2022年4月27日掲載 ICT利活用 InfoCom T&S World Trend Report

中国の5G発展状況とスポーツDXの展望 ~北京2022冬季オリンピックにおけるICT技術の活用を踏まえて~



はじめに

中国では2019年10月に5G商用化開始以来、5Gサービスの利用が急速に拡大しており、2021年末時点の中国本土の5G回線数が4.81億に到達した。これは世界の5G回線数の75%以上を占めており、現在中国は世界最大の5G市場となっている[1]。中国では、社会や産業分野における5Gの活用が加速しており、全国での5G応用イノベーションプロジェクトの数が1万件を超え、5Gが産業・社会全体のDXにとって重要な駆動力になっている。特に、北京2022冬季オリンピック競技大会(以下、「北京2022」)では、北京、張家口、延慶の3つの競技ゾーンにおける87の競技・非競技会場、高速鉄道などの重要施設に数千の5G基地局が整備され、大会運営、試合放送などのシーンで5Gが活用、大会の順調な開催をサポートするなど、重要な役割を果たした。

また、同大会では5Gの通信技術の他、デジタルツインなどを活用したスマートスタジアムや、高速列車での4K中継スタジオなども整備され、様々なICT技術が活用された。さらに、実世界だけでなく、バーチャルヒューマンやNFTなども活用され、仮想空間において新たな体験が提供された。本稿では、中国における5G活用が進展した背景を説明した上で、北京2022冬季オリンピック大会における5GをはじめとしたICT技術活用に関する取り組みを紹介し、今後のスポーツ産業のDXについて展望してみる。

中国における5Gの発展状況

5G基地局整備状況

中国工業・情報化部の統計によれば、2022年2月末時点で、中国における5G基地局数は150.6万となり[2]、世界の5G基地局数の約60%を占めている[3]。基地局数は今後も順調に増加していくことが予想され、2022年末までに200万を超えると見込まれている[4]。また、5Gカバー率については、中国本土のすべての地級市と県級市および、87%以上の郷鎮エリアをカバーしている[5]

SA(スタンドアローン)方式の5Gサービスの展開

NSA(ノンスタンドアローン)方式と比べ、SA方式の5Gネットワークは低遅延など5Gのすべてのメリットを生かすことができ、ネットワークスライシングなどの機能を提供できる。中国では、主要キャリア3社が共にSA方式の5Gネットワークの構築を実現し、サービスを提供している。また、これに伴い2021年5月17日から、中国で新たにネットワーク接続許可を取得した5G端末は、5G SA機能がデフォルトでオンになっている。中国情報通信研究院(CAICT)の5Gクラウドテストプラットフォームのモニタリングデータによると、2021年第2四半期の5Gネットワークテストでは、SA方式での接続が74.7%を占めており、前四半期より22.8%ポイント伸びた[6]

5G契約者数、5Gネットワークに対するユーザー評価、5Gスマートフォン出荷台数

2022年2月末時点では、中国の主要キャリア3社の5G契約者数は合計7億9,247万に達し、前年同期より4億3,139万増加した。うち中国移動が4億2,543万と最も多く、中国電信が2億214万、中国聯通が1億6,490万の契約を獲得している(表1)。

【表1】中国主要キャリア3社の累積5G契約者数(2022年2月時点)

【表1】中国主要キャリア3社の累積5G契約者数(2022年2月時点)
(出典:中国移動HP、中国聯通HP、中国電信HPのデータより作成)

また、中国における5Gの利用は今後も引き続き拡大することが期待され、2025年には中国全土での5G回線数が8.92億になると予測されている(図1)。

【図1】2025年5G回線数の見通し

【図1】2025年5G回線数の見通し
(出典:GSMA「The Mobile Economy China 2022」の推計データより作成)

5Gネットワークの速度については、Speedtest Intelligenceのデータによれば、2021年第3四半期の中国における5Gダウンロードの平均速度は299.04Mbpsで、これは5G商用化の先行した市場において第4位にあたり、5Gアップロードの平均速度は41.14 Mbpsで第2位となっている(図2)。

【図2】主要国5Gダウンロード・アップロード平均速度(2021年Q3)

【図2】主要国5Gダウンロード・アップロード平均速度(2021年Q3)

【図2】主要国5Gダウンロード・アップロード平均速度(2021年Q3)
(出典:Ookla「Growing and Slowing: The State of 5G Worldwide in 2021」https://www.ookla.com/articles/state-of-worldwide-5g-2021)

また、5Gネットワーク体験に対するユーザー評価については、GSMAが実施した主要国・地域の5Gユーザーアンケート調査では、中国ユーザーの15%が5Gのネットワーク体験は「期待を超えた」、61%が「期待を満たした」と答えた(図1)。このように、75%以上の中国ユーザーは5Gネットワーク体験が「期待を超えた、または期待を満たした」と感じており、欧州での同じ回答の割合53%、日本での28%、韓国での26%、米国での65%に比べ、中国のユーザーは5Gネットワークの体験に対して比較的プラスに評価していることが分かる。

