2015年10月2日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

通信自由化30年をデータから眺めてみる



1985年に電気通信事業法が施行されてから30年経った。いわゆる通信自由化30年である。
このことは新聞や雑誌、また2015年7月に発行された情報通信白書等、各所で取り上げられているが、本稿では動きの激しい情報通信の動きを国内外のデータを比較しながら、この30年を眺めてみたい。

日本の通信の30年

サービスの普及状況

まずは日本の状況を振り返って見よう(図1)。

サービス契約数の推移

 

(1)固定通信(固定電話・インターネット)

固定電話について見てみると、「加入電話 + ISDN」の契約数は1985年の通信自由化後も少しずつ増加していったが、1997年の6,285万契約をピークに緩やかな減少を始めた。2004年から急速に減少を続け、2014年9月には2,506万契約と、ピーク時の約4割まで低下した。一方、IP電話を含めた「固定電話計」は緩やかな減少を続けており、2014年9月では5,629万契約とピーク時の約9割となった。「加入電話 + ISDN」と「固定電話計」の差は主としてIP電話の影響であり、2004年にNTT東日本・西日本がサービスを開始した「ひかり電話」によるものと思われる。こうした変化は音声による通信が携帯電話へ移っていく流れと並行して、この10年でIP電話の時代になっていることがわかる。

インターネットはどうだろうか。同一条件の継続的調査がないため時系列として提示することは難しいが、1995年末のWindows 95発売がインターネット普及の端緒とされている。これは、PC用OS(オペレーティング・システム)の基本機能としてのインターネット接続機能がWindows 95から標準搭載されるようになり、UNIXユーザーやPC上級者から一般のPCユーザーへと普及するトリガーとなったからである。郵政省(現・総務省)の通信利用動向調査では1996年のインターネット世帯普及率は3.3%とされており、その後2000年に34%、2002年に81%と8割を突破し、2005年で87%に達した。つまり、1995年からの約10年間でインターネットはほぼゼロの状態からほとんどの世帯へと普及したこととなる。

2000年以降、すなわち21世紀に入ってからのインターネットは、「インターネットが使えるか?」ではなく、「いかに快適に使えるか?」に焦点が移っていった(図2)。高速にアクセスできるインターネットとして、ブロードバンドの普及時代に入る。1999年にADSLがサービスを開始し、2000年からは光ファイバによるインターネット接続サービス (FTTH) が開始された。2014年にはブロードバンドの契約者数は4,600万、うちFTTHは2,600万に達しており、世帯数の半分を超える数字となっている(注:事業所利用もあるため、この数値は世帯普及率とは異なる)。

インターネットの接続方法

(2)移動電話(移動電話・モバイルインターネット)

「移動電話」(携帯電話、PHS)は1979年(通信自由化前)の自動車電話、および通信が自由化された1985年の携帯電話サービス開始に始まった。1990年は868,000加入と少しずつ普及し始めたが、1994年の端末買い取り制度の導入から3年間は倍々ゲームで爆発的に普及し始めた。その後、2000年には固定電話を追い越し、さらに年率4~8%で伸び続け、2014年には人口を上回る1億5,000万加入以上となった。移動電話はこの30年で、サービス開始から人口以上までへと爆発的に普及したこととなる。またこの間、携帯電話の高速化・高機能化も進み、1993年には2G(第2世代)、1999年にはモバイルインターネットの走りであるi-modeが始まった。i-mode開始の翌年(2000年)に発行された平成12年版情報通信白書では、ネットのモバイル化について以下のように述べている。

(平成)11年から開始された、携帯電話端末単体でのインターネットアクセスサービスはインターネットへのアクセスを身近なものとし、例えば、NTTドコモグループのiモードは、サービス開始のおよそ1年後の(平成)12年2月末現在で447万契約に達した。これによりNTTドコモグループは、我が国の主要ISPと比較して、最も契約数の多いISPとなっていることがわかる。今やインターネット接続サービスですらモバイル通信が大きなウエイトを占めており、「ネットのモバイル化」の流れが始まっている。

