2011年11月28日
(株)情報通信総合研究所

ICT経済、3期連続のマイナス、V字回復ならず
−ICT消費とICT輸出の不調が原因、今年度下半期に不安−

 (株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:平田正之)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学篠ア彰彦教授監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しております。先日内閣府より発表された2011年7-9月期の実質GDPは前期比1.5%、年率換算6.0%と4四半期ぶりにプラス成長となりました。本日、ICT経済概況について2011年7-9月期がまとまりましたのでご報告いたします。

 なお12月中旬に、ICT経済報告を弊社Webサイト上で、本リリースの詳細版を公開予定です。(http://www.icr.co.jp/ICT/)。

図表入りの発表資料
A4縦・10頁・約532KB
press20111128.pdf

ICT経済概況と見通し

 ICT経済は、今期、緩やかな回復にとどまった。ICT生産・サービス総合指数の前年同期比で0.7ポイントの改善、マイナス4.3%となった。さらに月次ベースの動きをみると、7月は前年同月比マイナス3.8%、8月は同マイナス2.9%、9月は同マイナス5.9%と、V字回復には程遠い推移となっている。

[図表2 ICT生産・サービス総合指数(ICT経済指標)]

 第1の要因はICT生産に大きく影響するICT輸出の回復の遅れである。輸出全体では、7-9月期は前年同期比0.5%とわずかに増加に転じているが、ICT輸出は同マイナス7.4%にとどまった。世界的なパソコン需要の縮小が半導体等の在庫を押し上げたためだ。ただし、ICT輸出の月次ベースの推移をみると、7月は前年同月比マイナス9.1%、8月は同マイナス8.8%、9月は同マイナス4.1%と改善してきている。

 ICT生産が9月にかけてマイナス幅を拡大させた原因はICT消費である。前期のICT消費は、前年同期比4.4%増と景気の下支え役を見事に果たしたが、今期は一転マイナス5.1%と大きく落ち込んだ。液晶テレビの需要の前倒しによる反動減が響いた。月次ベースの推移をみると、7月は前年同月比プラス6.4%、8月は同マイナス9.5%、9月は同マイナス11.7%と液晶テレビの需要減を大きく引きずっている。

 今後の見通しとしては、ICT経済は厳しい状況が続くと考えられる。ICT生産、ICTサービスの2面から整理すると以下の通り。
ICT生産の今後を輸出面から見ると、世界的なスマートフォン、タブレット型端末という新しい需要がパソコン需要の低迷を補うことができるか、また国内にあってはこれまでの液晶テレビの需要に代替するICT消費財が出てくるかという点にかかっている。スマートフォンやタブレット型端末が急速に普及しつつあるが、そこからの派生商品を含めて考えても、パソコンや液晶テレビ需要を補うことができるかは未知数だ。またICT生産に大きく影響する輸出面では、世界経済の状況も気にかかるところだ。

 ICTサービスについては、情報サービス業の回復が一つのポイントとなる。東日本大震災で明らかになった諸課題の解決のための医療、行政、労働等各分野のICT利活用の促進が実現され、ICTサービスの推進力となるか、また同時に、消費者へのスマートフォン、タブレット型端末の普及が、eコマース等の利用をさらに促進し、ICT消費を押し上げ、結果、インターネット関連サービス市場の成長を促進するような動きかが出てくるか、その動きが短期で出てくれば、予想を上回る回復を見せるであろうが、どうであろうか。

2011年7-9月期のポイント

<ICT経済総合>

  1. 国内ICT経済は3期連続のマイナスとなった。

<供給サイド>

  1. ICT生産は回復のペースは緩やかで、減少幅が縮小したに止まる。一方、在庫調整は進展。
  2. ICTサービスは情報サービス業の回復が前期の期待通りに進まず、減少。

<需要サイド>

  1. ICT消費は液晶テレビの駆け込み需要の反動減で大幅に減少。
  2. ICT投資は通信機の大幅増加によりプラスを維持。
  3. ICT輸出は回復基調であるが、回復ペースは緩やかで減少幅の縮小に止まる。

2011年7-9月期の動向(項目別)

 図表は詳細版に掲載しております。(press20111128.pdf)

(ICT経済総合)

  • 今期国内ICT経済は対前年比マイナス4.3%と前期より若干マイナス幅は縮小したものの、3期連続のマイナスとなった。(7-9月期は前期比0.7ポイント改善し、前年同期比マイナス4.3%、図表3)。

(ICT関連生産)

  • ICT関連生産は3四半期連続で減少した(7-9月期は前期比3.3ポイント改善し、前年同期比マイナス10.2%、図表3)。
  • 集積回路が最大の減少要因だが、減少幅は縮小した。

