情報通信総合研究所(ICR - InfoCom Research,Inc)は情報通信専門のシンクタンクです。

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2016年3月11日

金融・保険業でICT関連の設備投資が好調
-ICT経済は5四半期連続のプラスを維持-

(株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:眞藤 務)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学教授篠﨑彰彦氏、神奈川大学教授飯塚信夫氏監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しております。本日、ICT経済概況について2015年10−12月期がまとまりましたのでご報告いたします。

なおICT経済報告は弊社Webサイト「ICT経済報告」(http://www.icr.co.jp/ICT/)上で詳細版を近日中に公開予定です。

<ICT経済概況と見通し>

2015年10‐12月期のICT経済は、増加幅は縮小したものの前年同期比0.6%増と5四半期連続でプラスとなった(前期比では2四半期ぶりに増加(0.4%増)となった)。ICTサービスはプラスを維持したものの、ICT財生産は5四半期ぶりにマイナスに転じた。

ICT関連財・サービス総合指標の推移

【図表】ICT関連財・サービス総合指標の推移

ICTサービスのプラス要因としては、移動電気通信業の他、情報サービス業の貢献が大きい。具体的には、大手金融機関のICTシステムの高度化、制度要因としてのマイナンバー対応、そこから派生したセキュリティ対応がある。これら企業のICTサービス利活用の進展がICT設備投資の増加につながったと考えられる。

ICT設備投資の動向をみると、15年1-3月期よりプラス基調を維持しているが、その牽引役は電子計算機である。業種別にみると、システム高度化に取り組む金融・保険業の寄与が大きいことがわかる。

機械受注に占めるICT関連機種の寄与度

【図表】機械受注に占めるICT関連機種の寄与度

機械受注(民需)に占める電子計算機の業種別寄与度

【図表】機械受注(民需)に占める電子計算機の業種別寄与度

一方、ICT財生産のマイナス要因は、集積回路の減少が大きい。集積回路はテレビやパソコン、自動車など広く使われているが、パソコンやスマートフォン需要の落ち込みの影響が考えられる。

来期以降についてICT経済がプラスを持続するためにはICTサービス関連の設備投資が好調を持続することが必要だ。そのためには、金融・保険業のシステム高度化だけではなく、本格的な運用が始まったマイナンバー関連のICT利活用(セキュリティ対応含む)や企業の業績回復を背景にしたシステム更新や新規投資の継続が鍵になるだろう。ただ、海外経済の不透明感を背景にした企業マインドの悪化が設備投資を抑制させる可能性については注意が必要だ。

一方、ICT財生産については、スマートフォン需要がこれまでと同じように拡大することが期待できず、パソコンが回復するような要因も見当たらないため、しばらく低迷する可能性が高い。

その他、ICT消費は、しばらくは力強さに欠ける動きが続こう。中長期的には携帯電話料金に関する総務省のタスクフォースの議論の影響やMVNOサービス、光卸サービス活用の影響が注目される。また、まもなくスタートする電力小売り自由化に伴う通信各社のさまざまなセット割の提供が新たな需要を喚起することが期待される。ICT輸出の先行きについては、海外市場のLTE化を背景にしたスマートフォンの部材需要は期待できるが、各国地域の経済状況が気にかかるところだ。

【今後の展望】

  • 今期ICT財・サービス総合とICTサービスは5四半期連続で増加したが、ICT財生産は5四半期ぶりに減少した。来期ICT財生産がプラスに転じるか注目される。
  • ICT財生産は、海外、主に中国向けスマートフォン需要の伸びの鈍化が部材需要にもたらす影響が懸念される。ただし、薄型スマートフォンやタブレット端末の普及、LTE(高速化)など高機能化に対応した部材需要は堅調であると言われており、この部分を強みとする日本メーカーの輸出の下げ止まりとICT財生産への影響が軽微に留まることが期待される。中長期的には、IoT、ビッグデータビジネスの立ち上がりを背景にした産業用機器、社会インフラ、医療機器向け等の電子部品需要の拡大が期待される。
  • ICTサービスについては、企業向けはビッグデータ、IoTなどを中心に利活用が進み、金融分野ではシステム投資が継続する模様である。またマイナンバー制度の導入、それに伴うセキュリティ対応、軽減税率導入に向けたシステム対応等によるICT利用の進展が進むであろう。消費者向けでは、電子商取引などの生活系ICTサービスの浸透によりそれに関連する情報サービス業等が広がることが期待される。
  • ICT設備投資の焦点は今期プラスを維持した電子計算機と半導体製造装置だ。電子計算機については、前述の通り、マイナンバー制度導入、セキュリティへの対応や金融機関のシステム統合、電力自由化に伴うシステム開発などに向けて堅調に推移するであろう。また人手不足の解決など課題解決に向けた情報化投資(IoT活用による生産性向上、コールセンターにおけるロボット活用等)が国内外のデータセンター新設・増設につながりサーバー需要をもたらすと見込まれる。データセンターの新設・増設は、端末機器やサーバーに使う各種半導体需要を拡大し、半導体製造装置の需要増につながる。
  • 消費全体では、所得が伸びない中で1世帯あたりの消費支出が2年連続で減少している。そのような中、ICT消費は、光卸を利用したサービスやMVNOサービスは大手キャリアサービスに比べ消費者に対し利用料金の安さを訴求しており、新規ユーザの開拓にどれだけ貢献するか、また通信料の低下がスマートフォン等ICT端末・サービスを活用した消費の活発化をもたらすのか注目される。一方、テレビは、4Kテレビが品揃えの拡充と価格の低下を背景に販売を伸ばしており、今後もICT消費のプラス要因となるであろう。
  • ICT輸出は、中国経済の減速や足元で進む円高の影響が懸念される。スマートフォンの高機能化、車載向け需要の高まりにより、中長期的には高機能を強みにする国内メーカーの電子部品需要は底堅く推移するであろうが、短期的に輸出全体がプラスに回復するかは慎重に動向を観察する必要がある。

<会社概要>

社名 株式会社情報通信総合研究所(www.icr.co.jp)  1985年6月設立。情報通信専門のシンクタンクとして、情報通信分野の専門的調査研究、コンサルティング、マーケティング、地域情報化にかかわる調査・提案などのビジネスを展開するとともに、これらに関するノウハウ・データを蓄積してきた。近年は、ICTの急激な進展に伴い、研究分野をさらに拡大することでICTが経済社会にもたらす変化を定量的に把握する手法を開発するなど、広く社会の発展に寄与する情報発信・提言を行う最先端のシンクタンクとして事業を展開している。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10
アーバンネット日本橋ビル

TEL 03-3663-7157/FAX 03-3663-7390

株式会社情報通信総合研究所
ICT経済分析チーム

主席研究員:野口正人
主任研究員:手嶋彩子、山本悠介
研究員:佐藤泰基、久保田茂裕、鷲尾哲

監修
九州大学大学院経済学研究院教授 篠﨑彰彦
神奈川大学経済学部教授 飯塚信夫