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前回まで、各地の取り組みから電子投票の普及に向けていくつかの課題が示されていることを述べたが、将来的に、総務省の考える第2・第3段階の電子投票の実現や国政選挙における電子投票の実現に向けて、様々なハードルを越えなければならないことも確かである。本稿では、電子投票の将来に向けての新しい動きについて、考えられる課題と対応策という観点から分析する。
1.国政選挙への拡大に向けて
電子投票特例法が制定され、我が国初の電子投票が実施された際、片山虎之助総務大臣(当時)は、電子投票について「地方選挙でトライアルを行って、最終的には国政選挙でも実施する。」という主旨の発言をしている。
確かに地方選挙と国政選挙が同日で行われる場合に、一方は電子投票、もう一方は自書式投票では、投票者および事務従事者に対して、困惑させるだけではなく不要な手間を取らせ、混乱の原因にもなりかねない。
一部の国会議員の中には、「選挙は自分の名前を書いてもらってこそ…」という意見が根強いという話も聞くが、先進的に電子投票が実施された地域で示されたように有権者の電子投票に対する評価は高く、今後、他の地域でも全ての投票の電子化に向けた機運が高まれば、国政選挙における電子化の流れが加速するものと想定される。
そのためには、これまでに行われた電子投票における反省点を踏まえ、電子投票に対する国民の信頼をより強固なものにする必要がある。
2.インターネット投票に向けての課題とは… 〜第2・第3段階は可能か〜
(1)電子投票の第2段階
総務省が想定する電子投票の第2段階とは、投票者が指定された投票所以外の投票所で投票できる段階である。これが実現すると有権者は、投票所であればどこでも投票することが可能となる。期日前投票を行っていないにも関わらず投票当日に遠出することになった場合でも、自らの一票を投ずることができる。
しかし、そのためには、投票所間のネットワーク化などにより、一人一票の原則(二重投票の防止)をより厳密に担保することが必須となる。これは、選挙人が複数の投票所で数回にわたって投票するようなことがあってはならないためであり、たとえばAさんがX投票所で投票したという情報について、即座に他の投票所で共有するということである。その後にAさんがY投票所に行っても、Z投票所に行っても「既にAさんは投票済みである」ということが判明していなければならないのである。
当該選挙の投票の「済/未済」を管理する選挙人名簿を各投票所において共有することになり、技術面でも運用面でも、適確な整備を施さなければ実現することは難しい。
たとえば技術面では、悪意ある者によるネットワークへの不正侵入や、それによる投票の「済/未済データ」の漏えい、改ざん等の懸念を完全に払拭することは難しい。現行の特例法において投票所と開票所のネットワーク化が禁じられているのも同様の理由からであることを考えれば、単に暗号技術を利用したデータ伝送や、専用線の使用などを対策として挙げても、本当に問題点がないかどうかは、慎重に検討する必要があるだろう。運用面についても、たとえば事務従事者が操作を誤って、投票していない有権者を投票済みにしてしまった場合の取り消しをどうするかなど、起こり得る課題を想定した上で、公正性を確保するやり方を考えなければならない。
但しこれらは第1段階の普及と並行して検討を進めても良いものである。第1段階が広く普及して、現時点での様々な課題が解決してからでなければ考えることができないという問題ではないのだ。そういう意味では第1段階と切り離して実現可能性を考えても良い。
(2)電子投票の第3段階
電子投票の第3段階とは、インターネットを通じて自宅等から投票するという仕組みである。これが実現すれば、有権者はまさに「場所を選ばずに」投票できることになる。
しかし、第3段階の実現には第2段階よりも更に大きなハードルがある。まず、インターネットを通じての投票であるから、当然ながら悪意ある者によるネットワークへの不正な侵入、投票データや候補者データ等の改ざんに関する脅威がある。第2段階においてもネットワークへの不正侵入に対する脅威を挙げたが、それでも第2段階のそれは限られた範囲内のネットワークであった。第3段階ではインターネットであるがゆえにその範囲は広く、脅威も何倍にも膨れ上がるのである。
また、投票者の意思に反した「投票の強要」も大きな課題である。投票所における投票では、事務従事者をはじめ複数の他者による目があるため、そうした行為(投票の強要)は不可能に近い。
しかし、第3段階が実現して、各家庭や職場などでインターネットを介しての投票が可能になった場合には、脅迫による投票者の意思に反した投票や、投票する権利の買収といった不正が行われることも想像に難くない。これらは現状の技術による解決は難しく、運用方法も含めて十分に検討する余地のある問題である。インターネットという相手の顔の見えない媒体を通じて選挙を行う以上、相応の対応策を考えなければならず、課題解決にはまだまだ時間が掛かりそうである。
3.まとめ
今後の電子投票は、まず、現行制度上で地方選挙において広がりを見せるであろう。その速度の速遅は測りかねるが、上記に述べたような国政選挙への導入や第2・第3段階の実現に向けた動きが、選挙そのものの利便性を高め、引いては電子投票においても更に効果を高めることになってもらいたい。
また、国・都道府県・市町村を問わず選挙管理委員会にとっては、有権者が選挙に関心を持ってもらうこともミッションの一つであるが、特に都市部においては選挙のたびに投票率の低さが話題にのぼる。新見市や広島市などの電子投票を実施した地方自治体では、「電子投票だから投票に行った」という有権者もいたと聞く。もちろん当時は物珍しさも手伝ったのだろうが、それでも電子投票によって有権者が選挙に関心を持ち、少しでも投票率の低さが解消されることも期待できる。
近い将来、電子投票が当たり前のものとして認識されるとともに、便利さと高い効果を発揮することで、我が国の選挙制度になくてはならないものになることを期待したい。
*第2段階、第3段階の電子投票については、記事「電子投票のアウトライン」を参照
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