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2017年9月15日

ICT経済、5四半期連続プラス成長
-集積回路、電子部品を中心に財生産の好調続く-

(株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大平 弘)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学篠﨑彰彦氏、神奈川大学飯塚信夫氏監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しております。本日、ICT経済概況について2017年4-6月期がまとまりましたのでご報告いたします。

なお、本リリースの詳細版は弊社Webサイト「ICT経済報告」(http://www.icr.co.jp/ICT/)上で、近日中に公開予定です。

<ICT経済概況と見通し>

2017年4‐6月期のICT経済は、前年同期比3.9%増と5四半期連続でプラス成長となった。ICT財生産は4四半期連続でプラスとなり、増加幅も拡大した。内訳では、集積回路、電子部品の増加幅が拡大している。要因としては、中国向けを中心に引き続き好調なスマーフォンの部材需要が牽引した他、電気自動車や先進運転支援システム(ADAS)の普及を受けた自動車向け需要の立ち上がりが大きい。ICTサービスは11四半期連続でプラス成長となった。背景にはIoT、ビッグデータ、AIに対する期待を背景にしたシステム等管理運営受託など情報サービス業の増加幅の拡大がある。

ICT関連財・サービス総合指標の推移

【図表】ICT関連財・サービス総合指標の推移

需要面を確認すると、ICT輸出は金額ベースで2四半期連続、数量ベースでは4四半期連続で増加した。中国向けスマートフォン部材需要を中心に引き続き好調である。設備投資の先行指標となるICT機械受注は6四半期ぶりに増加に転じた。半導体製造装置と電子計算機の増加が背景にある。半導体製造装置は、スマートフォンの高機能化による新型フラッシュメモリー向けの投資需要の増加による。加えて、データセンター向けのサーバー、ストレージ関連機器等の需要増加もプラスに影響している。一方、通信機は、情報サービス業や通信業向けでマイナスとなり減少した。ICT消費は6四半期連続増大した。移動電話通信料やインターネット接続料がプラスに貢献した。

ICT経済の足元7-9月期については、全体としてはプラスを維持するであろう。月次の動きで確認してもICT輸出の好調が継続していること、次期iPhone等秋冬のスマホ新型モデルへの対応等が出てくることが予測され、外需中心のICT財生産は好調に推移するとみられる。

ICT財生産の2017年下期の注目点としては、(1)中国、インド等の新興国のスマートフォン需要の動向、(2)新型iPhone等スマートフォンの需要動向、(3)自動車等各産業分野のIoT化の進展とそれに伴う電子部品需要の動向が挙げられる。

一方、ICTサービスに目を向けると、政府の骨太政策にあげられている働き方改革にはAIを中心にIoT、ビッグデータなどの新サービスに対する期待が高いと考えられる。ここ2四半期は停滞気味のICTサービスであるが、情報サービス業、インターネット付随サービス業を中心に働き方改革に対する貢献が具体的にどのような形で現れるか、動向が注目される。

 

【今後の展望】

  • ICT財生産が今期4四半期連続で増加したのは、ICT輸出の好調が背景にある。これは主に中国を中心としたスマホ市場の継続的な拡大と、スマホの高機能化によるものだ。これに伴い半導体製造装置や集積回路が伸び、電子部品が好調を維持している。生産面の好調さは在庫循環にも表れている。ただし、月次動向を見ると足元では伸びが鈍化している項目もあり、来期以降は成長ペースが鈍化する可能性がある。中長期的には、IoT等の普及によりデータ通信量が増大し、その結果、サーバー等の増設につながり、半導体や半導体製造装置の需要につながってくる。また、パソコンは6月単月で4ヶ月振りに台数・金額共に前年同期を上回った。今期は企業向けが低調であるが、個人向けが堅調に推移し前年同期を上回った形だ。今後は企業向けが骨太政策の働き方改革の推進により押し上げられる可能性がある。
  • ICTサービスについては、引き続き、スマホやクラウドサービスの普及による新たなサービス、高度化するサイバー攻撃に対抗するためのセキュリティの提供、また災害、内部統制などリスク対策としての利活用が進展することが期待される。消費者向けでは、eコマース等の生活系ICTサービスの浸透も継続しており、それらを提供する情報サービス業の動向がポイントとなるであろう。
  • ICT設備投資の今後は、中長期的には、2020年をにらんだ5G対応投資が視野に入ってくるが、基地局等既存設備を使える部分もあり、どの程度の規模になるか未知数である。足元では、ネットを通じての動画及び動画サービスの提供によるモバイルトラヒックの増加への対応が期待される。社会的課題の一つとして人手不足への対応があるが、これにより情報化投資(IoT活用による生産性・効率性向上、接客、受付やコールセンターにおけるロボット活用、セキュリティ投資等)がさらに推進される見込みである。一方、人手不足がICT設備投資にマイナスに影響する可能性も捨てきれない。
  • ICT消費は、今後も移動電話通信料の動向が最も注目される。注目背景には、プラスマイナス両面がある。プラス面としては、格安スマホへのフィーチャーフォンユーザの乗り換えが進んでいる点である。乗り換え後は月額数千円の支出増となり移動電話通信料にプラスに寄与する。一方、端末の値引き抑制の指導を背景にした通信キャリア(MNO)の端末価格が上昇する一方、格安スマホへのMNOのスマホユーザの乗換えキャンペーンを実施している。このMNOユーザの乗り換えは月額利用料を低下させるため、マイナスの影響をもたらす。移動電話端末は、販売奨励金の抑制により買いかえサイクルの長期化がマイナス要因であるが、MVNO市場のSIMフリー端末は好調であり、プラス要因である。しかしここには中華系スマホが提供されるようになってきており、ICT消費における移動電話端末の国内財生産への寄与度は未知数である。
  • ICT輸出は、数量ベースで、4四半期連続で増加し金額ベースでも2四半期連続で増加した。背景には、中国国内の市場の拡大と中国からインドなど周辺国への輸出の増加により中華系スマホが伸張している点がある。中華系スマホの普及が今後のICT輸出の動向を左右するポイントとして無視できなくなっている。また、日本国内でもSIMフリーの中華系スマホは、MVNOの存在感の高まりを背景に、17年上半期、販売台数が大幅に増加してきている。ICT輸入が最近好調である背景には、中華系スマホの国内市場での普及があるのではないかと推測できる。足元では、電子部品デバイスの国内の生産予測指数は8月も増加しており、新興国での高機能機種に対する需要増により、国内財生産面への波及が期待される。

<会社概要>

社名 株式会社情報通信総合研究所(www.icr.co.jp)  1985年6月設立。情報通信専門のシンクタンクとして、情報通信分野の専門的調査研究、コンサルティング、マーケティング、地域情報化にかかわる調査・提案などのビジネスを展開するとともに、これらに関するノウハウ・データを蓄積してきた。近年は、ICTの急激な進展に伴い、研究分野をさらに拡大することでICTが経済社会にもたらす変化を定量的に把握する手法を開発するなど、広く社会の発展に寄与する情報発信・提言を行う最先端のシンクタンクとして事業を展開している。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10
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TEL 03-3663-7153/FAX 03-3663-7660

株式会社情報通信総合研究所
ICT経済分析チーム

主席研究員:野口正人
主任研究員:手嶋彩子、山本悠介
副主任研究員:久保田茂裕、鷲尾哲
研究員:佐藤泰基

監修
九州大学大学院経済学研究院教授 篠﨑彰彦
神奈川大学経済学部教授 飯塚信夫