さらに高速化・高機能化は進み、2001年には3G(第3世代)、2010年には3.9G (LTE) が提供される一方、端末もスマートフォンやタブレットといった形でかつてのPCを上回るほどの機能が使用可能になり、利便性も大きく向上してきた。

音声トラフィック

少し視点を変えて、音声トラフィック(総通信時間)という観点で見てみよう(図3)。これを見ると1990年代前半の緩やかな増加を経て1995年頃から加速度的に増加し、2000年をピークに急激に減少している。ここでは「移動電話」は伸びているにもかかわらず、固定系発信の音声トラフィックが急減している。これは、1995年頃からのインターネットの急速な普及に伴う、固定電話を通じたインターネット接続(ダイアルアップ接続)によるトラフィックの急増、および1999年に開始したADSL等のブロードバンドサービスへのトラフィック移行による急減である。この後、2005年前後から減少が緩やかになるが、2010年頃から減少が再び加速してきている。AppleのiPhone(日本での販売は2008年から)に代表されるスマートフォンの普及が2010年頃から加速したのと軌を一にしていることから、トラフィックの内容が音声通信からデータ通信へと移行していったものと考えられる。

音声トラフィック(総通信時間)の推移

こうした音声トラフィックの動向をまとめると、3つの流れがあることがわかる。1つ目は2000年を中心とした山から窺える、1995年から10年間で起こったダイアルアップの急増・急減である。2つ目も1995年から10年間に特徴的な固定系から携帯系への一貫した移行である。3つ目は2010年から音声トラフィック(総通信時間)の加速的な減少に見られる、音声通信からデータ通信への移行である。このように、サービスの普及状況で見られた固定から携帯やインターネットへという変化は、このようにトラフィックという観点から使い方が変化していく様子としても捉えられる。

日本の30年

こうして振り返ると、世紀の変わり目に合わせて、「固定×電話」の20世紀から「モバイル×データ」の21世紀へと大きく転換したことがわかる。この30年をもう少し細かく見ると、通信自由化による競争に伴い固定電話が伸びた1985年~1995年、インターネットとモバイルが急速に普及した1995年~2005年、その後2005年~2015年の間には音声通信がアプリケーションの一つになりモバイルが中心となって来ており、このように10年単位で区切って見ることもできる。いずれにしても、これらを通して、日本の情報通信は20世紀と21世紀を跨いだ30年で大転換期を迎えていたことが改めてわかる。

この10年の世界の動き

ここで世界の通信の動きも振り返ってみよう。日本の動向を踏まえると、21世紀に「モバイル×データ」への動きがどうなっているかがポイントと考えられるので、この10年における先進国(G7:日米加英独仏伊)、新興国 (BRICs)を中心に見ていきたい(図4a~4i)。

先進国

先進国は全体的に似た傾向を示しており、2004年~2013年の10年間で、ブロードバンド世帯普及率がほとんどの国で30%前後から80%前後まで上昇している。携帯電話の加入数もほぼ同様な伸びを見せており、この10年でおおよそ2~3倍になっている。21世紀がモバイル×データの時代というのは共通して言えると思われる。

エリア毎にもう少し詳しく見てみよう。

(1)北米:米国・カナダ

米国・カナダ(図4a・4b)で特徴的なのは、固定電話の大きな減少である。他の先進国では加入電話+IP電話では微減程度なのに対し、この両国は減少し続けており、米国では25%減、カナダでは13%減となっている。一方、米国ではLTEの増加が早いのも特徴的であり、FTTHの立ち上がりの遅さと合わせると、北米の通信事業者がモバイルへの注力が早いことが窺える。

(2)欧州:英・仏・独・伊

英・仏・独・伊4カ国(次ページ図4c~4f)で共通して特徴といえるのは、21世紀に入って間もない2004年時点で、携帯電話の加入数が固定電話を大きく上回っている点である。早くから携帯電話が普及したため、近年は飽和しつつあるようだ。また、FTTH普及の低さも共通している。

