2017年8月29日掲載 ICT利活用 InfoCom T&S World Trend Report

ドコモ・バイクシェアが提供する 自転車シェアリングサービス (2) ~UberEATSとの連携



前回本誌7月号の記事ではドコモ・バイクシェアが提供する自転車シェアリングサービスの可能性を取り上げた[1]。移動手段の一つとして認知され始めた自転車のサービスであるが、仕事や観光などで人々が移動する以外の目的でも次第に使われるようになってきている。今回はその新しい取り組みについてドコモ・バイクシェア営業推進部の村尾翔平さんに聞いてみた。

―サイクルシェアリングサービスを活用した新たな取り組みについて教えてください。

ドコモ・バイクシェアの村尾翔平さん

【写真1】今回取材に応じていただいた、
ドコモ・バイクシェアの村尾翔平さん
(写真1、2、4は弊社社員による撮影)

村尾:前回は小林のもとへ取材いただきありがとうございました。私たちが自転車シェアリングサービスを提供する会社であることは既にご理解いただけたと思いますが、今回は弊社が新たに取り組み始めたサービスの一つについてご紹介したいと思います。

自転車を利用していただくお客様としては個人のお客様だけではなく、法人企業のお客様にもご契約いただいています。パンフレットに掲載しているように、ICカードを企業内の複数人で共有できるお得なプランを法人向けのお客様へご提案しております。個人のお客様の利用が少ない平日の日中帯にも弊社の自転車をご利用いただきたいという思いから、現在積極的にご提案をしています。

私たちも企業のお客様を対象に、単なる利用料の安さだけではなく、どのような使い方を提案できるかについて検討してまいりましたが、2016年の秋頃、Uberの関係者の方から頂いたご相談は「UberEATSの配達に弊社の自転車を使わせてもらえないか」というものでした。

―Uberというと配車アプリのイメージがありますが、今回の連携経緯について教えてください。

村尾翔平

【写真2】営業推進部 プロジェクトリーダー 村尾翔平さん

村尾:今回の連携は配車アプリとは別の話です。UberはUberEATS(読み方:ウーバーイーツ)というフードデリバリーサービスを2016年9月から東京の一部地域で開始しています[2]。UberのWebサイトにはUberEATSは「テクノロジーで新たな食の楽しみ方を提案するフードデリバリーサービス」であると記されていますね。このサービスは簡単に言うと「人手が足りなくてデリバリーをできない飲食店と、料理を指定の場所まで届けて欲しいお客様のニーズを結び、UberEATSに登録した個人(配達パートナーという)が配達を行う」というサービスです。私たちとしては自転車シェアリングサービスを配達する方に使ってもらうことで利用機会が拡大できるのではないかと考えています。配達の移動手段には原付バイク(原動機付自転車)や自転車を用いますが、これらをお持ちでない個人の方は配達パートナーとして登録しづらくなります。弊社のシェアリングサービスをご利用いただければ、自身で自転車を持たずとも配達パートナーとして働くことができ、メンテナンス等の維持費や駐輪場代等の経費を気にする必要がありません。加えて、弊社の自転車はすべて保険に加入していますので、個人所有の自転車よりも安心かもしれません。

―具体的にはどのように利用されるのですか?

村尾:詳細はUberの関係者へご確認いただく必要がありますが、私共では以下のように捉えています。まずUberEATSに飲食店(レストランパートナーと呼ばれる)が登録を行います。一方で配達を行う個人(配達パートナーと呼ばれる)も同様に登録を行います。自宅や職場などに料理を届けて欲しいユーザーが、UberEATSのアプリで料理を注文します。すると注文内容がレストランパートナーに送信され、レストランパートナーがそれを受注すると、自動的に配達可能な配達パートナーに配達依頼が送られます。配達パートナーは、バイクシェア等の交通手段を利用し、レストランで料理を受け取り、ユーザーのもとへ届けます。ユーザーは調理や配達の状況をリアルタイムで確認することができ、配達完了後、レストランと配達パートナーを評価します。

ここで配達パートナーは配達手段の一つとして弊社の提供する自転車シェアリングサービスを個人向け利用料金(2,000円/月、30分を超えると、以降は100円 / 30分加算)ではなく、法人向けにご用意しているプラン(4,000円 / 月、延長料金なし)で利用することができます。

―シェアリングサービスを利用する配達パートナーにはどんな人がいますか?

