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Enterprise Evolution
2009年4月掲載

IT産業でみるソーシャルイノベーションの潮流

 世界的にIT機器や社会の省エネという考え方で、グリーンITは推進されている。米国環境保護局(Environmental Protection Agency)では、主にITを利用することで、(1)どのように環境は保護されるか、(2)どのような機器が環境にやさしいか、(3)どのようにして、エネルギー効率を上げることができるかということにフォーカスしている。エネルギー循環効率を上げ、環境にやさしい機器を推進することで、機器や社会の省エネが推進されるという。

 企業は、気候変動や地球温暖化等の環境問題とエネルギーコスト削減を目的に、グリーンITを推進すると言われている。当然のことながら、米オバマ政権のグリーン・ニューディール政策も背景にはあるが、IT産業を中心に、企業は膨大な情報を維持し、処理するため、サーバやデータセンターを増築し続けている。年々トランザクションは増加し、エネルギーコストも増大している。つまり、エネルギー消費の効率化とエネルギーコストの削減に、効率的な運用が必要となってきている。

 しかしながら、IT産業ではグリーンITが推進されているが、近年、世界的に注目されているのが、ソーシャルイノベーションという考え方である。企業が考える社会的責任の範疇を超え、地球規模での社会的課題をいかにして解決していくか。気候変動や地球温暖化等の環境問題は当然のことながら、各国が抱えるエネルギー資源枯渇、少子高齢化や食糧危機、発展途上国が抱える貧困問題など様々な社会的課題に取り組むことが企業に求められてきている。

 本稿ではソーシャルイノベーションに積極的に取り組む姿勢を見せているGoogleとIBMについて、紹介する。

(1) 情報技術(IT)とエネルギー技術(ET)の融合をめざすGoogle

 Googleは設立当時より、社会的ミッションを持ち、世界の情報化格差を解消するという壮大なミッションを掲げている。先進国、新興国、発展途上国との情報格差をなくすことで情報化社会を創造するという。2008年1月、Google.orgを通じて、環境問題や貧困問題など地球規模での社会的課題解決を目指し、今後5年から10年の社会貢献モデルを発表している。当時の考え方として、社会貢献モデルとして、CSRの範疇と考えられていた。しかしながら、2009年2月、Googleはスマートグリッド事業参入(Google PowerMeter)を発表した。家庭で利用する機器の電力量をスマートメーターを利用して測定し、iGoogleガジェットを利用して表示されるという。試作段階ではあるが、今後市場拡大が予想されるスマートグリッドアプリケーション事業への早期参入をめざすことが考えられる。

(2) よりスマートな地球創造をめざすIBM

 2008年11月、IBMはコーポレートビジョンとして、Smarter Planetを発表している。世界はますます「スモール化」や「フラット化」が進んでいる。ビジネスや社会をより効率化し、スマートになることで、よりよい世界に変わっていくと考えている。つまり、交通や環境、エネルギー、医療等の地球規模の多様な社会的課題を、顧客がよりスマートに、そして地球がよりスマートになることで、解決していくという。今後、このSmarter Planetをいかにして実現していくか。グローバルに展開する世界各国のソリューション・センターや研究施設と連携し、「スマート」なソリューションやテクノロジーで、IBMは顧客価値の創造を加速させ、その先にある地球をスマートにしていくことが考えられる

 今回取り上げた2社に限らず、IT産業のソーシャルイノベーションに向けた取組みが始まっている。IT産業のさらなる創造は、エネルギー産業等の他の連携することで、さらなる成長が期待できる。

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