ICT雑感:地方出身者の憂鬱 | InfoComニューズレター
2018年3月29日掲載 InfoCom T&S World Trend Report

ICT雑感:地方出身者の憂鬱



去る1月に総務省が平成29年の住民基本台帳人口移動報告を公表した。それによれば、転入者数が転出者数を上回る転入超過は東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪、福岡の7都府県のみで、東京の転入超過数が75,498人と他に比べて突出して多くなっている。また、3大都市圏で見ても、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)のみが119,779人の転入超過であり、大阪圏(大阪、兵庫、京都、奈良)は△8,825人、名古屋圏(愛知、岐阜、三重)は△4,979人のそれぞれ転出超過となっている。大阪圏、名古屋圏とも転出超過は5年連続で、これらを要するに大都市集中、中でも東京への一極集中が止まらないということであろう。

今回こそ世を憂う、読むに堪える話だと思われた読者には毎度期待を裏切って恐縮である。先般ほぼ40年ぶりに中学校の同窓会があった。筆者が通ったのは、最も近い「まち」である高山市には車で1時間弱、県庁のある岐阜市までは3時間かかるという飛騨の山村の中学校である。光陰矢の如し、あこがれのマドンナもすっかり普通のおばさんになってしまったと、我が身のことを棚に上げて心ひそかに嘆きつつ、気持ちだけは少年少女の頃に戻って昔話に花を咲かせたのであるが、それはともかく、その同窓会名簿によれば、卒業生56人の現住所は、生まれ育った村が15人、高山市17人、岐阜市・名古屋市20人、その他が4人である。我が同窓生が移動したのは既に四半世紀以上前のことであろうが、「まち」それも大きな「まち」への集中が著しい。

大学を卒業してそのまま東京に居ついてしまった筆者には論ずる資格がないし、天に唾する行為であることは重々承知であるが、それにしても、なぜこうも都会に人が集まるのであろうか。村に一軒の本屋さんもなかった筆者の時代とは違って、ICTの進歩により田舎でも情報は都会と同じように入ってくるし、ネットで何でも買える。車が下駄代わりで地下鉄の階段をふうふう言いながら登らなくてもよい。土地は安いし、隣のビルの壁とにらめっこしなくても、窓を開ければのびやかな田園風景が広がっている。ふるさと創生、地方活性化、地域主権、地方創生……言葉が少々躍っているのはともかく、政府だって自治体だって、手を替え品を替えいろいろな施策を講じている。なのになぜであろうか。

働き口がない、高等教育機関がない、配偶者候補がいない、遊べるところが少ない、刺激がない、いろんな要素が絡み合ながら、都会に人口が集中する原因となり結果となっているのであろう。いっそ都会の税金を田舎より高くしてはという暴論が頭をよぎったりするが、悲しいかな筆者には、田舎暮らしの魅力が増し、それを実感できるようにそれぞれの地域が頑張ってほしいという以上の具体策は浮かばない。

平成27年の国勢調査によれば、筆者の育った旧村の人口は1,652人(ちなみに人口密度は1㎢当たり8.8人、東京都特別区部のそれは14,796.1人)で5年前より217人減少している。平成の大合併により、我がふるさとの村は高山市に吸収されて一度「消滅」してしまったのであるが、1,652÷(217÷5)≒38、極めて近い将来に文字通り消滅してしまうのではないかと少し憂鬱なこの頃である。

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