2010年5月28日
(株)情報通信総合研究所

ICT経済、自律的な回復の兆し
-ICT設備投資、リーマン・ショック前の9割に回復-

 (株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:平田正之)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学篠崎彰彦教授監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」と題して四半期ごとに公表しております。1-3月期の実質GDPは前期比1.2%増、年率換算4.9%増と前期に比べプラス幅が拡大する中で、2010年1-3月期のICT経済の状況がまとまりました。

 なお6月上旬には詳細データとともに同経済報告を弊社Web サイト上で公開しますので、合わせてご利用ください(http://www.icr.co.jp/ICT/)。

図表入りの発表資料
A4縦・9頁・約436KB
press20100528.pdf

2010年1−3月期、足元のポイント

 民間部門のICT設備投資動向を表すICT機械受注(民需)が3月に入り好調だ。半導体製造装置がけん引役となっており、減少幅の拡大が懸念されていた電子計算機が下げ止まった。中国を中心とした海外需要やエコポイント制度などの国内政策に支えられ、先行して回復していた生産活動がICT設備投資にまで波及した格好だ。
在庫の循環過程をみても、今期は「意図した」在庫積み増し局面に入っており、ICT関連の生産・出荷・投資の好循環構造が再び生まれつつある。
 ただ、今回のICT設備投資の好調さは海外需要やエコポイントなどの政策効果に支えられた面がある。ICT設備投資の回復局面において、データセンター向けのサーバ需要の増加等、情報システムの所有から利用へという構造変化も見え始めている中で、今後、クラウド・コンピューティングやグリーンICT分野などの新規分野向けに積極的な投資が行われ、新たな好循環がうまれるかが注目点。

今回のポイント

  1. ICT機械受注(民需)は3四半期連続で減少幅が縮小。受注額の水準はリーマン・ショック以前(2007年平均)の9割程度。半導体製造装置が2四半期連続で増加。電子計算機は減少幅が縮小。
  2. ICTサービスは受注ソフトウェアの減少幅が拡大し、減少に転じた。
  3. ICT生産、輸出は2四半期連続で増加し、順調に回復(生産は51.2%、輸出は50.7%)。
  4. ICT生産の順調な回復を伴い、在庫は在庫調整から意図した積み増し局面に転じた。
  5. ICT経済の今後を見通すと、政策効果の弱まりが懸念される中で、構造変化を伴うICT設備投資が本格化するかという点である。

2010年1−3月期の動向

 図表は詳細版に掲載しております。press20100528.pdf

(ICT 関連生産)

  • ICT関連生産は2四半期連続で増加した(1-3月期は前期比43.7ポイント上昇し、プラス51.2%、図表1)。全12品目中12品目で前年比増、前期から4品目増加となった。
  • 鉱工業生産が80年代後半の水準にとどまる中で、ICT関連生産は2000年のITバブル期ピークを越える水準まで回復している(図表2)。

(ICT関連在庫)

  • ICT関連在庫は、2009年7-9月期に回復局面に入った後、2010年1-3月期は在庫積み増し局面に入った。鉱工業生産全体の在庫循環に先行している(図表3)。

(ICT関連サービス)

  • ICT関連サービスは再び減少に転じた(前期比1.3ポイント悪化し、前年同期比マイナス0.3%、図表1および図表4)。受注ソフトウェアの減少幅が拡大。ただし、ソフトウェアプロダクトは増加に転じた。

(ICT関連消費)

  • ICT関連消費は13四半期連続で増加を維持し(前年同期比4.9%、図表1)、移動電話通信料とインターネット接続料が引き続き増加に寄与した。

(ICT関連設備投資(機械受注))

  • 民需は7四半期連続で減少したものの、減少幅は縮小した(前期比7.5ポイント改善し、前年同期比マイナス4.8%、図表1)。半導体輸出の増加をうけて、半導体製造装置が2四半期で増加したことと、電子計算機の減少幅が縮小したことが背景にある(図表5)。電子計算機の減少幅の縮小はクラウド・コンピューティング向けサーバ需要の増加などが影響したものと思われる。民需の機械受注(除く船舶・電力・携帯電話)はリーマン・ショック以前(2007年平均)の8割弱の水準であるが、ICT機械受注(除く携帯電話)は9割程度の水準にまで回復した(図表6)。
  • 官公需は2四半期連続で増加した。

(ICT関連輸出入)

  • ICT関連輸出は2四半期連続で増加。輸入は11四半期ぶりに増加に転じた(輸出は前期比50.3ポイント改善し、前年同期比プラス50.7%、輸入は前期比36.0ポイント改善し、前年同期比プラス28.0%、図表1)。引き続き中国の内需刺激策等の影響により、中国を中心としたアジア向けの半導体等電子部品輸出が増加。電算機類や通信機も増加に転じた。

まとめと今後の展望

  • 過去の上昇トレンド(前回の景気拡大が始まった時点2002年第1四半期からのトレンド)からみると、ICT関連生産の増加余地はまだあるとみられる(図表2)。生産回復が政策効果の剥落によって弱含みとなるのかという点は、今後のICT経済の注目点である。
  • 生産増加の背景にあるICT関連輸出の回復は、中国の内需刺激策によるところが大きく、今後、欧米の緩やかな景気回復も生産増加に寄与する。ただし、世界的なIT供給拠点である韓国半導体の出荷・在庫バランスがピークアウトしており、2010年10-12月期、2011年の動向は注意を要する。
  • 内需は、経済対策(エコポイント制度)によるデジタル家電(最終製品)や電子部品など関連部品需要増加の継続は期待できる。2011年の地上波デジタル完全移行を控え、当面需要は底堅いと思われる。
  • 一方、ICT関連サービスではソフトウェア投資の低迷が継続しているが、ICT関連機械受注の電子計算機の下げ止まりなどを受けて、今年度後半の回復が見込まれる。ICT投資がクラウド・コンピューティングやグリーンICTなど構造的な変化を伴う新規投資によって、自律的な回復基調となるのか、今後のICT経済動向において重要である。
  • なお、ICT関連消費は安定しており、消費全体が弱含みとなる可能性が指摘されている中で、移動電話通信料とインターネット接続料を中心に底堅い動きを今後も示すと見られる。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10 アーバンネット日本橋ビル
TEL 03-3663-7153/FAX 03-3663-7660
 株式会社情報通信総合研究所マーケティング・ソリューション研究グループ
経済分析チーム:主席研究員 野口正人、主任研究員 手嶋彩子、研究員 山本悠介、
研究員 佐藤 泰基、研究員 山崎将太、研究員 久保田茂裕
監修 九州大学大学院経済学研究院教授 篠崎彰彦

※本稿の内容に関するお問い合わせは、下記までお願いいたします。


本リリースに関するお問合せ先
株式会社情報通信総合研究所
マーケティング・ソリューション研究グループ
担当:
Tel :03-3663-7153 Fax 03-3663-7660