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Global Perspective 2013
2013年10月9日掲載

新たな脅威としてのサイバーセキュリティにおける日米連携

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年10月3日、東京で日米安全保障協議委員会(「2+2」)等が開催された。日本側からは岸田外務大臣、小野寺防衛大臣が、アメリカ側からはケリー国務長官とヘーゲル国防長官が出席した。「2+2」の開催は2011年6月以来で東京に日米の外務・防衛4閣僚が揃って「2+2」が開催されたのは初めてである。今回の会合においては、厳しさを増すアジア太平洋地域における安全保障環境を踏まえ、中長期的な日米安保協力や在日米軍の再編等について協議されて同発表が発出された(※1)。日本と地域を取り巻く安全保障環境、北朝鮮による核・ミサイル計画の着実な進展、海洋での力による現状変更の試み、サイバーや宇宙空間における破壊活動等の様々な課題に直面し、厳しさを増しているということを日米で確認した。その中でアジア太平洋地域重視の取組みに加えて新たな戦略的領域としてサイバースペースにおける防衛が日米同盟の新たな焦点となり、サイバー防衛政策作業部会の実施要領に署名された。サイバーや宇宙についての日米協力を関係省庁横断的に具体的な形で進めることで一致した。

「日米安全保障協議委員会共同発表:より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」の中でのサイバーセキュリティ

2013年10月3日に発表された「日米安全保障協議委員会共同発表:より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」の中でサイバースペースにおける日米での「サイバー空間における協力」を以下に記載する(下線は筆者)(※2)。

2013年5月に開催された第1回日米サイバー対話は、日本及び米国が,国際的なサイバー協議の場において、特にサイバー空間における国家の責任ある行動に関する規範の適用を始めとする、共通の目標を共有していることを確認した。閣僚は、サイバー空間の安全で確実な利用に対する挑戦に対処するに当たり、民間部門と緊密に調整する必要があることを強調した。特に、閣僚は、サイバー空間における共通の脅威に対しては政府一体となっての取組を促進する必要があることを認識した。閣僚は、日米それぞれのサイバー能力及び自衛隊と米軍との間の相互運用性の向上を伴うサイバー防衛協力の強化を促進することを任務とする新たなサイバー防衛政策作業部会(CDPWG)の実施要領への署名を歓迎した。このことは、サイバーセキュリティに関する政府一体となっての取組に資するものでもある。

サイバースペースにおける日米での「共通の目標」とは

サイバースペースとは情報通信技術を元に構成された人工空間であり、インターネットが民間や個人レベルにまで普及して始めた1990年代後半から登場して、現在ではそのサイバースペースに人間のあらゆる活動が依拠している。そして国家の安全保障の基盤を支えるにあたってサイバースペースの防衛をすることは急務である。日米同盟の枠組みの中にサイバースペースにおける「共通の脅威」からの防衛が組み込まれた。日本とアメリカがサイバーセキュリティの分野で連携していくことは、日本のサイバースペース防衛にとっても1つの抑止力になることが期待される。

サイバースペースにおける「共通の目標」がどこまで日米で同じものであるかどうかについては今後両国間で仔細な協議が行われることだろう。「共通の脅威」に対して協力すべきところや支援してもらうところは連携を強化すべきだろう。一方で、アメリカにはアメリカのサイバースペースの運用方法があり、日本には日本の運用方法があるはずだ。日米でのサイバースペースにおける「共通の目標」とは何で、それがどこまで日本と日本人にとって受け入れられるものであるかどうかを注視していく必要があるだろう。

*本情報は2013年10月5日時点のものである。

※1 外務省(2013年10月3日)「日米安全保障協議委員会(「2+2」閣僚会合)等の開催」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page4_000229.html

※2 「日米安全保障協議委員会共同発表:より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」(仮題)(2013年10月3日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000016027.pdf

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