【図3】各国・地域の5Gユーザーの5Gネットワーク体験に対する評価

【図3】各国・地域の5Gユーザーの5Gネットワーク体験に対する評価
(出典:GSMA「The Mobile Economy China 2022」)

また、5G体験のプラス評価はユーザーARPU[7]の向上にもつながっている。中国移動と中国電信が公表した2021年度の5GユーザーのARPUは、中国移動が82.8人民元(約1,612円)[8]、中国電信が53.3人民元(約1,038円)で、それぞれモバイルユーザー全体のARPUの1.7倍と1.2倍になっている(表2)。

【表2】中国主要キャリアの5GユーザーARPU(2021年度)

【表2】中国主要キャリアの5GユーザーARPU(2021年度)
(出典:各社決算情報より作成 *中国聯通は5GユーザーARPU未公表)

さらに中国では5Gスマートフォンの出荷台数も大きく伸びており、既にスマートフォンの主流となっている。CAICTの統計によると、2021年の中国における5Gスマートフォンの出荷台数は2.66億台で対前年比63.5%増加しており、スマートフォン出荷台数全体の75.9%を占める[9]

産業・社会における5Gの活用

中国では5Gがインフラとして全国で整備されているなか、産業・社会における5Gの活用も拡大している。2021年7月に、中国工業・情報化部や中央ネットワーク安全・情報化委員会弁皇室、国家発展・改革委員会などの10の政府部門が共同で、「5G応用『揚帆』行動計画(2021-2023年)」[10]を公表し、5Gと産業の融合を促進するための具体的な施策や重点領域を取りまとめた。同計画では、情報消費、実体経済、民生サービスの3大領域と15の重点産業における5Gの融合応用の推進を掲げている(表3)。

【表3】「5G応用『揚帆』行動計画(2021-2023年)」に掲げられている5G重点領域・産業応用

【表3】「5G応用『揚帆』行動計画(2021-2023年)」に掲げられている5G重点領域・産業応用
(出典:「5G応用『揚帆』行動計画(2021-2023年)」より作成)

こうした政策を背景に、中国の主要キャリア3社が法人向けの5Gプライベートネットワークなどのソリューションの提供に注力している。中国移動の2021年度の5G商用プロジェクトは2,800件となり、クラウドやDXソリューションと共に法人市場を牽引している。その結果、同社の法人市場セグメント売上高は対前年比で21.4%[11]増加した。また、中国聯通の5G産業向け仮想プライベートネットワーク顧客数が1,238社[12](2022年2月末時点)、中国電信の5Gカスタマイズネットワーク商用プロジェクト数が1,200件[13]となるなど、3社は5Gを活用して様々な産業におけるDXを推進している。

InfoComニューズレターでの掲載はここまでとなります。
以下ご覧になりたい方は下のバナーをクリックしてください。

北京2022冬季オリンピック大会における5GなどのICT技術の活用
 5G 4K/8Kクラウド中継、VRスマート観戦体験
 5G高速鉄道列車実況中継スタジオ
 バーチャルヒューマン、NFTの活用
まとめ

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

[1] GSMA「The Mobile Economy China 2022」(2022年3月)

[2] 中国工業・情報化部「2022年1-2月份通信业经济运行情况」(2022年3月21日)https://www.miit.gov.cn/gxsj/tjfx/txy/art/2022/art_4f29bc2367764f2788737ee2e7d864c7.html

[3] 中国政府「中国5G基站总量占全球60%以上」(2022年2月12日)
http://www.gov.cn/xinwen/2022-02/12/content_ 5673287.htm

[4] 中国工業・情報化部「肖亚庆在“部长通道”回应工业经济、制造业、5G、中小企业等相关热点问题」(2022年3月8日)https://www.miit.gov.cn/xwdt/gxdt/ldhd/art/2022/art_ad5e1e5acead45d4a6825c8101cb2f24.html

[5] 央視網「我国5G网络已覆盖全国所有地市一级和所有县城城区 87%乡镇镇区」(2022年3月1日)https://news.cctv.com/2022/03/01/ARTIh3KvwF9w7I7mDlTyZTIB220301.shtml

[6] CAICT「中国5G発展と経済社会影響白書」(2021年12月)

[7] ARPU:Average Revenue Per Userの略、1ユーザー当たりの平均売上

[8] 2022年4月6日時点レートより換算

[9] CAICT「2021年12月国内手机市场运行分析报告」(2022年1月18日)

[10] 中国中央人民政府「十部门关于印发《5G应用“扬帆”行动计划(2021-2023年)》的通知」(2021年7月)http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2021-07/13/content_5624610.htm

[11] 中国移動2021年度決算資料

[12] 中国聯通2022年2月オペレーティングデータ

[13] 中国電信2021年度決算資料

当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。InfoComニューズレターを他サイト等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。また、引用される場合は必ず出所の明示をお願いいたします。

会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。

ICR|株式会社情報通信総合研究所 情報通信総合研究所は情報通信のシンクタンクです。
ページの先頭へ戻る
FOLLOW US
FacebookTwitterRSS