2019年1月29日掲載 ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

5G周波数割当てと自営用5G帯域の設定~エリア形成の弾力化とプライベート5Gの導入



総務省は昨年11月2日「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案について」を公表し意見公募を行いました。この結果を踏まえて、電波監理審議会の諮問・答申が行われ、本年3月末までに5Gの基地局開設に向けて周波数の割当てを行う予定で手続きを進めています。5Gについては「未来投資戦略2018(2018.6.15閣議決定)」において、Society 5.0・データ駆動社会への変革の下、政府の重要政策の一環で2018年度中に周波数の割当てを行って、地方への速やかな普及展開を進めることが示されています。また、昨年8月の総務大臣の諮問を受けて設置された情報通信審議会事業政策部会の特別委員会では、2030年頃を意識した通信ネットワーク全体に関するビジョンと通信基盤の整備等の在り方の議論が進んでいて、本年6月の中間答申、12月の最終答申を予定しています。そこで今回の5G周波数割当ての考え方が、2030年に向けての中心的な課題である5Gサービスの在り方を展望するよい契機となるので取り上げてみます。

5G周波数の割当てを取り扱う電波監理審議会と情報通信政策を検討する情報通信審議会(事業政策部会特別委員会)とは別体系の下にあるので、直接的には関連はなく、それぞれ独立した独自の立場で検討・審議が行われるものではありますが、実際上、モバイル通信サービスが周波数の割当免許によって採用技術(方式)や事業者のサービスレベルなどが規定されることに鑑みると、今後、少なくとも5~10年先の電気通信事業分野の市場構造、競争ルールなどを制約することは間違いありません。そこで、今回の「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針」を詳しく読み込むと、以下の3点が浮かび上がってきます。

第1は、5G向け周波数帯域幅が非常に大きいこと、即ち、3.7GHz帯および4.5GHz帯で6枠(100MHz幅×6=600MHz幅)、28GHz帯で4枠(400MHz幅×4=1600MHz幅)を確保していて、現在使われている周波数幅がモバイル通信事業者全体で800MHz幅弱ですので、新しく3倍近くが割り当てられることになりモバイル通信事業としては画期的なことです。同じく情報通信審議会の下にある「新世代モバイル通信システム委員会」でも審議を再開して、さらに次回の割当て候補となる周波数帯(100MHz幅×2、500MHz幅)の技術検討が始まっています。

2番目は、絶対審査基準にあるエリア展開についての項目がこれまでと全く変わったことです。今回の5Gのエリア展開基準には次の2点が定められています。

  1. 5年後までに全国メッシュ全体の50%以上で5G基地局を配置すること
  2.  2年後までに全都道府県で5G基地局の運用を開始すること

ここには面的なエリアの拡充より、むしろ広範な地方への展開を確保しようとする政策意図が窺えます。昨年の楽天認定時の4G周波数割当てでは、従来継続してきた人口カバー率基準(1.7GHz帯:8年後に80%、3.4GHz帯:5年後に50%)を達成する絶対的審査基準が設定されていたのに対し、180度の転換を示しています。5Gの割当指標としては、全国への展開可能性、地方での早期サービス開始、サービスの多様性を人口カバレッジに代わって評価するとしています。5Gの展開が4Gの時と違って、人のいるところに重きを置くものではなく、5Gの特性である高度な機能を活用するユースケースを想定したエリア形成、具体的にはモバイル通信事業としては、提携先と連携したBtoB(toX)が主流となることを念頭に置いた審査基準となっています。いよいよ電波政策においても、BtoB(toX)を政策課題としていることが見て取れます。

3番目に今回の5G基地局開設指針で私が最も注目しているのは、周波数割当ての基本的考え方のなお書きに、「5Gの自在な利用環境を提供することを可能とするため、自営用等で利用できる割当て枠について検討」との一文があることです。割当枠中では、4600MHz~4800MHzの200MHz幅と28.2GHz~29.1GHzの900MHz幅が示されていて、“今後、速やかに技術基準等の必要な制度整備に向けた検討を実施し、割当方針等について決定”するとして前向きな提示となっています。この自営用等への割当枠を「ローカル5G」と整理し、地域限定および閉空間での利用を想定して、定義や限定方法、電波干渉問題等の技術的条件を策定するために前述の新技術モバイル通信システム委員会での審議を再開しています。地域限定と閉空間での5G利用は来年2020年6月(一部は今年8月)の制度化を想定しています。話題になるのはCATVなど地域限定の5G利用が多いですが、BtoB(toX)のソリューションとしては閉空間での活用こそ、産業界が期待しているところです。工場、オフィス、大型店舗、空港、病院、工事現場、過疎地などで5Gの持つ高機能な特質を特定目的に活かすことで、効率や生産性、品質や安全性、満足度などの向上につながり、産業構造改革に直結するからです。

5Gの周波数割当てに際してのエリア展開がこれまでの人口カバー率方式から大きく転換したのも、5Gの機能が4Gの時とは違って、dedicated(特定目的用)な役割を担っており、その特徴は今後のモバイル通信技術でより一層顕著なものとなると想定できるからです。モバイルネットワークの展開もまた、4Gまでとは大きく異なり、エリア設計や基地局設備面で特定エリアを簡便に迅速に高性能に形成する力が求められることになります。5G時代には、BtoB(toX)活動が中心となるのでモバイル通信事業者の根本からの構造変革が絶対に必要になります。自営用等の周波数割当てこそ、既存モバイル通信事業者に与える3番目(MVNOと楽天に続く)にして最大のインパクトになるような気がしてなりません。

今回の自営用等の周波数割当てを巡っては、当社情総研の岸田上席主任研究員が先月(2019年1月号)、「プライベートLTEの登場と5Gビジネスモデルの今後」と題するレポートを掲載していますので、是非、参考にお読み下さい。自営用の大幅な割当枠から周波数を得て、特定エリアや閉空間での通信サービスを行う自営のモバイル通信事業者がプライベート5Gの事業を急拡大することが十分想定できますので、その場合に既存の通信事業者が果たすべき役割をあらかじめ準備しておくことが大切です。プライベート5G通信事業に対し、例えば、設備を貸すのか、それとも設備構築の受託を目指すのか、さらに、サービス開始後の設備保守まで担うのか、最も重要となる通信トラフィック制御を行うのか、それらの組み合わせなどさまざまな形態が想定できます。いずれにせよ、自営のモバイル通信事業者は単なる競合者ではなく、5G通信市場を拡充する大切な協調・連携相手となることを忘れてはなりません。そのために、プライベートLTEが先行していることから、現状、既に世界中でみられるプライベートLTEの動向とその背景にある共用など周波数活用の在り方や利用条件の設定方式などを研究しておくべきでしょう。通信サービスの個別化とユーザー利用の最適化は世界の大きな潮流となっています。

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