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2018年3月16日

家計に浸透する電子商取引、支出額は15年で約10倍に
-ICT消費、8四半期連続成長-

(株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大平 弘)は、情報通信(以下、ICT)産業が日本経済に与える影響を把握するために、九州大学篠﨑彰彦氏、神奈川大学飯塚信夫氏監修のもと作成した「ICT関連経済指標」を用いた分析を「InfoCom ICT経済報告」として四半期ごとに公表しております。本日、ICT経済概況について2017年10-12月期がまとまりましたのでご報告いたします。

なお、本リリースの詳細版は弊社Webサイト「ICT経済報告」(http://www.icr.co.jp/ICT/)上で詳細版を近日中に公開予定です。本報告ではICT経済概況と、成長著しい国内のインターネット経由の消費動向について取り上げます。

<ICT経済概況>

2017年10‐12月期のICT経済は、前年同期比2.6%増と7四半期連続でプラス成長となった。 (巻末図表1)。需要面で見ると、ICT消費が好調で今期で8四半期連続プラス成長を記録している。この背景には家計における電子商取引(EC)の普及が少なからず貢献していると考えられる。

ECに関連した家計支出の統計としては、総務省『家計消費状況調査』の「インターネットを利用した支出総額」と「インターネットを通じて注文した世帯の割合」がある。両者とも季節変動は観察されるが増加基調を続けており(下図)、今四半期の支払総額は34,310円、世帯の割合は36.7%となっている。15年前の2002年10-12月期に比べて、支出額は9.4倍に、また世帯の割合は30.7%ポイント高まった。

インターネットを利用した世帯の支出総額と支出世帯の割合の推移

【図表】インターネットを利用した世帯の支出総額と支出世帯の割合の推移

消費支出の内訳をみると、消費財1、デジタルコンテンツ2、サービス3の内、牽引しているのは、消費財とサービスである。以下、ここでは、当初ECにはなじまないと言われることがあった消費財の動向に注目する。

消費財の中での主な牽引役は、食料(食料品、飲料、出前)と衣類である。食料が伸びているのは、共働き世帯や単身世帯の増加、高齢化など社会構造の変化が背景にあると考えられる。そのような消費構造の変化をとらえた小売事業者のネットスーパーへの参入に加え、Amazon等大手EC事業者の食料品販売の拡充等がECでの支出増の背景にあるとみられる。

1 食料、家電、家具、衣類、保険・医療、化粧品、自動車など関係用品、書籍、贈答品等。

2 音楽・映像ソフト、ダウンロードコンテンツ等。

3 保険、旅行費・チケット等。

インターネットを利用した消費財支出に占める各品目の寄与度

【図表】インターネットを利用した消費財支出に占める各品目の寄与度

衣類は、EC対応を進めるアパレルブランドの増加、ファストファッションのECへの注力や返品可能なキャンペーンの展開など事業者の取り組みが購入時の心理的な障壁を取り除き、効果を上げている。

ECを活用した消費の増加は、①スマートフォンの普及がECを活用しやすい環境をもたらしたこと、②シニア層を中心とした利用者層の広がり、③EC事業者のサービス拡充(各種キャンペーン、アプリの使い勝手向上、時間の指定および返品サービス等)等、いくつかの要因が挙げられる。加えて、メルカリ等シェアリングサービスの台頭もEC消費を後押ししている。

EC事業者の動向をさらに見ると、新規事業者の参入、既存事業者間の競争が活発化している。競争の活発化により、利用者に向けては認知度の向上をめざしたテレビCM等広告宣伝の積極化、出店店舗に対しては出店手数料の無料化、自社では購買行動分析用の設備投資の増加等、消費者および出店店舗両者の利用環境を着実に向上させている。

このように消費者のEC利用環境は日々向上しており、消費のICT化は今後も着実に進んで行くことであろう。それは消費面ばかりでなく、設備投資へ波及する面もあり、ICT経済に有形無形のプラスの貢献をもたらすと考えられる。今後のECの進展、消費のICT化の進展に注目していきたい。

