2016年3月18日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:古くなったスマホをどうしてますか?~ 端末の進化と音楽



読者の皆さんは古くなったスマートフォン(スマホ)をどうしているだろうか。筆者は約2年前まで使っていたスマホを机の中から発見した。ここでは、これの再利用について顚末を綴ってみたい

この古いスマホというのは、2012年に買った富士通のARROWS X LTE F-05D(図1)。発売開始は2011年末で、富士通のARROWSシリーズでは初めてLTE回線(ドコモのXi)に対応したものだった。フラッグシップ機でもあり、いわゆる「全部入り」のスマホで便利だったが、いかんせん電池の持ちが悪く、電池の残量確認とモバイルバッテリーの持ち歩きが辛くなって2年で買い換えに至ったという代物だ。

【図1】ARROWS X LTE F-05D (出典:富士通HP)

【図1】ARROWS X LTE F-05D
(出典:富士通HP)

 

【表1】ARROWS X LTE F-05Dのスペック (出典:各種資料より当研究所作成)

【表1】ARROWS X LTE F-05Dのスペック
(出典:各種資料より当研究所作成)

 

単純に廃棄するのもありかと思ったが、「最近のスマホは昔のスーパーコンピューター(スパコン)並みだ」という言葉を聞きかじったのを思い出し、考え直した。このF-05Dに使われているCPUはTI(テキサスインスツルメンツ)社製のOMAP4430というもので、約10GFLOPS相当とのこと。FLOPS(フロップス、Floating-point Operations Per Second)というのは、かつて良く使われたコンピュータの性能指標の一つで、1秒間に浮動小数点数演算が何回できるかを示している。また、記憶領域RAMは1GBである(表1)。

これを昔のコンピューターと較べてみよう。通信自由化元年の1985年に提供開始した当時世界最高速のスパコンCray-2(図2)は最大の4プロセッサー構成で1.95GFLOPSであり、記憶領域RAMは2GB (254Mword×64bit) である。高さ45インチ (114cm)、直径53インチ(135cm) の柱状で、重さ5,500ポンド (2.5t) であった。ちなみに、価格は1,200~1,700万ドル(26.5~27.6億円)で、国防総省(ペンタゴン)をはじめとして27台販売されたということだ。

【図2】Clay-2(出典:ascii.jp)

【図2】Clay-2(出典:ascii.jp)

こうして見てみると、確かに最近のスマホは昔のスパコンと同等以上だ。現在は、かつてのスパコンを手にして電車でメールやSNSやゲームをやっているということになる。こう考えると、使ってないからといって廃棄するのはもったいなく思えてきて、何とか使ってみようと思い始めた。もちろん、MVNO市場の拡大もあり、急速に拡大している中古市場に出すという選択肢もあったが、中古市場でも人気のiPhoneでもないので、何とか使ってみようと思った次第である。

それでは何に使うかというところだが、面倒なことはしたくないし、知恵もない。単純だが、音楽再生に使えないかと思った。音楽の「ながら聴き」が好きなので、常日頃からラジオを聴きたいと思っていた。しかし、家電量販店に行ってもラジオは片隅に追いやられており、選べる範囲が限られている。そこで、これを機に、あまりコストをかけずに多少なりとも良い音で聴くため、この古いスマホを使おうと思い立った。

そういえば、ラジオは影が薄いと漠然と感じていたので、少々調べてみた。国民生活時間調査によると、ラジオの利用者は全体の1割程度であり、テレビの約9割と比べるまでもなく少ない(図3)。また、テレビ視聴者・ラジオ聴取者だけでなく、CD・テープ等で音楽を鑑賞する人も1990年に比べて減少しているが、ラジオは6%以上と減り方も激しい。これに対し、利用者の平均利用時間が増えている(図4)のは、ラジオの利用層が高年齢層が多く、高齢化に伴って長く使う人が増えたのが原因と思われる。

【図3】情報利用率

【図3】情報利用率

 

【図4】情報利用時間

【図4】情報利用時間

一方、音楽の聴き方という観点から見ると、音楽鑑賞をする人は3,110万人と人口の1/4程度であり、ここ数年減少している(図5)。この中でも、音楽を鑑賞している層は10代女性を筆頭に若年層の方がシェアが多くなっている(図6)。利用するオーディオ機器もパソコンやデジタル携帯オーディオプレイヤーが中心になっており(表2)、音楽の聴き方が変わってきているようだ。確かに、周囲を見渡しても、中高生が音楽を楽しむ時は携帯やタブレットでYoutubeを観たり、Youtubeから音楽を取り出すスマホアプリを使っているようだ。

【図5】音楽関係活動参加人口

【図5】音楽関係活動参加人口

 

【図6】CD、配信等による音楽鑑賞率 (図3~6の出典:情報メディア白書2015 を元に当研究所作成)

【図6】CD、配信等による音楽鑑賞率
(図3~6の出典:情報メディア白書2015を元に当研究所作成)

これは日本だけの現象だろうか。米国を見てみよう。Nielsen(2015年)の調べによると、米国では91%の人が音楽を聞いている。75%の人がオンライン、すなわちインターネットを介して音楽を聴いており、これは昨年より12%増加している。また、機器としては44%がスマホを使っている。日本と較べて音楽は生活に密着しており、聴き方はインターネット経由が当たり前で、スマホが主流となりつつあるといえる。とはいえ、新しい音楽との出会いはAM/FM/衛星ラジオによる場合が最も多く61%となっており、旧来からのラジオも一定の役割を果たしているといえそうである。

だからと言うわけではないが、件の古いスマホはインターネットラジオ専用機にしてみることにした。すでにSIMカードはないので、Wi-Fi専用のタブレットと同じである。ラジオのアプリをインストールして、スピーカーを接続する。バッテリーの弱い機種なので、動かさないことを前提にACアダプタを繋ぎっぱなしにし、さらにパワーアンプを介してスピーカーと繋ぐことにした。昔風に言うと、古いスマホをオーディオ・チューナーにしてみたということだ(図7)。アプリはAmazon Prime Music、Google Play Music、TuneIn Radio、Radio Tunes、Radiko、らじる★らじるを導入して、国内外のインターネットラジオを聞けるようにした。

【図 7】廃品利用ラジオチューナー

【図 7】廃品利用ラジオチューナー

ここのところ、この「廃品利用ラジオチューナー」を使っている。オーディオ・ファンはとても満足させられるようなものではないが、ながら聴きには十分な音質で、世界中の音楽が楽しめる。MVNOの浸透とともに、中古スマートフォン市場も広がりを見せているが、昔から比べると圧倒的な処理能力を持っているスマートフォンの再利用というのも面白いと思うが、いかがだろうか。

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