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1998年10月掲載 |
激化するグローバル競争と国内キャリアの生き残り戦略1.国際通信市場の底流にパラダイム・シフト 通信市場が大きく変化している要因の一つは需要サイドにある。企業活動のグローバル化が進んだ現在では、経営に必要な情報をリアルタイムに流通させ、スピード経営を実現しなければ、企業は競争力を維持できない。多国籍企業に流通する情報の大部分は音声ではなくデータだが、インターネット技術の高度化によって音声、データ、画像情報の統合へと向かいつつある。企業の求める情報を必要な形態で、シームレスにワンストップ・ショッピング・サービスとして提供していくのが通信市場の一つの流れだ。 一方、規制環境の変化としては97年2月にWTO(世界貿易機構)で通信自由化が合意され、今年5月に批准された。これまでも先進諸国では規制緩和による競争原理の導入、民営化、外資規制の撤廃・緩和がすでに進展しているが、WTOの合意により全世界的な流れとして一般化した。これが現在の通信市場で起こりつつある動きの底流にもなっている。 2.グローバルIP時代にらむAT&T、BT連合の構想 一般的なグローバル・アライアンスのねらいは、シナジー効果の追求にある。具体的には、戦略上欠落している技術、顧客ベース、地域、設備面などを補うケースや、規模と範囲の経済の追求を達成する場合、あるいは統合により重複部分を効率化する場合のほか、多くの顧客が存在する地域での事業展開、資金調達を容易にするメリットなどがある。これまでの通信事業者同士のグローバル・アライアンスは主にグローバル・カバレッジ重視型であり、AT&TとBTの場合もやはりその傾向が強い。 こうした点から見て、AT&TとBTが提携する意義は、(1)大西洋を挟んで約50%のシェアを占める圧倒的なグローバル・カバレッジ、(2)英語圏同士で比較的文化が共通する企業提携、(3)比較的成功したグローバル・アライアンスのコンサートの資産の継承、(4)50%対50%の資本構成、という点から成功する可能性が高いものの、両社のアライアンスが支配力を持つという保証はない。巨大通信会社同士が組んでも安泰だと言えないのが通信市場の特性だ。 3.通信事業は二極化に収斂、選択迫られる国内キャリアグローバルな競争が進展する中で、日本の通信事業者が超えるべき課題は、第2次情報通信改革の規制緩和の枠組みによる経営環境の変化への対応であり、さらなる規制緩和への対応だ。コンピューター産業や外資系事業者の参入で競争激化による料金の低下は避けられないだけでなく、ニーズの変化と技術革新への対応が必須の条件だ。具体的には、(1)コスト削減による効率的な経営へのシフトと新技術の導入、設備コスト、販売および管理費コストなどの削減、(2)新市場、新サービスの開発、とりわけビジネス活動向けの電子商取引やウェブベースのEDI、インターネットVPN、インターネット・コールセンター、ポイント・ツー・マルチポイントの統合サービスなどを含めたネットワーク・ソリューション・ビジネスへの取り組み、(3)回線交換からIPネットワークへの転換をいつどのように実施するか、(4)スケールと品揃えを誇るグローバル・キャリアを目指すか、またはサービスに特徴を持たせたニッチ市場に特化するか、事業展開の二極化に対応した戦略の見直し、の4点で選択を迫られる。 国内ではある程度の国際、長距離、地域の事業区分を超えたアライアンスが進んでいるが、今後、海外戦略を見据えながらどうアライアンスを組むか経営戦略の岐路に立たされている。 「テレコミュニケーション」(1998年10月号)『座談会』における基調スピーチより。 リックテレコム社のご好意により転載させていただきました。 |
取締役相談役 本間 雅雄 編集室宛>nl@icr.co.jp |
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