2016年1月7日掲載 ICT経済 ICTエコノミーの今

日本経済、今後3年間の経済見通し(2015~2018年度)(※1)


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このたび、弊社では2015~2018年度の日本経済見通しを作成した。経済成長はわれわれの暮らしぶりの将来を考えるときの指標として重要な経済指標だ。マクロ経済の中でICT分野の存在感がますます高まってきている今日、ICTの効果を可能な限り明示的に取り上げ、日本経済の動向に結びつけて理解することはこの産業の将来を考える上で必要なことだ。そこで本モデルではその最初の試みとして、ICT投資が増加したときに、生産性の高いICT資本が蓄積されることで、経済成長に対する今後の期待を高める効果や、ICT資本が企業の業務改善に寄与し利益率を高めることで、拡大した利益を元手に更なる設備投資の実施及び雇用者報酬の拡大へつながる経路を入れ込んでいる(※2)。

これから企業では来年度以降の事業計画の策定に入る。計画策定の際、日本経済を見通す上での基礎情報としてお役に立てていただければ幸いである。
以下、予測値についてその前提と結果を簡潔に解説する。

実質GDP成長率の予測(年度、寄与度)

実質GDP成長率の予測(年度、寄与度)

実質GDP成長率の予測(年度、寄与度)

経済見通し

2015年度は、年度後半から設備投資が持ち直し緩やかに回復する見込み

2015年度の実質GDP成長率は1.0%と予測する。2015年度の前半は、2015年1-3月期と比較すると、4-6月期及び7-9月期を通じて、ほぼゼロ成長にとどまった。2014年4月の消費増税以降、個人消費の低迷が続いているなか、2015年春以降は中国など新興国経済の減速による外需の低迷が加わった。景気の先行き不透明感により、企業の設備投資も年度前半は減少傾向にあった。

一方、12月14日に公表された日銀短観の業況判断指数からは、非製造業を中心に景気の底堅さが確認されている。外国人観光客の増加による消費拡大が景気を下支えしている。2015年度の設備投資計画も大きな下方修正の動きは見られない。海外経済の不透明感は残るものの、企業収益は高水準を維持しており、設備投資も年度後半は持ち直すと見込まれる。景気後退は回避され、年度後半は緩やかながら成長を続けるであろう。

2016年度は、消費増税の駆け込みにより内需が拡大し成長率が高まる

2016年度の実質GDP成長率は1.6%と予測する。円安が続くことと原油価格が低水準で推移することで、2016年度も企業収益は引き続き増加を維持する見込みである。労働需要の逼迫から失業率も低い水準で推移し、賃金上昇圧力も働くことから雇用者報酬も拡大するだろう。高齢者の割合が高まっていることから、雇用者報酬の増加が消費全体を押し上げる効果が限定的なところもあるが、個人消費は増加を見込む。先送りにされてきた設備投資も本格的に実施されて内需を押し上げるだろう。

2016年度の後半には、2017年4月に予定されている8%から10%への消費増税に対する駆け込み需要が発生することから高めの成長となる。海外経済は、国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しに基づくと緩やかな回復を続け、輸出も拡大することから、2016年度は1%後半の成長を予測する。

2017年度は、消費増税の影響によりゼロ成長。2018年度は緩やかに回復

2017年度の実質GDP成長率は0.0%、2018年度は1.3%と予測する。2017年度は、消費税増税により実質可処分所得が減少することに加え、前年の駆け込みの反動が生じるため、個人消費や住宅投資が大幅に減少する。

一方、緩やかな成長を見込む国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しに依拠すれば、外需が内需の弱さを下支えする見込み。但し、中国を初めとした新興国経済は不確実性を包含しており、下振れするリスクも存在する。2018年度は、順調に海外経済の緩やかな成長が続けば、個人消費、設備投資を後押しし、内外需共に堅調に推移し1%台前半の成長を見込む。

予測の前提

向こう3年間、2018年度までの日本の経済成長率を予測するにあたり以下の通り、5つの前提を置いている。

設備投資に占めるICT投資の比率を一定

われわれのモデルでは、設備投資の内訳としてICT投資を明示的に区別し、ICT投資が日本経済に与える影響を分析できるようにしている。具体的には、ICT投資が増加したときに、生産性の高いICT資本が蓄積されることで、経済成長に対する今後の期待を高める効果や、ICT資本が企業の業務改善に寄与し利益率を高めることで、拡大した利益を元手に更なる設備投資の実施及び雇用者報酬の拡大へつながる経路を入れ込んでいる 。

今回は、ICT投資の変化に対して中立的な予測を行うため、予測期間(2015~2018年度)の設備投資に占めるICT投資の比率は、2014年度の実績値と等しい値を置いた。

2017年4月に2%ポイントの消費税率引き上げを想定

2017年4月に消費税率を8%から10%へと2%ポイント引き上げることを前提に予測を行った。消費税率引き上げに伴う実質可処分所得の減少の効果は、1997年に導入された消費税率の引き上げ(3%から5%へ)の効果の推定結果にもとづいて予測に反映させた。

為替と輸入物価は足元の水準を維持

予測期間(2015~2018年度)にかけて円安(1ドル120円台)が継続すること、原油価格の下落を反映して、輸入物価(契約通貨ベース)が低い水準で推移することを前提に予測を行った。

2015年度から法人税の基本税率を引き下げ

2015年度から法人税の基本税率が、25.5%から23.9%に引き下げられたことから、予測期間(2015~2018年度)に渡り、基本税率を23.9%とした。

海外経済は緩やかな回復が続く

本予測では2015年10月に公表された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(World Economic Outlook)を予測の前提とした。予測期間における世界経済成長率は2015年が3.1%、2016年が3.6%、2017年が3.8%、2018年が3.9%となり、海外経済は緩やかな回復が続く。

おわりに

日本経済は国内外の課題を抱えながらその解決をしつつ成長を実現するという難しい局面を今後も通って行くことになる。その中で経済動向の方向を正確につかんでおくことは大切なことであろう。今回の予測値が読者みなさんの事業計画策定等にお役にたてれば幸いである。

本モデルの特徴であるICT投資の増減による実質GDP成長率への影響に対するシミュレーションは、2014年度のGDP統計確報値が出揃った後に、モデルを再推定し精度を高めた段階で公表する予定である。

(※1)本予測値の算出に当たっては、篠﨑彰彦・九州大学教授、飯塚信夫・神奈川大学教授に監修していただいた。ここで使用したモデルは内生変数75、外生変数73から成る小型のマクロ計量モデルである。
 なお、本稿は、2015年12月18日の報道発表資料(http://www.icr.co.jp/press/press20151218.html)を加筆修正したものである。

(※2) モデルの詳細は、以下の2つの文献を参照されたい。
飯塚信夫、篠﨑彰彦、久保田茂裕(2013) 「マクロ計量モデルによるICT投資増加のシミュレーションと乗数効果の計測」InfoCom REVIEW Vol.60 pp.70-85.
飯塚信夫、篠﨑彰彦、久保田茂裕(2014) 「マクロ計量モデルの改定と乗数効果の計測」ICT関連経済指標テクニカルペーパーNO.14-1.

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