一方、固定通信は各国において相違が見られる。フランスが最もアグレッシブと言え、ブロードバンド世帯普及率が上がりつつ、固定電話(加入電話+ISDN)が大きく変わらない中でIP電話への移行が進んでいる。これに対して、英国は固定電話も固定ブロードバンドも動きは緩慢である。独・伊はブロードバンドの普及が進んでおらず、ドイツは70%前後、イタリアは60%以下で飽和しつつある。

(3) 日本

これらと比較して日本(前ページ図4g)を見ると、特徴が明らかになる。最も目を引くのはFTTH加入者の多さであり、他国と比べても群を抜いている。また、LTEの立ち上がりの早さも米国を上回っており、固定・移動ともに通信回線の高速化では目立っていると言える。

(4)ブロードバンド先進国:韓国・デンマーク

ブロードバンド先進国とされる韓国(前ページ図4h)と北欧の状況も見てみよう。ここでは北欧諸国のうちでもブロードバンドの普及が進むデンマークを取り上げた(前ページ図4i)。両国とも上述の先進国と全般的に似た普及状況だが、新技術への対応が上述の先進国よりも早いのが見て取れる。韓国で特徴的なのは、固定電話(加入電話+IP電話)が増え続けていること、およびFTTHとLTEの伸びであり、日本と似たような動きを見せている。一方、デンマークの特徴は携帯電話の普及が当初より高いこと、FTTHへの取り組みが早かったこと、米国に類似して固定電話(加入電話+IP電話)の減少が早いことといえる。

各通信方式加入者数、 ブロードバンド普及率(米国、カナダ)

各通信方式加入者数、 ブロードバンド普及率(英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、デンマーク)

新興国

翻って新興国を見ると、モバイル、データ(インターネット)の立ち上がりは先進国より5~10年後れていると言えそうである(図5)。この中でも、携帯電話の伸びは早く、BRICs等は人口が多く、国土が広い国々であるため、端末や通信機器の出荷台数など製造業や通信業界へのプレゼンスも高まっている。一方、固定ブロードバンドが伸びないのは特徴と言える。これはラストワンマイルへの投資、設備構築が重荷になっているものと考えられる。LTE等の無線通信が高速化されていることもあり、固定系のブロードバンドが伸びずに、モバイルブロードバンドが主流になりつつあると言える。

インターネット世帯普及率の推移

(5)ブラジル・ロシア

ブラジル、ロシアは携帯電話の人口普及率が100%を超えており、ブロードバンド世帯普及率は30、40%台とはいえ、着実に伸びている。また、他国と比較して特徴的なのはこの両国は固定電話(加入電話+ISDN)がわずかながら伸びていることである。

(6)アジア:中国・インド

中国、インドは携帯電話の人口普及率がそれぞれ90%台、70%台と、上述してきた国々と比較すると高いとは言えないものの一定程度普及していると言える。特徴的なのは固定通信であり、中国のブロードバンド普及率はブラジル、ロシア並みであるが、固定電話(加入電話+ISDN)の減少が著しい。一方、インドは固定通信が全般的に伸びておらず、ブロードバンド普及率は10%に満たない。携帯電話の増加と比較すると、通信の重心は固定を飛び越えてモバイルに移っていることが窺える。

今後の情報通信の行方

ここで世界的な通信の動きをまとめてみよう(図6)。

世界の通信サービス普及状況

移動通信(移動電話、モバイルインターネット)

移動通信はどこの国でも1995年からの10年間で大きく増加しており、現在もこの傾向は続いている。先進国をはじめ多くの国で加入数が人口を上回っており、全世界で見ても人口普及率は95%となっている。移動通信における国ごとの差異は高速通信への移行レベルであり、上述のとおり日本・米国はLTEが急速に普及し始めているのに対し、2G/3Gの国が依然として多いことである。

