情報通信総合研究所(ICR - InfoCom Research,Inc)は情報通信専門のシンクタンクです。

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2019年5月23日

ICT利活用による働き方改革で3割の企業の生産性が向上
〜従業員と企業のWin-Winの関係構築が重要〜

(株)情報通信総合研究所(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大平 弘)は、情報通信技術(以下、ICT)を活用することによって生み出されている多面的な価値を明らかにするため、アンケート調査を元にした推計を行っています。
ホワイトカラー職種の就業者がICT(情報アクセス環境、テレワーク等)を活用することによる企業の生産性の変化及び就業者が得る価値を推計しましたので、その結果を報告します。

図表入り調査結果PDF版[10頁、854KB]
ICT 利活用状況/働き方改革の取組状況/ICT利活用の取組と生産性向上の関係/働き方改革の取組と生産性向上の関係/推計対象の概念整理/推計方法 等を含む

<ICTを活用することによる生産性の変化>

2019年4月1日から「働き方改革関連法」が順次施行され、官民を挙げて長時間労働の是正、生産性の向上、柔軟な働き方がしやすい環境整備等の「働き方改革」が推進されている。働き方改革に関連するICT利活用によってホワイトカラーの労働時間が削減される だけではなく、それが企業の生産性(営業利益÷(従業員数×労働時間))の向上にどの程度つながるのかを推計した。

その結果、高度にICTを利活用(遠隔会議システムの導入等)しており、且つ働き方改革(在宅勤務制度の導入等)にも積極的に取り組んでいる企業では、約3割(29.5%)の企業で、生産性が3年前よりも向上したことが分かった 。生産性が向上した企業の内、約6割の企業では売上高も増加しており、働き方改革に関連するICT利活用は、単にコストカットを実現するだけではなく、事業規模(売上高)拡大にもつながると言えるだろう。

ICTを活用した働き方改革による生産性向上効果
ICTを活用した働き方改革による生産性向上効果

なお、3年前よりも生産性が向上した企業の割合は、働き方改革関連のICT利活用施策を実施していない企業 では8.7%に過ぎず、「ICT高度利活用且つ積極的な働き方改革実施企業」の方が3倍も大きい。

また、「ICT高度利活用企業」全体では、3年前よりも生産性が向上した企業の割合が20.4%と「ICT高度利活用且つ積極的な働き方改革実施企業」の29.5%よりも低い。このことから、ICTの高度な利活用を行うだけではなく、更にそれらの活用を後押しするような働き方改革関連の施策を積極的に行うことで、企業の生産性を高められることが示唆される 。

さらに、ICTを活用して職場外で働くホワイトカラーに対してどのような効果があったか尋ねた結果をみると、ワークライフバランスが向上した人が19.6%、心身の健康が向上した人が11.3%と多い。他にも労働意欲の向上や家庭でのコミュニケーションの向上など様々な効果が得られていることが確認できる。

ICTを活用して職場外で働くことによって従業員が得た効果(単純集計)
ICTを活用して職場外で働くことによって従業員が得た効果(単純集計)

このような効果によって従業員の仕事のパフォーマンスが向上することが、企業の生産性向上、売上高拡大につながっていることが考えられる。そこで従業員が得た効果と企業の業績に関係があるのかを検証するため、従業員が得ている効果の数によって回答者を分け、その人たちが勤める企業の売上高、営業利益、生産性(営業利益÷(従業員数×労働時間))が増加・向上したという人の割合を集計した。

以下の集計結果をみると、効果なしの人(上記グラフの10項目のどの効果も得られなかった人)が勤める企業グループでは、売上高が増加した割合が27%なのに対して、効果が1つ得られた人 が勤める企業では30%、効果が2つ得られた人が勤める企業では37%というように、得られた効果の数が多い人が勤める企業程、売上高が増加したという割合が高くなっている。

ICTを活用して職場外で働くことによって従業員が得た効果と企業業績の関係(単純集計)
ICTを活用して職場外で働くことによって従業員が得た効果と企業業績の関係(単純集計)

また、営業利益の増加、生産性の向上についても売上高と同様に、従業員が得られる効果の数が多い程、割合が高くなっている。

以上より、ICTを活用して職場外で働くことによって従業員が得ている効果の数と企業業績等の向上には正の相関があると言え、従業員が時間・場所に制限されずに働くことができるような職場環境・雰囲気を構築することによって、ワークライフバランスや心身の健康が向上し、企業の業績も向上するというWin-Winの関係を作ることが大切だと示唆される。



※1 労働時間削減効果は図の参考に示している。詳細は弊社プレスリリース(2019年1月17日)参照。

※2 本資料の数値は、単純集計と明記されていない場合を除き、企業規模割合を補正するウェイトバックを行った日本全体の数値を示している。

※3 後述の図表1の10項目のいずれも実施していない企業。

※4 個別のICT利活用の取組と働き方改革の取組が企業の生産性向上に与える影響については、後述の【ICT利活用の取組と生産性向上の関係】【働き方改革の取組と生産性向上の関係】に記載している。

※5 上記グラフの10項目のどれか1つを回答した人。以下、効果2つの人、効果3つの人等も同様に上記グラフの10項目のうち何個回答したかによって回答者をグループ分けしている。

図表入り調査結果PDF版[10頁、854KB]
ICT 利活用状況/働き方改革の取組状況/ICT利活用の取組と生産性向上の関係/働き方改革の取組と生産性向上の関係/推計対象の概念整理/推計方法 等を含む

<アンケート調査の概要と集計方法>

アンケート調査では、ICTを活用した職場外での働き方、ICTツール・サービスの導入・利活用状況(図表1)、働き方に関連した取組の実施状況(図表2)等について尋ねた。調査期間や調査対象、有効回答数は以下のとおり。

「ICTを活用した働き方に関するアンケート」
調査期間:2018年2月22日~2018年2月24日
調査対象:全国の就業者
調査手法:Webアンケート調査
回収数 :合計 2,433 サンプル(企業規模・職種別の回収数は図表5)
理的職業従事者、専門的・技術的職業従事者、事務従事者、販売従事者(定義は図表6)

<会社概要>

社名:株式会社情報通信総合研究所(http://www.icr.co.jp)
1985 年 6 月に、国内外の情報通信に関する調査・研究を専門とするシンクタンクとして設立。固定通信や移動通信、インターネット・ICT、通信と放送の融合から地域の情報化など、情報通信関連の調査研究、コンサルティング、マーケティング、出版事業などの活動を展開しています。

〒103-0013東京都中央区日本橋人形町2-14-10
アーバンネット日本橋ビル

TEL 03-3663-7153/FAX 03-3663-7660

株式会社情報通信総合研究所
ICT経済分析チーム

主席研究員:野口正人
主任研究員:手嶋彩子、山本悠介、鷲尾哲