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Global Perspective 2013
2013年1月22日掲載

東ティモール:通信市場独占の崩壊

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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2013年1月、東ティモールに新たな通信事業者が登場する。これによって、2002年の東ティモール独立から続いてきたTimor Telecomの独占は崩壊し市場に新たな競争が生まれる。

新会社インドネシア系「Telin」

インドネシアで「Telekomsel」のブランドで通信事業を提供している最大手のPT Telekomunikasi Indonesiaが東ティモールでTelinという通信事業者を新たに設立する。
 同社は900MHz、1800MHz、2.1GHz帯の周波数のライセンスを15年間契約で政府から割り当てられ、GSMおよび3Gを提供する。5,000万ドルを投資して既に30の基地局を設置、今後2013年4月までに110まで増設し、人口カバー率95%を目指す。2012年から約2万人を対象にトライアルを実施しており、2015年までには市場シェア約60%(約60万加入)を目指す予定である。

1社独占だったTimor Telecom

東ティモール独立後、固定網、移動体、インターネット通信を独占していたのは、ポルトガルテレコム系のTimor Telecomである。東ティモールでは他の新興国と同様に固定電話、ブロードバンドの利用は非常に少ない。固定電話は約3,000加入で世帯普及率は2%以下(2011年時点)である。利用者と収入のほとんどが移動体通信である。同社は保有する周波数のうち850MHzをGSMに、900MHzと2.1GHzを3Gに利用している。
 東ティモールは人口約110万で、現在の携帯電話加入者は約64万である。そのほとんどがGSMでプリペイドの利用である。独占を享受していたが、2011年8月に政府が通信市場の開放を決定し、今回Telinが参入してくることになる。

(図1)Timor Telecomが販売している携帯電話
(図1)Timor Telecomが販売している携帯電話
(出典:Timor Telecom)

新たな競争導入による市場の活性化に期待

独立後10年以上が経ち、独占だった通信市場に競争が導入される。東ティモールは人口110万人で決して大きな市場とは言えない。しかし競争が導入されることによって利用者にとってサービスプランや商品の選択肢が増えることによって市場が活性化していくことが期待される。
 現在、東ティモールのARPU(加入者一人あたりの月間売上高、Average Revenue Per Userの略称)は10ドルである。つまり東ティモールでは1人1カ月平均で携帯電話料金に10ドル支払っている。一方、隣国インドネシアのARPUは3.63ドルである(※1)。東ティモールの一社独占と通信事業者が数多く乱立し競争が激しいインドネシア市場とではARPUの差が約3倍ある。
 一社が独占している市場では利用者は好き嫌いに関わらず、その会社を選ばざるを得ない。一社しかないから提供者主導の市場形成になる。これからは競争の原理が導入され、利用者は自分の好きな方を選択できるようになる。両社は顧客を奪い合うことで競争し、市場は活性化するだろう。
 今回の独占市場崩壊と競争の導入によって、東ティモールで価格競争が行われることは必至だ。新興国ではプリペイドが主流のため、多くの人が複数枚SIMを所有しているため普及率が100%を超えている国が多い。人々は少しでも安い会社のプランを求めて頻繁にSIMカードを買っている。まもなく東ティモールの携帯電話市場もそのようになるだろう。

現代のようにグローバリゼーションが発展した社会ではコミュニケーションは重要な手段であり、それらを支えているインフラが通信である。通信の発展はグローバリゼーションに向けて重要である。東ティモールの通信市場に競争が導入され、「安くて使いやすい通信」を簡単に入手できることによって人々の生活が発展し経済が成長すること期待している。

(参考)

【参考動画】Timor Telecomの広告

*本情報は2013年1月20日時点のものである。

※1 Jakarta Globe(2013), “Telkom Taps East Timor Market,” Jan 19,2013  http://www.thejakartaglobe.com/corporatenews/telkom-taps-east-timor-market/566249
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