2017年12月26日掲載 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:「日馬富士事件」に思う



10月、横綱が平幕力士に暴行して、けがを負わせるという事件があった。連日のように報道されているので読者もこの話題には食傷気味かもしれないが、ご容赦願い、少しだけお付き合いいただきたい。

警察の捜査は書類送検という形で一段落したようであるが、この原稿を書いている時点では、相撲協会が被害者側に事情聴取できておらず、なおはっきりしないところがあって、胸のつかえがとれない方も多いのではなかろうか。ただ、そのきっかけは、説教している最中に説教されている力士がスマホ操作をしたことに腹を立てて、ということのようである。

暴力がいけないことは当然である(誤解を恐れずに正直に言えば、たとえば陰湿ないじめより、限度をわきまえた対等の一対一の殴り合いの喧嘩の方が、相手にも相手の気持ちがあること、それを思いやることが人として大切だということに気付けるような気がするが)。

しかし、これも誤解を恐れずに言えば、横綱が腹を立てたというそのことだけに限定すれば、それはそれでわかるような気が筆者にはするのである。

人様にお説教をするほど人間ができていない筆者としては、また身内のものに何か文句を言おうとすると数倍の反論が返ってくるので既にあきらめの境地に達している筆者としては、上記そのものの場面に遭遇することはないが、似たような状況に置かれることはある。

こちらが冷や汗をかきながら一所懸命説明しているときに、スマホが鳴って話し出す人(実は国会議員の中にも)。会合でスピーチをしているのに下を向いてスマホをいじっている人。前者は当方の説明の仕方が悪いのか、後者は話の中身が面白くないのかと反省もするが、その前にやはりむっとくるのが人情ではなかろうか。

最近は紙の資料を使わず、パソコンの画面を見て会議をしたり、メールで打ち合わせをしたりとアナログ人間の筆者には生きにくい世の中になってきたが、いくら情報収集・伝達に便利な世の中になったといっても、人間は感情の動物である。ありきたりの結論になって申し訳ないが、相手のある場合には相手の気持ちを忖度して接してこそ便利なツールも生きてくるというものである。時には相手を見つめ(と言って、異性を熱い目で見つめて誤解されることがあっても筆者は責任を負えない)、時には足を運んで直接語りかけるといったことも必要であろう。

AI(人工知能)の進歩には目を見張るものがある。膨大な情報を解析して最適な解を瞬時に選択し提示してくれる。とても素晴らしいことだと思う。しかし、ここは怒るべき場面です、悲しむべき場面です、笑うのが適当ですなどとAIに教えてほしいとは誰も思わないであろう。日進月歩の昨今、いずれAIも感情に似たものを持つかもしれないが、知識や論理では導けないウェットなものこそ人たることのあかしではないかと思ってしまうこの頃である。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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