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1998年1月掲載

ビッグバンの時代を迎える電気通信事業

  電気通信事業もビッグバンの時代を迎えようとしている。NTTの再編成方針がはっきりしたのを契機に市場の垣根が崩れ、国内国際一貫サービスをワンストップ・ショッピングで提供しようという動きと、それを睨んだ業界再編の流れが一気に高まった。

 ビッグバンの第2は外国事業者の参入である。今年からはNTT を除いて外資規制が撤廃され、外国のメガキャリアーが世界No.2の日本市場に本格的に参入する。最初に戦場になるのは, 国際公専公が自由化される国際通信市場だが、本当の狙いは大口ユーザ、とくに多国籍企業のグローバル通信網の獲得にある。

 ビッグバンの第3は市場の革新である。電話の時代がピークを過ぎ、今はワイヤレスのウエイトがどんどん高まっている。携帯電話などは、どこでもアクセスできるという便利さのほかにパーソナルな通信手段なので、一家に一台というよりは一人に一台がベ-スに なる。今後5 年位で固定網電話を追い抜く可能性が強い。

 次は、有線と無線を一体化するサービスの時代ではないか。われわれはすでに、複数の場所(会社、自宅、外出先)で複数の通信手段( 電話、携帯電話、ファックス、音声や電子メール、インターネットなど) を利用して仕事をしている。これからは、これらの通信手段をシームレスに接続して、必要な情報を即座に入手して活用できる仕組み作りが、競争の決め手になるだろう。

 次の次は何か。確定的なことを言うのは難しいが、IPネットワークの時代ではないか。すでに、ビジネスの分野ではインターネットは欠かせない通信手段になっている。21世紀初頭には電話の通信量を上回るだろう。現在は、インターネットと同じ技術(IP プロトコル) を利用して、企業のもつデータベースとインターネット上の情報資源をシームレスにリンクするイントラネットに関心が集まっている。最近では、インターネット・バンキング、インターネット・コマース、インターネットEDI などに関心が広がった。
ベストエフォート型のインターネットにセキュリティー、帯域保証などの課題も多いが、将来は基盤的通信網としての役割を担うのではないか。

 ビッグバンの第4は融合である。デジタル革命で通信、放送、コンピュータ産業が融合し、新しい市場が創造されようとしている。それを担う広帯域の経済的通信手段として、CATV、通信衛星、20〜30GHz 帯の無線通信、xDSLなどが見直されるだろう。

 さて、情報通信ビッグバンの時代に事業者はどう対処しようとしているのか。
通信自由化が始まって12年、日本の通信事業者は護送船団方式で庇護されてきた。料金も下がり競争も進んだように見えるが、競争は手足を縛られて動きの悪いNTT が相手で、好業績は実力によるものではなかった。ここにきて業界再編に取り組んでいるが、これで将来への展望が開けるのだろうか。NTT 以外は、グローバル企業として活躍するには経営規模も中途半端だし、現状ではR&D の力も不足だ。市場の評価は株価の推移に現れている。業界再編は、「失速」と言われるPHS などの移動体通信事業にも広がり、外国事業者も絡んで第 2幕が始まるのではないか。

 第2に、内外通信市場で競争が本格する。TTNet が、NTT の市内交換機に直接相互接続して提供する「東京電話」を年明けから始めているが、市内を含むすべての距離段階で競争相手より安いというのが売りだ。日本の通信業界も、新規参入事業者同士も熾烈に競争する新しい段階に入ろうとしている。

 国際市場では、98年から国際公専公が始まり、日本発信の通信に外国勢が一斉に参入し、料金も一気に下がるだろう。日本の通信事業者も、グローバル市場に進出するか、国内のニッチ市場に特化するか、生き残りを賭けた選択を迫られるだろう。

 第3は、インターネットなどの上で展開される新しい融合型サービスの開発で、技術、アプリケーションの両面から競争が激しくなる。これはグローバル市場での競争であり、放送やコンピュータ、情報家電などの産業間の競争でもある。開発力のない通信事業者はどこからも相手にして貰えない、という時代が目の前に迫っている。

弊社社長 本間 雅雄
編集室宛>nl@icr.co.jp
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