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2015年8月28日

ICT経済、輸出中心に足踏み状態
-ICT投資が下支え-

(株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:浮田豊明)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学教授篠﨑彰彦氏、神奈川大学教授飯塚信夫氏監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しております。本日、ICT経済概況について2015年4-6月期がまとまりましたのでご報告いたします。

なお、本リリースの詳細版は弊社Webサイト「ICT経済報告」(http://www.icr.co.jp/ICT/)上で、近日中に公開予定です。

<ICT経済概況と見通し>

2015年4‐6月期のICT経済は、前年同期比4.5%と3四半期連続で増加したものの、季節調整済みの前期比では横ばいにとどまった。前年同期比の動きには、前年同期の消費税増税前の駆け込み需要、Windows XP更新需要の反動減の影響が含まれているためである。ICT経済は足踏み状態にある。主因はICT輸出の不振。2期連続の減少となったが、これが財生産の減速をもたらしている。一方、ICT投資が電子計算機を中心に下支え役となっている。

ICT経済(ICT関連財・サービス)の推移(季節調整比、対前期比)

【図表】ICT経済(ICT関連財・サービス)の推移(季節調整比、対前期比)

なお、消費の減少幅拡大は、携帯電話キャリアによる新料金の普及などによる移動通信使用料の下落によるもので、実質的な活動を示すサービス活動指数をみると、移動通信は増加を維持している。

前期比でみた需要項目別の動きは以下の通りである。
ICT設備投資(民需)は3四半期連続で増加した。電子計算機は金融業向けが大幅に増加し、情報サービス業、卸・小売業向けの増加が継続した。半導体製造装置はスマートフォンや車載向け部材需要の高まりを受けて増加した。

一方、通信機は通信業や情報サービス業向けが低迷している。

ICT消費は2期連続マイナスとなった。これまでICT消費をけん引してきた移動電話使用料の減少が大きい。移動電話使用料の減少は新料金プランの利用者増加の影響と考えられる。

ICT輸出は2四半期連続の減少となった。ICT輸入も2期連続のマイナスである。ICT関連の輸出入はともにマイナスが続いており、その動向に注視が必要だ。

2015年10-12月期以降ついてはまず情報化投資が堅調に推移することが期待される。好調な企業業績による設備投資マインドの改善やマイナンバー制度などへの対応がけん引しよう。ICT消費は携帯電話キャリアの新料金プランの影響や新興のMVNOサービス(格安スマホ)の影響が注目される。格安スマホへの乗り換えによるスマホユーザのARPU減少というマイナスの影響が、一方でゲーム・コンテンツ等新たなモバイル需要の拡大をどこまで進めるかが鍵を握ろう。ICT輸出の先行きについては、中国の景気低迷が懸念される。ただし、中国ICT企業でも国外に展開している企業は減速しておらず、影響は軽微であると想定される。ICTサービスは好調な国内の情報化投資需要やマイナンバー対応等制度要因により堅調に推移するとみられる。

 

<今後の展望>

  • 今期ICT経済は、総合、財、サービスの3指標が前期比で3四半期連続でプラスを維持したが、総合、財では増加幅は減少し、サービスはほぼ横ばいといえる。ICT財の減速は明らかであり、それは中国を中心に海外経済の減速の影響で輸出が低調となっているためである。また円安を背景にした物価上昇に対し賃金の伸びが追いつかない中で消費が低迷しており、来期以降、ICT財がプラスを維持できるのか注目される。
  • ICT財については、スマートフォン向けや車載向けの高機能部材需要がこれまで牽引してきたが、海外、主に中国向けスマートフォン需要の鈍化が部材需要にもたらすマイナスの影響が懸念される。ただし、海外展開する中国メーカは業況を維持しているため、中国経済減速のICT財生産への影響は軽微に留まるという見方もある。また、中長期的には、産業用機器、社会インフラ、医療機器向け等IoT市場やそのデータを活用したビッグデータ市場の立ち上がりを背景にした電子部品需要の拡大も期待される。
  • ICTサービスについては、業績改善を背景とした情報システムの更新需要、マイナンバー制度導入に向けたシステム対応に加え、セキュリティへの対応や金融機関のシステム統合、電力改革に伴うシステム開発など民需、官公需ともに好調を維持するであろう。また中長期的課題となる人手不足の解決に向けた情報化投資(コールセンターにおけるロボット活用等)も徐々に活発化すると見込まれる。またマス向けのサイト運営業はeコマースサイトやスマートフォン向けゲーム等のコンテンツ課金を中心に引き続き堅調であろう。
  • ICT設備投資は、電子計算機の回復が持続するものと見られる。通信機は通信業の設備投資の一巡により減少が続く見通しだ。電子計算機はデータセンター新設等のプラス要因もあり回復基調を持続する見込みである。半導体製造装置はスマートフォン向け半導体需要の鈍化がマイナスの影響をもたらす可能性がある。
  • ICT消費については、所得が伸びない中で食料品等生活必需品の値上がりにより可処分所得が減少している中で、家計の通信費の抑制ニーズがより強くなるであろう。光回線の卸サービス「光コラボレーションモデル」やMVNOサービス(格安スマホ)は大手キャリアサービスに比べ安さを訴求しており、既存ユーザの乗り換えが進むと通信支出の下押し圧力になる。通信料の低下のみが浸透するとICT消費の減少基調が続くことになる。
  • ICT輸出は、前述の通り、中国経済の減速が懸念されるが、新興国を中心としたスマートフォンの浸透や車載向け需要の高まりにより、中長期的には高機能を強みにする国内メーカの電子部品需要は底堅く推移する見通しである。

<会社概要>

社名 株式会社情報通信総合研究所(www.icr.co.jp)  1985年6月設立。情報通信専門のシンクタンクとして、情報通信分野の専門的調査研究、コンサルティング、マーケティング、地域情報化にかかわる調査・提案などのビジネスを展開するとともに、これらに関するノウハウ・データを蓄積してきた。近年は、ICTの急激な進展に伴い、研究分野をさらに拡大することでICTが経済社会にもたらす変化を定量的に把握する手法を開発するなど、広く社会の発展に寄与する情報発信・提言を行う最先端のシンクタンクとして事業を展開している。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10
アーバンネット日本橋ビル

TEL 03-3663-7157/FAX 03-3663-7390

株式会社情報通信総合研究所
ICT経済分析チーム

主席研究員:野口正人
主任研究員:手嶋彩子、山本悠介
研究員:佐藤泰基、久保田茂裕、鷲尾哲

監修
九州大学大学院経済学研究院教授 篠﨑彰彦
神奈川大学経済学部教授 飯塚信夫