2015年2月26日掲載 IoT ITトレンド全般 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:「新春初夢」2015年、ICTビッグバンは新たな事業機会をもたらす

ICT利用の潮目が変わった

(1)ICTビジネスの新たなキーワード
昨年は、O2O、オムニチャネル、IoTと言った言葉がICT業界を賑わした。この3つの単語、2012年度には11月末までに通信社、新聞、一般及び主要ビジネス誌(注1)に53回登場しているが、2014年度には146回登場している。これは、AKB48 の4,939回には大きく及ばないが、最近お世話になる事の多いコンビニコーヒーが58回しか登場していない事を考えると、ICT関連用語としてはかなりの露出だと思う。いや、むしろ一般ビジネス用語に近い感覚かもしれない。

(図1)

(2)膨張を続けるECの中で
 経済産業省の調査(注2)によると、近年、全ての個人向け商取引がほぼ横ばいで推移する中、全ての個人向け商取引に占めるECの割合(EC化率)は2013年現在3.6%。まだ割合は小さいものの2008年(5年前)(1.8%)のほぼ倍の規模まで成長している。この間、取扱商品も、フィッティング等のためにECでは扱いづらいと言われていた衣服や靴まで対象商品を広げ、量だけでなく対象範囲も広げている。
 このような中で、生まれたO2O、オムニチャネル、IoTはインターネットを利用したビジネス手法を表しているが、これまでのSEOやメルマガといったEC分野を賑わした言葉と趣を異にする。これら3つの言葉には、リアルの店舗での消費や、モノの動きと言ったインターネット外の活動を明確に含む点に特徴があり、リアルの活動を前提とする点で明らかにビジネスのスコープが異なる。

(3)リアルビジネスを呑み込むEC
 1990年代中盤から現在に至るまで、EC企業の拡大により、インターネットは、新たな市場創造とともに、リアル店舗のビジネスをインターネットの中に呑み込みながら成長してきたとも捉えられる。この過程で、リアル店舗事業には売り上げの減少、店舗の廃業という形で影響を与えた。音楽分野では、CDの販売枚数は、2013年は2005年の約2/3に減少(日本レコード協会調べ)、書籍販売では、書店は2003年に19,412店あったが、2011年には13,603店と30%減少している(日版経営相談センター調べ)。店舗で調べてネットで注文する「ショールーミング」と言う言葉も生まれ、店舗経営への影響を危惧する声や様々な対策が話題に昇っている。リアルの店舗で商売を営む人には、インターネットはあたかも、全てを呑み込みながら成長するブラックホールのように映っていたかもしれない。

ブラックホールが産んだ超新星

(1)そしてビッグバン
 そこに、リアル店舗での消費や、モノの動きと言ったネットワーク外の活動をスコープに入れたO2O、オムニチャネル、IOTといった動きが出てきたわけだ。
 このような動きの背景には、インターネットが様々なビジネスを取り込みながら拡大する中で、そこに蓄積される情報がリアルビジネスに影響を与えるところまで拡大した事や、インターネットの拡大に伴いネット関連の機器やシステムの低廉化・汎用化が進んだという事情があるのではないかと思う。
 例えるなら、ブラックホールのようにすべてを呑み込んで来たインターネットがついに限界を迎え、ビッグバンとして超新星が産まれたという事ではないか。

(図2)

(2)卸売りモデルが本格始動する
 本年は、光コラボレーションモデル(フレッツ光の卸売り)が始まる。NTT東西から卸売りを受けて、様々な事業者が自らの事業と組み合わせてエンドユーザーに提供できるようになる。 移動体の分野では一足早くMVNOが開始されており、MVNO事業者の工夫により独自のサービスが提供され、2014年6月には前年度比792万回線と、過去3四半期は50-70万契約ずつ拡大を続けている(MM総研調べ)。
 固定網、移動網双方で始まったこの動きは、各々の市場がこれまでの事業コンセプトでは飽和に近いところまで成長し、新たな展開が必要になった結果とも言えるが、通信事業自体が、拡大の過程で、通信事業者以外の事業者が自らの事業に取り込んでサービス提供できるところまで拡大し、機能分化が可能なところまで汎用化した結果とも言える。
 その意味では、これまでブラックホールのようにリアル事業を呑み込んできたEC、インターネットビジネスが、その限界を超えO2O、オムニチャネル、IOT等リアルなビジネスシーンに展開を始めた事と、通信事業の卸売りへの展開は、インターネットの拡大、汎用化、低廉化を背景とするビッグバン(注3)から生まれた双子の超新星と呼んでも良いのかもしれない。

新たなパラダイムの勝者は誰か?

(1)潮目が変わって
 リアルのビジネスにICTが滲み出すという構図に変わったわけだが、この新しい構図での勝者は誰か? どうやら、インターネットビジネス側の一人勝ちとはいかないようだ。
  ECの雄、楽天市場が満を侍して参入した楽天スマート決済、開始後2年を経過したところなので成否はこれからだが、ICプリペイド決済SUICAで32.5%、WAONで29.6%の人が過去1年間で利用経験がある(マイナビ調べ)事を考えると、存在感の薄さを感じざるを得ない。NFCを利用したスマホ決済も、普及には業界内の幾つかの課題解決が必要だが、その他にも、現状のICプリペイドカードに比べ決済完了までのトランザクションの時間が長く、店舗でのユーザ体感で劣るとの声もある。
 インターネットビジネスがリアルのビジネスに滲み出す過程では、ICTの技術を使いながらも、リアル店舗でのビジネスのコンテキストに照らして、サービス、ビジネスモデルの再構築が必要になるという事だ。そこに、新たな勝機がある。

(2)通信事業の枠を越えて
  では、通信ビジネスのビッグバンはどうだろうか?
  新たにどのようなビジネスが産まれるのか?
  今までインターネットなんて遠いところの話と感じていた人たちにも発展のチャンスだ。通信事業者にも、今まで思いもよらなかったビジネスが可能になるかもしれない。
  通信、インターネットビジネスの概念にとらわれず、リアルビジネスの奥に潜むユーザー体験のニーズに真摯に向き合う姿勢が、次の扉を開けると思う。
 NFVなど斬新なビジネスを支えると思われる技術要素も続々と進化を遂げている。
 卸売りの開始により生まれる機会を活かし、新たな競争力を持った魅力的な事業の創造を期待したい。

(注1)通信社、全国紙、全国ニュース網、地方紙31紙、一般紙、主要ビジネス3誌の集計

(注2)「平成25年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」

(注3)一般に、「通信のビッグバーン」は1985年のNTT民営化、1999年のNTT再編を指すことが多い。しかし、どちらも通信業界の中の話、通信事業への参入の話で、誤解を恐れずに言えば、「コップの中の嵐」だったのかもしれない。

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