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2015年12月1日

ICT経済、4四半期ぶりのマイナス成長へ
-ICT財生産、サービスともに減速も9月からは反転の兆し-

(株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:浮田豊明)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学教授篠﨑彰彦氏、神奈川大学教授飯塚信夫氏監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しております。本日、ICT経済概況について2015年7-9月期がまとまりましたのでご報告いたします。

なお、本リリースの詳細版は弊社Webサイト「ICT経済報告」(http://www.icr.co.jp/ICT/)上で、近日中に公開予定です。

<ICT経済概況と見通し>

2015年7‐9月期のICT経済は前年同期比2.2%増と4四半期連続でプラスとなった。しかし、この前年同期比の動きには、前年に消費税率引き上げ直後の落ち込みがあった影響が含まれている。そこで、前期比(季節調整値)の動きを確認すると1.4%減と4四半期ぶりに減少に転じた。ICT経済は15年1-3月期から前期比ベースで減速基調が続いているが、ICT財生産は主に中国向け部材需要の低迷、ICTサービスは情報サービス業の減速が背景にある。

ICT経済(ICT関連財・サービス)の推移(季節調整値、対前期比)

ICT経済(ICT関連財・サービス)の推移(季節調整値、対前期比)

月次ベースでみると9月以降反転の兆しがある(下記グラフ参照)。供給面ではICT財生産が、需要面ではICT設備投資(機械受注)の他、ICT輸出が一部で増加に転じている。新型iPhoneを中心とするスマートフォン向け生産の本格化等が背景にあると推察される。

ICT関連経済指標(前期比)の推移(月次)

ICT関連経済指標(前期比)の推移(月次)

需要項目別の前期比ベースの動きを確認すると以下のとおりである。

ICT設備投資(民需)は5四半期ぶりに減少した。前期マイナスとなった通信機が持ち直しプラスの寄与となったが、電子計算機が5四半期ぶり、半導体製造装置が4四半期ぶりにマイナスを記録した。電子計算機は、業界動向としては金融業、情報サービス業向けは調子がよく、好調を維持しているとされているが、今期はマイナスに落ち込んだ。半導体製造装置は中国経済の低迷により半導体が供給過剰となっている半導体メーカーが設備投資を絞ってきているためとみられている。

ICT消費は減少から増加に転じた。4Kテレビが牽引役となり、テレビが増加に転じたことが背景にある。ICT消費を牽引してきた移動電話使用料は引き続き減少しているが、通信事業者の収入面では落ち着いてきており、徐々に下げ止まってくると考えられる。

ICT輸出入は金額ベースでは3四半期ぶりに増加に転じたが、為替要因を除いた数量ベースではICT輸出入ともに減少が継続している。ICT輸入は通信機のみが数量ベースで増加に転じた。背景には新型iPhoneの発売がある。

2015年10-12月期以降、特に年明け以降については、通信機を除くICT設備投資の回復が期待される。マイナンバー制度、セキュリティ対応投資等、制度対応や課題解決投資の進展が期待される上に、クラウドサービスやIoT、ビッグデータ活用等の情報化投資が企業の人手不足の課題解決等の手段となることから、今後一層進展するものと思われる。これらの点があるため、中国経済を中心とした海外経済の減速を背景にした企業マインドの悪化による設備投資への影響が心配されるが、情報化投資はこれ以上減速しにくいものと考えられる。

ICT消費は、テレビや通信機器がこれから年末に向けて増加幅を増やすのかがポイントであり、また中長期的には携帯電話料金に関する総務省のタスクフォースの議論やMVNOサービスの影響がポイントになる。格安スマホへの乗り換えによるユーザの一人当たり通信費支出減少というマイナスの影響は徐々に小さくなる一方、デジタルコンテンツ購入の拡大やMVNOによる新しい融合サービスの提供など新たなモバイル関連需要が拡大するのかが、ICT消費の鍵を握ろう。ICT輸出の先行きについては、9月以降、一部、スマートフォン向け電子部品の輸出が増加に転じており、中国経済のもう一段の減速がなければ、下げ止まることが期待される。

