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2009年4月掲載 |
前回の記事で書いたように、本連載では「クラウドコンピューティングの潮流」と題して、クラウドコンピューティングのビジネス動向を追っていくこととする(本稿における「クラウドコンピューティング」の定義は、前回の記事を参照のこと)。
今回は、その第1回目として、クラウドコンピューティングビジネスの現状を押さえ、この分野が今後、さらに発展していくためには何が必要なのかのヒントを示す。 クラウドコンピューティングビジネスの現状クラウドコンピューティングビジネスの現状としては、さまざまな会社から市場予測が出ており、そのどれもが今後も大きく成長していくことを示している。 たしかに、今後、大きな成長が見込める分野ではあるが、一方で、国内においては、まだまだこの分野が十分に浸透しているとは言い難い状況にある。実際、弊社で実施したユーザアンケートの結果を見ても、「クラウドコンピューティング」という用語が知れ渡る以前から話題になっていた「SaaS」でさえも、まだまだ認知度が低いという結果が出ている。 また、ハイテク分野のマーケティング手法を提唱し、『キャズム』や『ライフサイクルイノベーション』などの著作でも知られるジェフリー・ムーア氏は、Web上のインタビュー記事(※1)において、初期市場を超えたサービスはセールスフォース・ドットコム社ほかの数社のサービスのみであり、それらのサービスも広く採用される段階には至っていないと述べている。 ※1:「キャズムを超えるエンタープライズITとは:企業IT部門の変革を支援するエンタープライズ実践情報サイト EnterpriseZine」参照 ホールプロダクトという考え方それでは、SaaS、あるいはクラウドコンピューティングがこのような状況を乗り越えるためには何が必要なのだろうか。 それを考えるためのヒントとして「ホールプロダクト」という考え方がある。先ほど紹介した『キャズム』によると、ホールプロダクトとは「顧客の目的を達成するために必要とされる一連の製品やサービスのこと(※2)」だとされている。 ※2:『キャズム』(川又政治訳、翔泳社) このホールプロダクトは、以下の4つの構成要素から成り立っている。
この考え方を、SaaSに当てはめてみると、それぞれ以下のような考慮点を例として挙げることができるだろう。
クラウドエコシステムの形成では、この「ホールプロダクト」という考え方を実現するために、SaaS、あるいはクラウドコンピューティングプロバイダーは何を検討すれば良いのだろうか。 それは、自社を中心としたエコシステムの形成である。例えば、先ほど例として挙げたSaaSビジネスにおけるホールプロダクトを考える際には、図で示したようなバリューチェーンを意識する。その上で、自社がどの段階に位置し、自社の付加価値を高めるためにはどのようなプレイヤーと、どのような協力をしなければならないのかを検討するのである。 もちろん、クラウドコンピューティングが今後ビジネスとして発展していくには、他にも考慮すべきことがたくさんある。その中でも、今回はユーザにとっての価値という点から、検討すべきことを紹介した。 次回からは、実際のプレイヤーの事例も踏まえながら、クラウドコンピューティングの潮流を読み解いていきたい。 |
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