村尾:そうですね。私も全容を把握できているわけではありませんが、学生や隙間時間を利用した社会人の方が多い印象があります。先日お会いしたある会社員の方も副業としてご利用いただいているようです。配達パートナーの方は【写真3】のような、UberEATS専用の保冷・保温機能のある配達用バッグで料理を運びます。

UberEATS配達用バッグ

【写真3】UberEATS配達用バッグ
(写真はUber Japan(ドコモ・バイクシェアを通し間接的に)提供)

まれに配達パートナーの方から直接問い合わせを受けることもあるのですが、六本木など坂が多いところでは特に電動自転車が便利である等、感想をいただくことがあります。弊社のサービスを選択していただく方も増えてきていることを有り難いと感じています。

―今後サービスを支える現場担当者としての将来の事業展開への思いを聞かせてください。

村尾翔平

【写真4】営業推進部 プロジェクトリーダー 村尾翔平さん

村尾:飲食店の配達業務を対象としたシェアリングサービスに活路を見いだせるのならば、昨今世間をにぎわせている物流業界にも同様にスポットをあてられるのではないかと考えています。宅配業務を個人事業主が行う機会や手段を提供するという観点から、関連事業者との連携を視野に検討を進めています。また、弊社では次世代自転車の検討なども進めていますが、そうした際には自転車のメンテナンスに対するコストをどう捉えるかがポイントとなります。現在弊社の競合サービスを提供している会社の中にも、メンテナンスコストを意識してか、パンクしないタイプのタイヤを採用する事業者も増えてきています。このような状況も踏まえつつ、私たちは宅配に適した自転車のカタチを常に模索していく必要があると強く感じています。

ヒアリングを終えて

配達パートナー側から見た、シェアリングサービス選択のポイント

今回のヒアリングを通じ、ドコモ・バイクシェアが考える、個人事業主にフォーカスした新たな取り組みについて知ることができた。もちろん、Uberの関係者にも多面的に確認する必要はあるが、配達パートナーからすると、自転車シェアリングサービスを選択することには、以下の利点があると捉えるのではないかと思われる。

  1. 必要な場所で配達手段を適切に確保できること

配達パートナーが自分の所有する自転車やバイクで配達する場合を考えてみよう。六本木や表参道などの都心部で働こうとした場合、対象区域近辺に住んでいれば良いが、そうでない場合は自宅発着時に自転車やバイクで移動する必要が生じるだろう。しかしこの自転車シェアリングサービスを利用すれば、レストラン近くのステーションで自転車を借りることができ、配達が終了した時点で乗り捨てることができるだろう。

  1. 体力や時間が節約できること

UberEATSにもユーザーが配達パートナーを評価する仕組みがあるようだ。配達時間が評価指標の一つになり得るが、配達パートナーはなるべく体力や時間をかけずに短時間で配達したいと考えるだろう。配達パートナー自身が電動自転車を所有している場合を除き、電動自転車で配達できることは体力的なメリットを享受できる。また時間という観点からも、バイクでは入れない路地等へも小回りをきかせて電動自転車で配達できることには、多くの配達パートナーがメリットを感じるのではないだろうか。

  1. 時間を過度に気にせず配達に専念できること

配達依頼はどのタイミングでやってくるかわからない。配達依頼を受けるためにはサービス提供エリアでスタンバイする必要がある。「移動に少し利用する」ことをコンセプトにした個人向け利用プランではなく、延長料金のない法人プランであれば時間を気にせず自転車を借りておくことができそうだ。

“シェアリング”の言葉には様々な意味が包含されている。(1) で特集したような必要なときに移動のために自転車を“シェアリング”するという意味だけでなく、今回の特集のようにレストランの料理をできるかぎり出来立ての状態でユーザーのもとへ届けるための業務全体の一部を “シェアリング”するという意味でも捉えることができるように思う。

現在、再配達や配達時間指定による物流業界の稼働逼迫や、繁忙時期における建設管理関連の業務集中等の問題が生じている。これらは特定個人に業務が集中するケースも多く、情報の管理や部分的な業務の受け渡しの難しさ等の課題もあるだろうが、解決策の一つとして、様々なシェアリングのあり方を検討することで、学生や企業家、高齢者等の活力や労力をより引き出し、それを社会全体で共有できるような仕組みづくりに期待したい。

[1]「ドコモ・バイクシェアが提供する自転車シェアリングサービス (1)」ICR InfoComニューズレター http://www.icr.co.jp/newsletter/wtr339-20170630-abe.html

[2] 「UberEATS、東京で開始!」UBER Newsroom
https://newsroom.uber.com/japan/ubereats/
「登録要件 UberEATSで配達するには」UBER
https://www.uber.com/ja-JP/drive/requirements/

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