2022年5月11日掲載 ICT利活用 InfoCom T&S World Trend Report

障がい者雇用とICT活用



SDGsと障がい者雇用

「誰一人取り残さない」をスローガンに2030年までに全世界で達成を目指しているのがSDGs(エス・ディー・ジーズ、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))である。SDGsは2015年9月の国連サミットで採択され、国連加盟193カ国が2016年から2030年の15年間で達成する17の大きな目標が掲げられている。そして、それらを達成するための具体的な169のターゲットがある。障がい者雇用は「目標8:働きがいも経済成長も」と「目標10:人や国の不平等をなくそう」の理念に関わるものである。ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)が前提となる中で障がい者雇用の社会的重要性は増している。

【図1】国連「Sustainable Development Goals」のうち、障がい者雇用に関連する目標

【図1】国連「Sustainable Development Goals」のうち、障がい者雇用に関連する目標
(出典:国連 https://www.un.org/sustainabledevelopment/)

本稿では、国内の障がい者雇用の現状を捉えた上で、その雇用環境に影響をもたらす障がい者雇用に関する政策動向をとりあげる。次に、障がい者雇用におけるICTの関わり・役割を捉えるため、ICT産業における障がい者雇用と、障がい者雇用におけるICT活用の動向を概観し、今後を展望する。

国内の障がい者数と障がい者雇用者数

内閣府「令和3年版障害者白書」によると、身体障害、知的障害、精神障害の3区分における障害者数の概数[1]は、身体障害者(身体障害児を含む)436万人(2016年)、知的障害者(知的障害児を含む)109万4千人(2016年)、精神障害者419万3千人(2017年)となっている。人口千人当たりの人数で見ると、身体障がい者は34人、知的障がい者は9人、精神障がい者は33人となる。複数の障がいを併せ持つ者もいるため、単純な合計にはならないものの、国民のおよそ7.6%が何らかの障がいを有していることになる。障がい区分別では身体障がい者は65歳以上の割合が7割程度まで上昇している。知的障がい者は2011年に比べ約34万人増加している。その背景には以前に比べ知的障がいに対する認知度が高くなったことで、療育手帳取得者が増加していることがある。精神障がい者は2011年に比べ100万人程度増加している。

障がい者雇用者数は、厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業では59.8万人(前年比3.4%上昇、同1.9万人増加)と増加傾向にある。10年前の36.6万から23.2万人増加している。

次に、障がい者に関する国内の政策動向について概観する。

障がい者雇用に関する主な政策

日本の障がい者雇用は、「障害者雇用促進法[2]」に基づいて行われている。1960年に「身体障害者雇用促進法」が職業生活における障がい者の自立を促進するための措置を総合的に講じることにより、障がい者の職業の安定を図ることを目的に制定され、1987年に「障害者雇用促進法」に改名された。

障害者雇用率制度と特例子会社制度

障害者雇用促進法において、1976年には「障害者雇用率制度」と「特例子会社制度」が障がい者の雇用の促進と安定を図るため制定された。障害者雇用率制度とは、民間企業や国、地方公共団体は、法律で定められた障害者雇用率に相当する人数以上の障がいのある者を雇用しなければならないとする制度である。法定雇用率より少ない場合は障害者雇用納付金を収める必要がある。同時に制定された特例子会社制度は、民間企業や地方自治体が障がい者の雇用を目的に設立する子会社で、特例子会社で働いている障がい者は親会社で雇用されているとみなされ、親会社の障害者雇用率(法定雇用率)に算入できる。このように日本国内の障がい者雇用の促進は法制度による義務付けと、義務を果たせなかった場合に納付金を支払わせる制度により行われている。障害者雇用率は2021年3月1日には引き上げられ、民間企業では2.3%とされた。同時に、対象となる事業主の範囲は従業員45.5人以上から43.5人以上に拡がっている。特例子会社数は年々増加傾向にあり、2021年6月時点で542社に達している。それに伴い、障がい者雇用者数も増加傾向にある(図2)。

【図2】特例子会社数の推移と障がい者雇用者数

【図2】特例子会社数の推移と障がい者雇用者数
(出典:厚生労働省)

