・省電力化・小型化がデバイス・メーカーに期待される。また、通信サービスとしても、GW接続型で複数のIoTデバイスがスマートフォン1回線に相乗りしていることを考えると、数分の1以下の料金にすることが求められるだろう。超多数の端末ということを考えると料金回収コストも増大する考えられるので、契約形態や課金の仕方そのものも変わっていく可能性もあろう。

もう1つの方向はGW接続型からのアプローチである。IoTデバイスが世の中に広く行き渡ることを前提に考えた場合、GW設備を面的または幹線道路等に沿って線状に配備し、それを多数のIoTデバイスが共用するという解もあるだろう。例えば、建物や電柱にGW設備を設置し、不特定多数のIoTデバイスがアクセスするという形である。これには個々のIoTデバイスをIoTプラットフォームで管理するという技術と運用の問題もあるが、通信事業者等がGWを先行で設備投資をするというリスクを取れるかどうかが最大の問題になるだろう。

この動きは、1990年代後半に登場して急速に普及したものの2000年代後半に携帯電話会社に吸収されていったPHSを思い出すが、人が使うPHSとIoTデバイスに組み込む通信モジュールといった違いや、通信構成として比較対象になると思われる直接接続型の5Gのコスト低減や省電力化等の速さによっては有力な選択肢になりうるだろう。

興味深いアプローチの1つとして、2009年に創業した仏SigFoxの例がある。同社は低電力・広範囲 (LPWA: Low-Power Wide-Area) のIoTに特化した通信サービスを提供している。欧州では915MHz、米国では868MHzの免許不要帯域を使い、低速ながら1,000kmの通信を可能にしており、50,000端末以上の場合、1端末当たり年1米ドルで提供するとしている。主な利用方法は電力や水道等のインフラ監視用途とのことだ。同社には今年2月にNTTドコモ・ベンチャーズが、6月にはSamsungが出資するなど投資家の関心を集めているが、これは上記2つの中間解と言え、注目していきたい動きである。

こうして見ると、今後のIoT時代の通信構成、特に不特定多数のIoTデバイスへの通信構成は、IoTデバイスの小型化、省電力化、基幹NWのコスト低減といった技術的・工学的課題を解決すべき直接接続型のアプローチと、GWのコスト負担やその回収といったビジネススキームの問題を解決すべきGW接続型のアプローチ、この両者の動向を注視していく必要があることがわかる。

IoTの普及はマスユーザーの健康や利便性、快適性に貢献するとともに、産業面では効率の向上に寄与する大きな動きでもある。日本の通信がこのチャレンジへ貢献していくことを期待したい。

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