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Global Perspective 2011
2011年10月13日掲載

ブラジルで大人気のGoogle傘下のSNS「Orkut」はどこに向かうのか?

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2011年6月28日、GoogleがSNS「Google+」をリリースしたことは周知の事実であろう。そして開始1ヶ月後には、2,500万ユーザを獲得したと報じられている。現在もなおユーザ数は増加している。 しかし、GoogleにとってSNSは、これで4度目の挑戦である。2004年に開始した「Orkut」、2009年に発表したが2010年には閉鎖してしまった「Google Wave」、2010年2月に開始した「Google Buzz」である。今回の「Google+」は世界最大のSNSであるFacebook対抗を意識していることもあり、Googleの本気度が感じられ、非常に好調な滑り出しである。

 今回は、その中でもSNS業界でも老舗であるGoogle傘下の「Orkut」に注目してみたい。

 Orkutには全世界で約1億人のユーザがいる。そしてそのうちの半分の約50%がブラジルで、約20%がインド、約17%がアメリカである。この3カ国でOrkutの全ユーザの87%(約8,700万人)を占めている(図1)。またユーザの年齢層は50%以上が18歳から25歳の若者である(図2)。

(図1)Orkutユーザ国別比率
ブラジル 50.60%
インド 20.44%
アメリカ 17.78%
パキスタン 0.86%
パラグアイ 0.44%
イギリス 0.40%
ポルトガル 0.36%
アフガニスタン 0.35%
日本 0.34%
カナダ 0.33%
(図2)Orkutユーザ年齢比率
年代 ユーザ比率
18-25 53.48%
26-30 14.99%
31-35 6.68%
36-40 4.15%
41-50 4.14%
50+ 3.47%
出典:Orkut発表の公式統計データをもとに筆者作成(2011年9月現在)

 Orkutの公式ブログはブラジルの公用語であるポルトガル語であり、頻繁に更新されている。一方で英語版公式ブログの方が"en"(English)がついており、更新頻度もポルトガル語版に比べて少なく、サブブログのようである。また、ポルトガル語のブラジル人向けOrkut音楽・エンターテイメントサイト「Orkut Ao Vivo」やサッカーサイト「Orkut Futebol」などがあり、ブラジルでは非常に人気がある。もはやブラジル人のための「ローカルSNS」と言っても過言ではない。

 ところが、2011年9月19日に調査会社eMarketerが発表したデータによると、ついにブラジルにおいても、Facebookがリーチ率においてOrkutを抜いたのである。同社では、今後もこの傾向が続き、Facebookのユーザ数は拡大していくと予測している。

 2011年9月現在、Facebookは全世界で約7.6億人のユーザがいる。Socailbakersの統計によると、2011年9月現在、ブラジルでのFacebookユーザ数は約2,800万人で世界7位である。さらに着実にユーザ数を増やしている。

 SNSは登録して利用しているユーザ数の多さが勝負である。SNSという「場」を通じて、どれだけ多くのユーザが登録し、知人・友人と繋がっているかが重要である。全世界的に見ても、Facebookの方が圧倒的にユーザ数が多いので、そちらに流れるのは自然の理である。

 最近は、Facebookを通してメッセージのやり取りをするから、海外出稼ぎ労働者が多い国の人たちにとっては国際SMSを利用するよりも利便性も高い。日本にもたくさんのブラジルからの出稼ぎ労働者がいて、ブラジル人がSNS好きなのは、以前にも執筆したので、今回は割愛する。

 さて、今後OrkutおよびGoogleはどのような戦略でSNSを展開していくのであろうか。現在のGoogleは、明らかにGoogle+に注力している。Orkutユーザから、OrkutのHelp forumには今後、Google+とOrkutがどのようになるのか?という質問も多数見受けられる。

 Facebookがほぼ独占していたSNS市場にGoogleが、4度目の挑戦でGoogle+で勝負に出てきた。ユーザにとっては使い慣れて、友人・知人の多いSNSから新たなSNSに乗り換えるのは不便なものだ。また一人で複数のSNSに登録し使い分けをするのも面倒だろう。

 今後、Orkutはどのような方向に進んでいくのであろうか。現在、多くのローカルSNSがグローバルジャイアントであるFacebook、Googleに屈している。オランダのローカルSNS「Hyves」は今やSNSよりもMVNOとして、その知名度を活用してビジネスを展開している。

 Orkutは、ブラジルのローカルSNSと呼んでも過言ではないだろう。ブラジルでは相当な知名度で、ユーザ数を抱えている。しかしOrkutはGoogleの傘下である。今後、Orkutのブランド名やユーザ資産を活用して多くのビジネス展開もできることであろう。さらにインドにも約2,000万のユーザを抱えている。(参考:2011年9月現在、インドのFacebookユーザ数は、約3,540万人で世界3位)

 Orkutは今後、どこへ行くのだろうか。「今後も共存していくだろう」、という論調が世界では多く見受けられる。PC Worldの記事によると、Google担当者は、「Google+とOrkutは別のプロダクトである」とコメントしている。OrkutはGoogleの内部でも迷走しているのではないだろうか。今後のOrkutの動向には注目に値する。

 さらに世界の他の「ローカルSNS」は、どのようにしてグローバルジャイアントであるFacebookやGoogleに対抗していくのか、その行方も注目に値する。

【参考動画:ブラジルでのOrkutの成長はまだ続くというプロモーションビデオ(2011年7月)】「O Orkut não para de crescer」は、「Orkut does not stop growing」という意味。

*本情報は2011年9月20日のものである。

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