複数回にわたる法改正

【図3】障害者雇用優良中小事業主認定マーク「もにす」

【図3】障害者雇用優良中小事業主認定マーク「もにす」
(出典:厚生労働省)

障害者雇用促進法は複数回にわたり改正されており、1998年には知的障がい者の、2018年には精神障がい者の雇用が義務化された。2020年の改正では主に2点が改正されている。一つは中小企業の障がい者雇用が進展していないことを改善するため、障がい者雇用に関して優良な中小事業主の認定制度(「もにす制度」)の創設が行われた(図3)。もう一つは、精神障がい者の雇用が増える中で週20時間未満の短時間労働で働く人が増えていることから、短時間労働者に対しての特例給付金制度が設けられた。このように障がい者雇用の対象企業の拡大と、働き方の多様化の推進により、障がい者雇用のさらなる拡大と安定化が図られている。

障がい者雇用とICT

障がい者雇用は増加傾向にあるが、ICTは障がい者雇用にどのような関わり方をしているのだろうか。それを捉えるため、① ICT産業による障がい者雇用の動向と、② 障がい者雇用におけるICT活用の動向を見ていく。

ICT産業やICT関連業務での障がい者雇用

以下では、ICT産業やICT関連業務分野での障がい者雇用の動向を概観する。

・米国ICT産業での障がい者雇用

米国では障がい者と健常者の平等を目指す取り組みの一環として、Disability:IN(非営利団体)が2014年から毎年、DEI(Disability Equality Index、障害平等指数)を発表している[3]。これは企業の障がいインクルージョンへの取り組みを得点化した米国障害者協会(AAPD)とDisability:INの合同調査であり、6つの分野についてのアンケート回答で算出される(図4)。DEIは0~100点で算出され、80点以上の企業が公表される。参加できるのは米国内のあらゆる業種の企業で、外国企業の米国法人も含まれる。参加企業は2014年の48社から、2020年には過去最多の247社にまで増加している[4]。満点の企業には多くのICT企業が含まれており、Accenture、Google、AT&T、Cisco、Salesforce、Dell Technologiesなどがある。実際、Google 2021 Diversity Annual Report[5]によると、Googleでは障がいがあることを自認する社員は5.6%となっており、高い水準にある。米国ではICT産業が障がい者雇用促進の主要な産業となっている。

【図4】DISABILITY EQUALITY INDEX(DEI)

【図4】DISABILITY EQUALITY INDEX(DEI)
(出典:Disability:IN)

 

InfoComニューズレターでの掲載はここまでとなります。
以下ご覧になりたい方は下のバナーをクリックしてください。

ICT産業やICT関連業務での障がい者雇用
・RPAプログラマーとしての雇用

障がい者雇用におけるICT活用
・ロボット活用による就労機会の拡大
・テレワークによる就労機会の拡大
・就労定着支援におけるICT活用
・マネジメント担当者向けの教育コンテンツ

課題

おわりに

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部抜粋して公開しているものです。

[1] 身体障害、知的障害、精神障害の3区分について、厚生労働省による「生活のしづらさなどに関する調査」、「社会福祉施設等調査」又は「患者調査」等に基づき推計された基本的な統計数値。

[2] 障害者の雇用の促進等に関する法律。

[3] 「Disability Equality Index」https://www.disabilityequalityindex.org/DEISurvey/Annual_DEI_Questions.pdf

[4] DEIでハイスコアの企業はそうでない企業に比べ経営パフォーマンスが良いことが明らかにされている。2019年1月にはニューヨーク州の長官がニューヨーク州の年金運用機関の投資家にもDEIの活用を呼びかけた。

[5] https://diversity.google

当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。InfoComニューズレターを他サイト等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。また、引用される場合は必ず出所の明示をお願いいたします。

手嶋 彩子のレポート一覧

会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。

ICR|株式会社情報通信総合研究所 情報通信総合研究所は情報通信のシンクタンクです。
ページの先頭へ戻る
FOLLOW US
FacebookTwitterRSS