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Global Perspective 2011
2011年10月7日掲載

ロンドン博物館:NFCによる展示物説明〜携帯電話は新たな「知のツール」になるか

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2011年8月、ロンドン博物館はNokiaの協力によって、NFC対応携帯電話を読み取り機にかざすことによって、展示物の説明を読むことができるサービスを導入した。展示物の紹介の他にも、カフェやショップでのクーポンの入手、チケット予約、会員登録も可能である。さらには、Twitter、Facebook、Foursquareとも連携しており、展示品に対してフォロー、「Like!(いいね)」、博物館へのチェックインもできるようになる。

 Nokiaは、2011年夏に、「NFC hubを開設したばかりである。またNokia携帯電話向けの「Ovi Store」では、ロンドン博物館のアプリケーション「Soundtrack to London」もダウンロード可能だ。
Nokiaは、2011年8月に「Symbian Belle OS」を搭載したNFC対応携帯電話を3機種リリースした。Nokiaは2011年2月にマイクロソフトと提携を発表し、今後はWindows Phoneを主軸にしていき、Symbianについてはアクセンチュアに譲渡することを決定したばかりであるが、そのNokiaから新たにNFC対応携帯電話機が登場したことも注目に値する。

 もちろん、このロンドン博物館でのサービスはNFC対応端末であれば、Nokiaの携帯電話端末以外でも利用可能である。

 従来、博物館や美術館では、入場時にイヤホンを貸与してくれて、展示物や作品の前でその説明を聞くというのが多い。今後はNFC対応の携帯電話をかざして説明を読むというのが主流になってくるのであろうか。

NFCとはそもそも「Near Field Communication」の略称で、ICカードや携帯電話などの機器にかざすだけで情報をやり取りできる13.56MHzの周波数を利用する10cm程度の近距離無線通信技術の規格のことである。

 ついつい「携帯電話とNFC」というとモバイルペイメントにばかり目が行ってしまいがちだが、このようなシンプルかつ有益な活用法があることに改めて、NFCの基本を気付かされる。そして、ペイメント(決済)よりも導入のハードルが低く利便性が高い。

 一方、来場者の全員がNFC対応携帯電話を持っているとは限らない。今後はNFC対応携帯電話を持っていない人たちとの「デジタル・デバイド」の解消に向けた博物館の取り組みにも期待したい。まして高度な携帯電話を苦手とするお年寄りや、ハイエンド端末を持っていない若者らへの配慮も必要であろう。

 NFC対応携帯電話の保有と操作可否が、「知の格差」を生まない検討は必要になるであろう。

 今後も世界の博物館や美術館で、このように展示物の説明を携帯電話上で説明を表示するというのは増加してくるのではないだろうか。

 携帯電話機は、「電話として話す」「ネットにつながる」から、更に「知のツール」の1つになっていくことだろう。

 今回の博物館もリアルとの連携が重要である。NFCはリアルとの連携が重要であることは言うまでもない。但し、博物館や美術館に行って携帯電話に表示される説明に満足し、携帯電話の画面ばかりに集中することなく、リアルな歴史的展示物、芸術作品の鑑賞を忘れることのないように。

NFCのさらなる活用方法や広がりに今後も期待していきたい。

【参考動画:ロンドン博物館でのNFC対応を伝えるニュース(2011年)】

【参考動画:ロンドン博物館でのNFC対応携帯電話による展示品説明(2011年)】

*本情報は2011年9月27日のものである。

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