(ICT関連在庫)

  • ICT関連在庫は、7-9月期は前期比34.5ポイント低下し、前年同期比7.8%増となった。引き続き在庫積み上がり局面に位置するが、増勢は小さくなっており、在庫調整は進んでいる(図表4)。
  • 品目別にみると、民生用電子機械の在庫は減少し、集積回路の伸び率は縮小した。

(ICT関連サービス)

  • ICT関連サービスは減少(前期比0.8ポイント低下し、前年同期比マイナス1.0%、図表3)。
  • 主要な減少要因である受注ソフトウェアやソフトウェアプロダクトは前期と同程度の減少が継続。

(ICT関連消費)

  • ICT関連消費は減少に転じた(前年同期比マイナス5.1%、図表3,7)。
  • 液晶テレビの地上デジタル放送への移行前の駆け込み需要の反動減による減少。

(ICT関連設備投資(機械受注))

  • 民需(除く電力、携帯電話)は7四半期連続で増加した(前期比1.3ポイント減少し、前年同期比4.9%、図表3,6)。
  • これまで牽引役であった半導体製造装置の伸び率が大幅に縮小。一方、通信機は増加に転じた。
  • 官公需は4四半期連続で減少した(図表3)。

(ICT関連輸出入)

  • ICT関連輸出は3四半期連続で減少したが、減少幅は縮小した(輸出は前期比6.1ポイント低下し、前年同期比マイナス7.4%、図表3,5)。
  • 最大の減少要因である半導体等電子部品輸出の減少幅が縮小しているため(図表5)。
  • ICT関連輸入は2四半期連続で減少した(輸入は前期比1.2ポイント低下し、前年同期比マイナス5.5%、図表3)。

今後の展望

  • ICT経済は今後も厳しい状況が続くと考えられる。その理由はICT生産、ICTサービスの2面から整理すると以下の通り。

  • ICT生産の今後を考えるにあたっては、輸出面から見ると、世界的なスマートフォン、タブレット型端末という新しい需要がパソコン需要の低迷を補うことができるか、また国内にあってはこれまでの液晶テレビの需要に代替するICT消費財が出てくるかという点にかかっている。スマートフォンやタブレット型端末が急速に普及しつつあるが、そこからの派生商品を含めて考えても、パソコンや液晶テレビ需要を補うことができるかは未知数だ。またICT生産に大きく影響する輸出面では、世界経済の状況も気にかかるところだ。

  • ICTサービスについては、受注ソフトウェアやソフトウェアプロダクト等の情報サービス業の回復が一つのポイントとなる。東日本大震災で明らかになった諸課題の解決のための医療、行政、労働等各分野のICT利活用の促進が実現され、ICTサービスの推進力となることを期待したい。同時に、消費者へのスマートフォン等の普及が、さらなるeコマース等の利用を促進し、ICT消費を押し上げ、結果、インターネット関連サービス市場の成長を促進するような動きかが出てくるか注目される。

  • その他では、ICT投資については今期これまで堅調に推移してきた半導体製造装置やサーバ等電子計算機の伸び率は鈍化し、唯一、通信機がその鈍化分を補った形であった。通信機が好調であったのは、スマートフォンの急速な普及に対応した、LTE等モバイルブロードバンド関連投資によるものと想定され、一方、半導体製造装置の低迷は、パソコン需要の低迷によるものであり、サーバ等電子計算機は、金融機関向けの特需の反動減が影響している。モバイルブロードバンドへの投資は続き、通信機についてはしばらく堅調に推移するであろうが、半導体製造装置や電子計算機はこれまで牽引してきた要因に代わるものが出てこないと低迷は続くであろう。一つの可能性として、企業の情報化投資の活発化がポイントになる。企業のBCP(事業継続計画)対策の一環として、クラウドコンピューティングの活用やデータセンターの複数拠点化が注目されており、そのニーズに対応すべくICT企業も積極的な事業展開を進めているところであり、この動きが大きく広がるようになれば、ICT投資にプラスの効果をもたらすであろう。

  • 懸念事項は、この冬も引き続き電力供給制約の心配があり、これが長期化することと円高である。この状況が改善されない限り、企業は生産拠点の海外移転の蓋然性を高め、国内の投資全体にマイナスの影響をもたらす。

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 経済分析チーム:主席研究員 野口正人、
主任研究員 手嶋彩子、副主任研究員 山本悠介、副主任研究員 山崎将太、
研究員 佐藤泰基、研究員 久保田茂裕
監修 九州大学大学院経済学研究院教授 篠ア彰彦

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