【今後の展望】

  • ICT財生産が今期6四半期連続で増加したのは、ICT輸出の好調が背景にある。これは、スマホの生産がトレンドとして伸びが鈍化している中にあって、主にスマホの高機能化によるものだ。1台あたりの搭載部品数の増加に伴い、集積回路や電子部品が好調を維持している。また、IoT等の普及や大容量コンテンツの利用によりデータ通信量が増大し、その結果、データセンターの増設などで使う半導体メモリーの需要の拡大、さらには半導体製造装置の需要増をもたらしている。加えて、韓国、台湾はスマートフォン向けの半導体製造を維持しており、中国では国策で半導体投資を強化している。つまりこれらの国への半導体製造装置需要は好調を維持する見込みだ。ICT財生産で気になる動きは、在庫循環が5四半期連続で45線の下、つまり在庫減少局面から在庫積み増し局面にあったが、今期は一気に45線を越え、在庫積み上がり局面に入ったことだ。先行きの懸念材料として今後注視していく必要がある。
  • ICTサービスについては、引き続き、スマホやクラウドサービスの普及による新サービス、サイバー攻撃に対応するためのセキュリティの提供、また災害、内部統制などリスク対策としての利活用が進展することが期待される。加えて中小企業では販路拡大を狙いにしたECへの対応が進展している。消費者向けでは、EC等の生活系ICTサービスの浸透も継続しており、それらを提供する情報サービス業の動向がポイントとなるであろう。
  • ICT設備投資の今後は、中長期的には、2020年をにらんだ5G対応投資が2018年以降見込まれるが、基地局等既存設備を活用できる部分もあり、どの程度プラスの影響となるのか未知数である。足元では、ネットを通じての動画配信及び動画共有サービスの提供によるモバイルトラヒックの増加への対応投資が期待される。一方、人手不足への対応が喫緊の課題となってきているが、これにより生産性・効率性向上のためのIoT活用、接客・受付やコールセンターにおけるAIやロボット活用等の面でさらに情報化投資が推進される見込みである。一方、情報サービス産業においても人手不足となっており、これが供給制約につながるため、しいてはICT設備投資にマイナスに影響する可能性も考慮する必要がある。
  • ICT消費は、今後も移動電話通信料の動向が最も注目される。プラス面としては、通信キャリア(MNO)の大容量プランの提供や、フィーチャーフォンユーザのスマートフォンへの乗り換えが進んでいる点である。大容量プランへの変更やスマートフォンへの乗り換えは、月額利用料金の支出増をもたらし移動電話通信料にプラスに寄与する。一方、MVNOはMNOのスマホユーザの乗換えを推進し、それに対抗してMNOは安価な端末と安価な料金プランをあわせて提供し始めている。いずれも月額利用料を低下させるため、マイナスの影響をもたらす。移動電話端末は、販売奨励金の抑制により買いかえサイクルの長期化がマイナス要因であるが、MVNO市場のSIMフリー端末やMNOの低価格端末が好調でありプラス要因である。ただし、SIMフリー端末は中華系スマホが牽引しており、ICT消費における移動電話端末の国内財生産への寄与度は未知数である。
  • ICT輸出は、数量ベースで6四半期連続増加し、金額ベースでも4四半期連続で増加した。背景には、中国国内の市場の拡大と中国からインドなど周辺国への輸出の増加により中華系スマホが伸張している点がある。中華系スマホの普及が今後のICT輸出の動向を左右する要素の1つとなっている。また、日本国内でも中華系スマホは、MVNOの積極展開を背景に増加しており、ICT輸入が好調な1要因となっていると推察される。

「InfoCom ICT経済報告」の主な内容

  • 情報通信産業のマクロ経済への寄与度及び個別品目(サービス)の寄与度の分析
    財・サービスの生産面、需要面について、ICT関連経済指標を作成し、マクロ経済の動向を示す総合経済指標の増減に対して、情報通信産業の寄与について定性的、定量的に分析。
  • 情報通信の在庫循環分析
    情報通信生産と情報通信在庫の循環を分析。
  • 情報通信株価指数による情報通信生産の予測分析
    情報通信産業の株価データ指数を用いて、来期の情報通信生産の増減を予測。
  • 情報通信資本ストックデータの分析
    情報通信技術利用による経済成長の効果に関する推定作業を行なう際に必要となる情報通信資本ストックデータを作成。毎年データを延長すると共に、動向を分析。

<会社概要>

社名 株式会社情報通信総合研究所(www.icr.co.jp)  1985年6月設立。情報通信専門のシンクタンクとして、情報通信分野の専門的調査研究、コンサルティング、マーケティング、地域情報化にかかわる調査・提案などのビジネスを展開するとともに、これらに関するノウハウ・データを蓄積してきた。近年は、ICTの急激な進展に伴い、研究分野をさらに拡大することでICTが経済社会にもたらす変化を定量的に把握する手法を開発するなど、広く社会の発展に寄与する情報発信・提言を行う最先端のシンクタンクとして事業を展開している。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10
アーバンネット日本橋ビル

TEL 03-3663-7153/FAX 03-3663-7660

株式会社情報通信総合研究所
ICT経済分析チーム

主席研究員:野口正人
主任研究員:手嶋彩子、山本悠介
副主任研究員:久保田茂裕、鷲尾哲
研究員:佐藤泰基

監修
九州大学大学院経済学研究院教授 篠﨑彰彦
神奈川大学経済学部教授 飯塚信夫