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1999年3月掲載

APEC第19回電気通信WG宮崎会合の焦点は何か

 APEC(アジア太平洋経済協力会議)第19回電気通信WG会合が3月8日から13日までの6日間、宮崎市で開催される。
 本会合には香港、台湾を含む21の国、地域から電気通信関係者約350名が参加し、各分科会等において活発な議論が行われる予定である。
 電気通信WGは、これまで半年毎に18回開かれてきており、第18回パプアニューギニア会合に続く第19回宮崎会合は日本での2回目の開催となるものである。
以下、今回の宮崎会合において提起されている新しい課題と会議の焦点について述べる。
 なお、第19回電気通信WGの議題等については次のWebサイトを参考にされたい。
 http://www.apii.or.kr/telwg/19tel/19tel-frame.html
 http://www.mpt.go.jp/apec-tel19

1.APECの電気通信WGで議論されていること

 APEC電気通信WG(Working Group)では、電気通信に関する人材養成、電気通信インフラ整備、電子データ交換、国際付加価値通信サービス、機器認証および相互承認等の活動に取り組んでおり、それらの活動を具体的に進めていくために自由化SG(Steering Group)、ビジネス円滑化SG、国際協力SG、人材養成SGの4つのSGが設置されている。
 APEC電気通信WGにおけるこの1年間の議題はいづれのSGにおいても電子商取引に関するものが目立って多くなってきている。APECにおいて電子商取引に関する広範かつ具体的な検討が行われるようになったのは、1997年11月の第9回APEC閣僚会議でバンクーバ宣言が採択され、 電子商取引についての広範な研究を進めていくことが宣言されてからである。バンクーバ宣言以降の1998年の1年間の電気通信WGはビジネス円滑化SGを中心に電子商取引に関する議論が活発に行われた年であったといってよいだろう。

2.新たな課題

 −インターネットガバナンスとインターネット回線費用負担−
 公開鍵認証フレームワーク、中小企業電子商取引調査、電子商取引国際相互接続実験プロジェクト等の個別課題の検討とともに第19回宮崎会合では、新たな課題も提起されてきている。前回のパプアニューギニア会合において日本が議長国である自由化SGの検討課題とされた、通信・コンピュータ等の融合化に関する政策課題およびインターネットガバナンス、それに新たにタスクフォースが設置されることになった、インターネット回線費用負担の問題である。
 世界的なネットワークに成長したインターネットをどこが主体になり、どう規制していくかという問題と、コンテンツが米国に集中し米国中心で構築、運用されているバックボーンネットワークの実態を把握し、客観的なデータに基づき新しい費用負担のルールを提案していこうとする動きである。

3.宮崎会合の焦点−インターネット回線費用負担−

 インターネット回線費用負担の問題は、アジア地域におけるインターネット関連事業者団体であるAPIAを初め、Telstra、Singapore Telecom等のキャリアからAPEC、OECD等の国際機関会合、セミナーに機会あるごとに提起されている問題であり、第18回会合でシンガポール政府から提案が行われ、今回の宮崎会合でのタスクフォースの設置が認められたものである。
 米国を経由するバックホーリングの接続形態のもとで、国際回線のフルコストとポート接続料金が米国に接続する米国以外の事業者により負担させられている現在のインターネットファンディングモデルを、アジア太平洋地域のインターネットインフラの整備という観点から見直すべきであるという問題提起である。宮崎会合に先立ち、本年1月にはKDDを初めアジアの8キャリア連名の声明書も発表されており、宮崎会合でのこれらアジア各国と米国との間での激しい論戦が予想されている。

4.電子商取引をめぐる国際会合の動き

 APECだけでなくWTO、ITU、OECD等の主要国際機関会合においても電子商取引に関する議題が積極的にとりあげられるようになってきているとともに、そこでの議論も総論段階から関税、知的財産権、消費者保護等の個別課題の検討に移ってきている。
 電子商取引の普及に伴い、次から次へと新しい課題が提起されることが予想されるが、国際機関会合におけるそれら問題の処理能力にも自ら限界があるだろう。
 技術進歩のスピードが速く、競争の激しい電子商取引の分野は議論や政策調整が行われている間に現実の方がはるかに先に進むという実態から考えれば、インターネット回線費用の問題のような各国の利害が絡む問題は積極的に国際機関会合の場に持ち込まれ、一方ドメインネームの管理・運用やセキュリティ、認証等のより技術的な課題は非営利の民間組織、標準化フォーラム等により実質的な審議が行われていくとみるのが現実的だろう。
 国際会合において各国の利害調整が行われることになれば、これまでにも増して業界を初め関係諸団体、省庁間の緊密な連携と意見調整が必要になり、国際会合も従来のプレゼンテーションやセミナー中心から積極的なロビーイングの場へと変わっていかざるを得ないのではなかろうか。

グローバルシステム研究部長 平川 照英
e-mail:hirakawa@icr.co.jp
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