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2017年6月1日

ICT経済、4四半期連続でプラス成長
-輸出の回復により、ICT財生産の増加幅が拡大-

(株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:眞藤 務)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学篠﨑彰彦氏、神奈川大学飯塚信夫氏監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しております。本日、ICT経済概況について2017年1-3月期がまとまりましたのでご報告いたします。

なおICT経済報告は弊社Webサイト「ICT経済報告」(http://www.icr.co.jp/ICT/)上で詳細版を近日中に公開予定です。

<ICT経済概況と見通し>

2017年1‐3月期のICT経済は、前年同期比2.8%増と4四半期連続でプラス成長となった。ICT財生産は3四半期連続でプラスとなり、増加幅も拡大した。内訳では、電子部品は増加に転じ、集積回路は増加幅が拡大した。要因としては、高機能化が進むスマートフォン向けの需要の回復や、電気自動車やADAS(先進運転支援システム)の拡大を受けた自動車向け需要の立ち上がりが大きい。スマートフォンは米国、韓国向けが堅調な上、中国メーカー向けが引き続き好調であった。ICTサービスは10四半期連続でプラス成長が続いているが、増加幅が縮小した。背景には受注ソフトウェアなど情報サービス業の伸び悩みがある。

【図表】ICT関連財・サービス総合指標の推移

需要面を確認すると、ICT輸出は数量ベースで、3四半期連続で増加した。ICT消費もサービスを中心に拡大を続けている。一方、設備投資の先行指標となるICT機械受注は引き続きマイナスであった。そのような中で半導体製造装置は増加を維持した。これは、スマートフォンの高機能化による3次元(3D)構造のNAND型フラッシュメモリー向けの投資需要の増加による。加えて、データセンター向けのサーバー、ストレージ関連機器等の需要増加もプラスに影響している。一方、通信機は、情報サービス業向けでプラスに寄与したが通信業向けはマイナスとなり減少した。電子計算機は、金融・保険業向けが増加に転じ、減少幅が縮小たした。

【図表】機械受注に占めるICT関連機種の寄与度

足元4-6月期については、ICT財生産は、中国製スマホの活況や、データセンター向けサーバーやストレージ需要の増加により半導体製造装置等を中心に引き続き、好調を維持する見込みだ。
2017年下期の注目点としては、(1)中国、インド等の新興国のスマートフォン需要の動向、(2)自動車等各産業分野のIoT化の進展とそれに伴う電子部品需要の動向が挙げられる。電子部品については、その他、新興国でのスマートフォンの高機能化による需要増加が引き続き見込まれる。

一方、サービス面に目を向けると、多くの国内ケーブルテレビ事業者はネットワークの更改時期にきているとともに、4Kテレビやインターネットサービスの高度化、モバイルデータトラヒック増に対応するためのネットワーク増強など、サービスの高度化を視野に入れた投資が見込まれる。サービスの高度化による設備投資の増大は、流通コンテンツの大容量化をもたらし、それが通信インフラの拡充やクラウドサービス投資を増加させ、さらなるサービスの高度化を可能にするという好循環となりうる。この動きは、電子部品の需要の動きにも波及し、財生産にも好影響をもたらすだろう。

【今後の展望】

  • ICT財生産が今期3四半期連続で増加したのは、ICT輸出の好調が背景にある。これは主に中国および新興国におけるスマホ市場の拡大と、アップル社「iPhone」等の高機能化に伴い半導体製造装置や集積回路が伸び、電子部品が増加に転じたためである。生産面の好調さは在庫循環にも表れており、4-6月期以降も回復基調が続く可能性が高い。来期以降の動静は主に新興国のスマホ市場の動向にかかわる。新興国のスマホ市場の勢いやスマホの高機能化を考えると、短期的にはこの動きが持続するのではないかと予想される。加えて、IoTの普及によるデータ通信量の増大がサーバー等の増設につながり、それが半導体や半導体製造装置の需要につながってくる。また、パソコンは働き方改革やテレワークの浸透でその導入が増え、徐々に生産増につながっていることが想定される。
  • ICTサービスについては、スマホやクラウドサービスの普及による新たなサービス、高度化するサイバー攻撃に対抗するためのセキュリティ、そして災害、内部統制などリスク対策としての利活用が引き続き進展するであろう。消費者向けでは、eコマース等の生活系ICTサービスの浸透も継続しており、それらを提供する情報サービス業は堅調に推移するであろう。
  • ICT設備投資の今後は、国内のモバイルトラヒックの増加への対応や、社会的課題解決に向けた情報化投資(IoT活用による生産性・効率性向上、接客、受付やコールセンターにおけるロボット活用等)がさらに推進される見込みである。この動向が国内外のデータセンターのサーバーやストレージ需要につながり、電子計算機、半導体製造装置の需要増の継続につながることが期待される。ただし、設備投資については、ICT設備や機器自体がソフト化(仮想化)の影響を受けており、想定通りに増加しない可能性もある。
  • ICT消費は、今後も移動電話通信料の増加が期待される。背景には、格安スマホとしてのMVNOの認知度の高まりを背景に、eコマースのポイント連携や通信料の安さからフィーチャーフォンユーザの乗り換えが進んでいる。乗り換え後は月額数千円の支出増となり移動電話通信料にプラスに寄与する。一方、端末の値引き抑制の指導を背景にした通信キャリア(MNO)の端末価格が上昇する一方、格安スマホを武器にMNOのスマホユーザに対して乗換えを促進するキャンペーンを実施しており、MNOユーザの乗り換えが進んでいる。MNOユーザの乗り換えは月額通信利用料を低下させるため、マイナスの影響をもたらす。この動きは今後もしばらく続くものと考えられ、その影響を注視する必要がある。
  • ICT輸出は、数量ベースで、3四半期連続で増加し金額ベースでも増加に転じた。中華系スマホが伸張しており、中国国内の市場の拡大とインドなど周辺国への輸出の増加が背景にある。この動きが今後のICT輸出の動向を左右する。中華系スマホは日本国内でもシェア拡大してきており、輸入動向に影響をもたらしている可能性がある。足元では、電子部品デバイスの国内の生産予測指数は4月以降も増加しており、新興国での高機能機種に対する需要増により、国内財生産面への波及が期待される。

<会社概要>

社名 株式会社情報通信総合研究所(www.icr.co.jp)  1985年6月設立。情報通信専門のシンクタンクとして、情報通信分野の専門的調査研究、コンサルティング、マーケティング、地域情報化にかかわる調査・提案などのビジネスを展開するとともに、これらに関するノウハウ・データを蓄積してきた。近年は、ICTの急激な進展に伴い、研究分野をさらに拡大することでICTが経済社会にもたらす変化を定量的に把握する手法を開発するなど、広く社会の発展に寄与する情報発信・提言を行う最先端のシンクタンクとして事業を展開している。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10
アーバンネット日本橋ビル

TEL 03-3663-7153/FAX 03-3663-7660

株式会社情報通信総合研究所
ICT経済分析チーム

主席研究員:野口正人
主任研究員:手嶋彩子、山本悠介
研究員:佐藤泰基、久保田茂裕、鷲尾哲

監修
九州大学大学院経済学研究院教授 篠﨑彰彦
神奈川大学経済学部教授 飯塚信夫