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2011年1月6日掲載

London Report(3) テレビと電話のメディアミックス
−人気オーディション番組と電話投票−

NTT Capital(U.K.) 岩田 祐一
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ロンドン観光の中心地「ピカデリーサーカス」 今、英国で最も人気のテレビ番組といえば、民放ITVで土日に放送されている「X Factor」です。昨年、同社はこの番組をはじめとした広告収入UPで、業績・株価を急上昇させました。

「The X Factor」番組サイト
http://xfactor.itv.com/

 この番組は、いわゆる歌手デビューのためのオーディション番組ですが、1年かけて、各地方大会を勝ち抜いた全国からの応募者を絞り込んで、優勝者を決めていく番組です。

 特に1年の後半戦、視聴者にとって楽しみ、また、絞り込まれた応募者にとって過酷なのは、毎週毎週、ステージを披露し、そこで1人ずつが落とされていく、というプロセスです。
 しかも毎週土曜日夜の生放送、翌日曜日夜の生放送で結果が発表される、この繰り返しとなります。同じスタイルしか見せないと飽きられ、振り落とされてしまうので、毎週趣向を変えて、自分の良さをアピールしなければならない、これは既にこの時点で、デビュー後のトレーニングであるともいえるでしょう。
もちろんこのプロセスを経る間に、応募者には固定ファンがつき、タブロイド紙を中心とした新聞にも顔写真・記事が掲載され、既に勝ち残っている時点でスター扱いとなっている状況です。英国ですから英語の歌詞、そして世界的音楽レーベルがバックにつくため、勝ち抜けば、歌手として一定以上の成功は保証されたも同然といえるかもしれません。

 そしてこの番組で、きわめて重要な役割を果たしているのが、視聴者からの電話投票です。

 土曜日の番組終了後、日曜日の番組放送半ばまで、視聴者からの投票を受け付けるのですが、電話、携帯からのテキスト送信(SMS)、インターネットのうち、放送局側が一番アピールしているのが電話投票です。
番号で、090 XXXX XX1 (下ひとけたで応募者を区別)という形で宣伝されるため、視聴者側も投票しやすく、また放送局側も電話がつながった時点でコンピュータによる自動カウントと、最も手軽かつ臨場感あふれた手法となっています。

 日本でもこの種の電話投票サービスは「テレゴング」といった名称で行われていますが、番組放送中の受付が主なため、受付時間はせいぜい3時間が精一杯のところ。
 一方、「X Factor」は土日のゴールデンタイムにITV 1で連続放送(なおITV 2では土日共に終了後のフォローアップ番組を放送、また日曜の午前中に前日の再放送を実施)しており、局を挙げて社運をかけた番組となっています。

 日本では、土日2日連続の生放送番組は極めてまれなため(恐らく相当高額の広告費となるでしょう)、なかなかこのフォーマットは利用しにくいかもしれません。
 ちなみに、この番組のスポンサーは、スポット枠を除くと原則1社提供であり、TalkTalkという、前回もご紹介した、電話・ブロードバンドサービスの会社が担っています。その意味では、テレビ局と音楽業界、そして通信会社とがうまくタイアップして作り上げた、1年勝負のストーリー的番組フォーマットと言えるでしょう。

 実は英国と日本では、人気番組で共通している部分があります。かつて深夜番組として日本で放送されていた「マネーの虎」は、英国にフォーマット輸出され、新ビジネス発掘の人気番組になっていますし、逆に「お宝鑑定団」は、英国の家庭の古物を掘り出してオークションに出す、テレビ番組がヒントになったとも言われています。
 日本では、ドラマを除き、長期間勝負のストーリー的連続番組が殆どなくなってしまいました(筆者の印象では「アメリカ横断ウルトラクイズ」もしくは「ASAYAN」あたりで途切れた印象)。英国では、コンテンツ制作会社の育成を大切にしている面もあり、この「X Factor」も、音楽業界に通じたコンテンツ制作サイドからの企画提案が元のようです。
 日本でもそろそろ再び、通信業界も含めた異業種タイアップによる、地上波とBS・CSをミックスした、あっと驚く番組フォーマットの登場があってもいいのではないか、と楽しみにしたい今日この頃です。

 次回は、「意外と身近な存在:中東・アフリカ発 多国籍携帯オペレーター」を取り上げたいと思います。

この記事は、社外の方より投稿いただいたレポートです。 内容に関して情報通信総合研究所は責任を負うものではないことをあらかじめご了承ください。

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