<今後の展望>

  • 今期ICT経済は、総合、財、サービスの3指標が前期比で4四半期ぶりに減少に転じたが、月次ベースでは一部9月より増加に反転しており、来期プラスに転じることができるのか注目される。
  • ICT財生産については、今後も、海外、主に中国向けスマートフォン需要の伸びの鈍化が部材需要にもたらす影響が懸念される。ただし、スマートフォンやタブレット端末の薄型化、高速化など高機能化に対応した部材需要は堅調であると言われており、この部分を強みとする日本メーカーの輸出は底堅く推移し、中国経済減速のICT財生産への影響は軽微に留まることが期待される。加えて耐久消費財のICT化が進んでおり、例えば自動車1台あたりの搭載電子部品数は増加するなど、耐久消費財向けの需要が拡大している。中長期的には、IoT、ビッグデータビジネスの立ち上がりを背景にした産業用機器、社会インフラ、医療機器向け等の電子部品需要の拡大も期待される。
  • ICTサービスについては、企業向けではビッグデータ、IoTなどを中心に利活用が進み、また現在設備投資先となっているマイナンバー制度、セキュリティシステム、金融システムなどの導入、利用が進展する。消費者向けでは、ゲームなどの娯楽系、電子商取引などの生活系ICTサービスの浸透によりそれに関連する情報サービス業等が広がることが期待される。一方、昨今の国内外の経済情勢などにより企業マインドが不安定化している点や家計部門が必ずしも好調とは言えない点から来期以降プラスに回復するか予断を許さない。
  • ICT設備投資の焦点は今期マイナスに落ち込んだ電子計算機と半導体製造装置だ。電子計算機についてはマイナンバー制度導入に向けたシステム対応、セキュリティへの対応や金融機関のシステム統合、電力自由化に伴うシステム開発など年度後半に向けて堅調に推移するであろう。また人手不足の解決など課題解決に向けた情報化投資(IoT活用による生産性向上、コールセンターにおけるロボット活用等)が国内外のデータセンター新設・増設につながりサーバー需要をもたらすと見込まれる。スマートフォンの新型モデルの投入やデータセンターの新設・増設は、端末機器やサーバーに使う各種半導体の需要を拡大し、半導体製造装置の需要増につながると考えられるが、中国等輸出先の景気次第では回復が遅れる可能性がある。通信機は大手通信事業者の設備投資の一巡の影響が大きく、今期プラスとなったが安心はできない。
  • ICT消費については、所得が伸びない中で消費税増税による可処分所得の減少の影響が残る中、家計の通信費抑制ニーズはより強くなっている。このような中で年末に向けてテレビやスマートフォン、タブレット端末など通信機器の売れ行きがどのようになるのかが注目される。通信機器が売れることによりサービス利用も活発化することが期待され、テレビ、通信機器の動きは短期的に要注意だ。さらに来年以降、総務省の携帯電話料金に関するタスクフォースの議論を受けた、新たな料金プランとそれに関する消費者の行動が注目される。光卸を利用したサービスやMVNOサービスは大手キャリアサービスに比べ消費者に対し利用料金の安さを訴求しており、通信支出の下押し圧力になる。通信料の低下がICT消費の活発化をもたらすのか注目される。一方、これまで減少基調から抜けきれなかったテレビは、4Kテレビが品揃えの拡充と価格の低下を背景に販売を伸ばしており、今後もICT消費のプラス要因となるであろう。
  • ICT輸出は、中国経済の減速が懸念される。スマートフォンの高機能化、車載向け需要の高まりにより、中長期的には高機能を強みにする国内メーカーの電子部品需要は底堅く推移するであろうが、輸出全体がプラスになるかは慎重に動向を観察する必要がある。

<会社概要>

社名 株式会社情報通信総合研究所(www.icr.co.jp)  1985年6月設立。情報通信専門のシンクタンクとして、情報通信分野の専門的調査研究、コンサルティング、マーケティング、地域情報化にかかわる調査・提案などのビジネスを展開するとともに、これらに関するノウハウ・データを蓄積してきた。近年は、ICTの急激な進展に伴い、研究分野をさらに拡大することでICTが経済社会にもたらす変化を定量的に把握する手法を開発するなど、広く社会の発展に寄与する情報発信・提言を行う最先端のシンクタンクとして事業を展開している。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10
アーバンネット日本橋ビル

TEL 03-3663-7157/FAX 03-3663-7390

株式会社情報通信総合研究所
ICT経済分析チーム

主席研究員:野口正人
主任研究員:手嶋彩子、山本悠介
研究員:佐藤泰基、久保田茂裕、鷲尾哲

監修
九州大学大学院経済学研究院教授 篠﨑彰彦
神奈川大学経済学部教授 飯塚信夫