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2011年5月13日掲載

London Report(4) 意外と身近な存在:中東・アフリカ発 多国籍携帯オペレーター

NTT Capital(U.K.) 岩田 祐一
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 東日本大震災発生から2ヶ月が経ちました。当地でも、発生直後から今に至るまで、国内に比肩するほどの詳細な報道がなされています。
 当地時間3月11日朝の、「BBC Breakfast」(ニュース)を通じて流れた津波映像の第一報が、私にとっては深く馴染みのある、仙台空港近く(名取川河口から内陸付近)の光景とすぐに分かっただけに、その衝撃は大きいものとして続いています。
 原発をめぐる報道については、国内のセラフィールド、旧ソ連のチェルノブイリによる影響がいまだに影を落としている部分もあってか、福島第一をめぐる、日本国内外の状況が、日々アップデイトされています。

 この大震災のみならず、ここ数ヶ月は、中東・北部アフリカ・西アジア各国での動きを通じ、世界の狭さと揺れとを、実感させられる日々が続いています。
こういったなか、掲題のテーマをとりあげたいと思います。

 「中東」「アフリカ」と聞いて、身近にお感じになる方は、必ずしも多くないかもしれません。
 しかし、当地に住むなかで、その身近さは十分に感じられます。その理由は、以下の2つにあると考えています。(1)これらエリアからの移民が多いこと(特に旧植民地から旧宗主国への流入は、コトバの壁をクリアしやすく、コミュニティを築きやすい/得やすい などの理由から、規制はあれども盛ん) (2)こういった人々を対象とした商売が成り立ちやすいこと、またそのことによって力を蓄える企業が少なくないこと。

・・・EUの最東端、地中海に浮かぶキプロス島、金融立国・観光立国であるキプロス共和国の国際空港に降り立つと、国内携帯電話会社大手2社の広告がまずは目に飛び込んできます。1社は、準政府組織Cyta(Cyprus Telecommunications Authority)が英Vodafoneとの提携を通じて提供する「Cytamobile-Vodafone」そしてもう1つが、南アフリカに本拠を持つ「MTN」です。
このMTN、現在、キプロスを含む世界21カ国(アフリカ16カ国、中東・西アジア4カ国、欧州1カ国)でサービスを提供しています。中東・アフリカでは、英Vodafoneグループが、同じく南アフリカに本拠を持つ子会社「Vodacom」などを通じて13カ国にサービスを展開していますが、これを上回るフットプリントです。
現在、携帯加入者数の伸び率では、アフリカは世界のトップクラスにあり、この勢いを以って、MTNはエリア展開を拡大してきています。

 同じEU内では、地中海中部に浮かぶマルタ共和国の第一通信事業者「GO」は、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイの保有する持株会社が、株式の60%を所有しています。

 また、英仏海峡に浮かぶ、英王室領ジャージー島・ガーンジー島の携帯キャリアの1つ「Airtel-Vodafone」は、インドBharti Airtel と英Vodafoneの提携により運営されています。
このBharti Airtelは、昨年春、クウェートに本拠を持つZain社のアフリカ資産の大部分(16カ国)を買収し、アジア(3カ国)・アフリカ、そして前述の欧州にもフットプリントを持つ、世界的携帯事業者グループとなりました。

 キプロス(地図)、マルタ(地図)、ジャージー島(地図)・ガーンジー島(地図)の3地域に共通するのは、欧州内の独立した制度を持つ島々であり、海外からの渡航客(ビジネス客・観光客)が多く、規模に比して国際ローミング等含めた収入が期待できること。そして、英国領土の歴史を持つ島々でもあり、同じ歴史を持つ南ア・インド・UAEなどからの企業進出も比較的容易であること、などが挙げられます。

キプロス、マルタ、ジャージー島・ガーンジー島の場所

 これら地域は、これから夏の観光シーズンを迎えると、英国をはじめとした欧州の人々にとってはより身近なエリアとなります。(日本からの感覚で言えば、グアム、台湾のイメージでしょうか。)日本ほど多様な四季を持たない当地の人々にとって、国をまたいだ観光のための移動は、ライフスタイルにおける重要性も高いようです。そういったなかで、知らず知らずのうちに、中東・アフリカ発多国籍携帯オペレーターをローミング利用する、ということになってまいります。。。

 次回は、「都市交通とICT」を取り上げたいと思います。
今後も引き続き、さまざまなテーマをお伝えしてまいりたいと思いますので、ご要望があればぜひお寄せください。

この記事は、社外の方より投稿いただいたレポートです。 内容に関して情報通信総合研究所は責任を負うものではないことをあらかじめご了承ください。

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