今後はどうなるであろうか。移動電話の加入数が人口を超えて伸び続けている主要因は、2台目需要やタブレット等の利用の広がりと考えられるため、この携帯電話の伸びは当面続くと見てよいいのではないだろうか。5年・10年といった長期で考えると、モノの通信、いわゆるIoT (Internet of Things) がどのように実現されていくかがポイントとなると思われる。

固定通信(固定電話、インターネット)

固定電話については多くの国で横這いか減少傾向である一方、北米、特に米国は急速に減少している。これをどう捉えればよいだろうか。

リアルタイムのコミュニケーションの中心は、20世紀は固定電話であり、1995年~2005年の転換期に携帯メールやSMS(ショートメッセージサービス)が事実上のリアルタイム・コミュニケーションとなった。その後、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)等、スマートフォン上のアプリケーションがこの種の需要を満たすサービスとなった。すなわち、リアルタイム・コミュニケーションの多様化、アプリケーション化が進んだと考えられる。

したがって、今後の固定電話を考えると、IP電話が充実している国は日本・フランスのように加入電話からIP電話へ、さらにスマートフォン上に移行していくことになるだろう。

ただ、こうした順番での移り変わりが世界の趨勢になるかというと、そうとも言えないのではないか。固定ブロードバンドの普及は国によって異なる。FTTHに注力する日本やフランスと異なり、FTTC (Fiber To The Curb)の高速化を志向する英国・ドイツのような動きもあり、また、CATV等も普及し、通信事業者以外も競争に参入している北米等の例もある。

さらに新興国ではインドのように固定通信の低迷が続いている国もあり、固定通信を取り巻く環境は大きく異なる。ラストワンマイルという金・労力・時間がかかる部分を避けられない固定通信の敷設は、国や事業者の考え方、投資体力等に大きく影響されるためだと考えられる。

これらを考慮すると、IP電話への移行という段階を経ずに、携帯電話、特にスマートフォンへとコミュニケーションの媒体が移って行く国も多くなると思われる。

まとめ:日本の通信への期待

こうした世界の通信事業を踏まえて、もう一度、日本に視点を移してみよう。
通信自由化30年の日本の情報通信の歩みについて改めてまとめると、以下の特徴があると言える。

  • 先進国の大きな流れと変わらず、20世紀の固定×電話から21世紀のモバイル×データへと変化してきた。
  • この30年のうち1995年~2005年の10年間が転換期であり、インターネットと携帯電話の急速な普及があった。
  • 固定通信のFTTH、移動通信のLTE等、新技術による高速化をいち早く進め、普及させた。

今後、日本の通信は、上述した世界の趨勢に合わせて、モバイル×データの方向、特に人口を超えた携帯電話の普及で飽和しつつあるところから、次のモノの通信、すなわちIoTに向かっていくことは間違いないだろう。

ただ、これまで見てきた加入数等の見方からすると、ウェアラブル・デバイスが増えても携帯電話の加入数が増えないように、通信事業のユーザー数と直結するかどうかは慎重に見極める必要があるだろう。単に、端末の広がりだけでなく、ネットワークの接続構成を見ていく必要がある。特に日本は他の国々と異なり、FTTHを中心とした固定ブロードバンドが充実しているのが特徴であるため、これを活かせるかどうかは重要なポイントと言える。モノの通信 (IoT) の時代には通信量(トラフィック)の増大が従来よりいっそう速くなることは確実と思われている中で、固定とモバイルの協調により快適な通信環境が提供できるかという課題への挑戦が日本の通信事業を待っている。

日本は1995年から2005年の大転換期に世界に先駆けてi-modeを提供して、世界に先駆けたモバイルインターネットを実現した。しかし、その後は革新的なサービスや端末の発信源が米国にシフトし、日本市場は「ガラパゴス」と揶揄されるに至った。しかし、これまでに述べたように高速化で世界をリードする日本はその進取の精神が作り上げたとも言えるのではないか。

日本の通信事業が世界に先駆けて、新しい時代にチャレンジしていくのを注視したい。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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