情報通信総合研究所(ICR - InfoCom Research,Inc)は情報通信専門のシンクタンクです。

お問い合せ一覧

2016年9月21日

ICT経済を下支えするサービス利用の活発化
-財生産も一部明るい兆し-

(株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:眞藤 務)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学教授篠﨑彰彦氏、神奈川大学教授飯塚信夫氏監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しております。本日、ICT経済概況について2016年4-6月期がまとまりましたのでご報告いたします。

なおICT経済報告は弊社Webサイト「ICT経済報告」(http://www.icr.co.jp/ICT/)上で詳細版を近日中に公開予定です。

<ICT経済概況と見通し>

2016年4‐6月期のICT経済は、前年同期比0.01%増とわずかにプラス成長となった(前期比で0.7%増)。ICT財生産は3期連続のマイナスと低迷しているが、ICTサービスの好調が続いていることが下支えとなっている。ICTサービスのプラス要因としては、移動電気通信業が引き続き堅調な上、情報サービス業の復調が大きい。国内企業のセキュリティ対応サービスの導入から社内システムのクラウド化までICTサービスの利活用が活発化しているためである。

ICT関連財・サービス総合指標の推移

【図表】ICT関連財・サービス総合指標の推移

ICT財生産のマイナスは今期で3期連続となった。財別にみると、前期に引き続き電子部品と集積回路の減少が要因だ。需要面から確認すると、これまで好調であったICT設備投資の電子計算機が今期大幅減になった。業種別では、これまで牽引してきた金融・保険業や情報サービス業が減少に転じている。通信機と半導体製造装置の減少も続いている。通信機は、通信キャリアの設備投資の一巡や投資効率化が背景ある。半導体製造装置の減少は、スマートフォン向けの投資が一巡していることが要因であると考えられる。

機械受注に占めるICT関連機種の寄与度

【図表】機械受注に占めるICT関連機種の寄与度

来期以降について、ICT経済がプラスを持続するためにはまずサービス面で情報サービス業が好調を持続することが必要だ。企業の情報サービスに対する利活用の勢いが維持されるか。そのためには、需要面でセキュリティ対応投資等課題解決投資に加え、システム更新や新規投資の継続が鍵になるだろう。ただ、海外経済の不透明感を背景にした企業マインドの悪化が社内システムの更改やそれに伴う設備投資を抑制させる可能性については注意が必要だ。

ICT財生産については、iPhone7の発売が公表されたがスマートフォン需要がこれまでと同じように拡大することが期待できない中、スマートフォンに変わる新たな機器が出てきていない。その中でIoT向けが新たな牽引役として期待されているものの、本格的な成長にはしばらく時間がかかり、結果、ICT財生産はしばらく低迷する可能性が高い。

一方で、半導体製造装置は、3次元技術を採用した次世代半導体の伸びが予想されるため底入れに期待がかかる。実際、半導体は高性能サーバーへの搭載により受注増が見込まれている上、足元の生産は前年比で増加している。また、通信機械に関しては2020年の東京オリンピックに向けた動きや訪日外国人の増大に伴うホテルの客室増、また都市部における老朽化したオフィスビルの建替えに伴う新たなオフィス需要に対応する動きがみられる。例えば、通信機械のボタン電話装置の生産の増加だ。ホテル建設やオフィスの移転、増設等に伴い、ボタン電話の需要が増え、通信機の生産増加をもたらすとみられている。2020年に向けて、今後このような公共施設、オフィス施設、宿泊施設等の動きはICT財生産のプラス要因としてその動向が注目される。

【今後の展望】

  • ここしばらくのICT財生産のマイナス成長は、海外需要の低迷が主な要因である。とりわけ、アップル社製iPhoneの出荷大幅減が影響している。一方、中国向けスマートフォン需要は勢いが出てきている。また、LTE(高速化)など高機能化に対応した部材需要は堅調であり、日本の電子部品メーカーが強い分野である。国内では2020年の東京オリンピックや都市部を中心としたオフィス需要が顕在化しつつある。また中長期的にはIoT向けの電子部品需要が牽引することが期待される。以上を背景に、通信機器需要も回復基調になることが期待される。
  • ICTサービスについては、タブレット、スマートフォン等モバイル端末の普及と各種サービスのクラウド化に加え、セキュリティ、災害、内部統制などのリスク対策としてICT利活用が引き続き進展するだろう。消費者向けでは、eコマース等の生活系ICTサービスの浸透は継続しており、それに関連する情報サービス業が広がるだろう。
  • ICT設備投資は電子計算機、半導体製造装置、通信機の受注が下げ止まるのかが注目される。特にサービス面での利活用の進展が人手不足の解決など課題解決に向けた面が強く、それに伴う情報化投資(IoT活用による生産性向上、コールセンターにおけるロボット活用等)が今後国内外のデータセンター新設・増設につながりサーバー需要をもたらすと見込まれ、電子計算機、半導体製造装置の需要増につながることが期待される。
  • ICT消費は、移動電話通信料やインターネット接続料が増加している。MVNOの認知度の高まりを背景に、ポイント連携や価格の安さ等に魅力を感じ、フィーチャーフォンユーザが格安スマホに乗り換えれば、数千円の支出増となり移動電話通信料にプラスに寄与する。この動きは今後もしばらく続くものと考えられる。
  • ICT輸出は、足元では数量ベースで輸出の減少が下げ止まる気配が出てきたが、海外経済の先行き不透明感はいまだぬぐえず、安心はできない。米大統領選の結果が明らかになるまでしばらくはこう着状態になるかもしれない。一方、足元では電子部品デバイスの国内の生産予測指数は増加している。スマートフォンの高機能化、車載向け需要の高まりにより、高機能を強みにする国内メーカーの電子部品の海外需要が回復するのか、慎重に動向を察する必要がある。

<会社概要>

社名 株式会社情報通信総合研究所(www.icr.co.jp)  1985年6月設立。情報通信専門のシンクタンクとして、情報通信分野の専門的調査研究、コンサルティング、マーケティング、地域情報化にかかわる調査・提案などのビジネスを展開するとともに、これらに関するノウハウ・データを蓄積してきた。近年は、ICTの急激な進展に伴い、研究分野をさらに拡大することでICTが経済社会にもたらす変化を定量的に把握する手法を開発するなど、広く社会の発展に寄与する情報発信・提言を行う最先端のシンクタンクとして事業を展開している。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10
アーバンネット日本橋ビル

TEL 03-3663-7157/FAX 03-3663-7390

株式会社情報通信総合研究所
ICT経済分析チーム

主席研究員:野口正人
主任研究員:手嶋彩子、山本悠介
研究員:佐藤泰基、久保田茂裕、鷲尾哲

監修
九州大学大学院経済学研究院教授 篠﨑彰彦
神奈川大学経済学部教授 飯塚信夫