2017年10月26日掲載 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:「しがらみ」に思う


(c) Richard, Flickr

柵(しがらみ)……

(1)水流をせきとめるために杭を打ちならべて、これに竹や木を渡したもの。  (2)転じて、柵(さく)。また、せきとめるもの。まといつくもの。(広辞苑より引用)

9月末、衆議院が解散されて、秋とともに政治の季節が到来した。本誌がお手元に届く頃には選挙の結果が明らかになり、新たな議席配分の下、首班指名のための特別国会の召集が話題になっているはずである。

と、固い出だしで始まったので、民主主義とは、国民主権いかん、といった深い考察になると期待する読者には申し訳ないが、非政治的人間が今回の選挙で思ったとりとめのないことを一つ二つ。

解散総選挙を巡り、国難突破、大義なし、リセットなどさまざまな言葉がマスコミを賑わせたが、その中に「しがらみのない政治」というフレーズもあった。まといつくものを排除する、利害関係で判断するのでなく政策本位で判断する政治という意味であろう。そのこと自体には何の異論もないし、何より耳触りが良くて、つい飛びつきそうになる言葉ではある。

しかし、しがらみまみれになりながらやっと息をしている筆者は考える。政治ってもっとどろどろしたものではないかと。もつれにもつれた利害関係を一つ一つ解きほぐし、説得し、妥協し、多数が「まあ仕方がないか」と考えるところに落ち着かせる、そして最後は多数決で決定する。そういう、AI(人工知能)も裸足で逃げ出すような困難なプロセスをこなしていけるからこそ政治家は尊敬されるのではなかろうか。

ともあれ、しがらみは、古いものに固執する頭の固い輩、自らの利害を第一に考え横車を押し通す集団、腐れ縁といった悪いイメージの言葉として定着しつつある感があり、「しがらみ」には少し気の毒である。

さて、それにしても最近の選挙報道、とりわけ結果の予測には目を見張るものがある。開票時間の開始とともに政党別の予想獲得議席が示され、それがほとんど的中するのには恐れ入る。地道な取材や出口調査の成果であって、関係者の努力には頭が下がるのであるが、それほどまでにして速報する意味はどこにあるのだろうか。おかげで夜遅くまでテレビに張り付いている必要がなくなって、それはそれで結構なことだが、開票のプロセスを抜きにいきなり結果を示されると自分の一票が結果に結びついているという感覚が持ちにくくなっているように思う。もっと世の中が進歩すると、それこそAIがすべての情報を網羅し、民意とやらを的確に読んで、投票さえ必要でない世の中になるかも、などという妄想も膨らむ。まあ古い人間のたわごとで、我ながら理屈になっていないとは思うのだが……。

政治家のキャッチフレーズに触発されて、しがらみを断ち切り、すべてをリセットして人生をやり直したいという決して叶えられぬ野望を抱いてしまいながらも、いやいやそれではこれまでお世話になった皆さん(配偶者を含む。念のため)に申し訳ないと反省する小心な筆者としても、ちょっと真剣に政治を考えたこの数週間であった。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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