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Global Perspective 2013
2013年3月19日掲載

新興国での3G普及率とWi-Fiからのインターネットアクセス

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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日本では携帯電話、スマートフォンは3GまたはLTEのネットワークで利用することが常識である。そして多くの利用者は携帯電話でのデータ通信は3GまたはLTEを利用しており、オフロードにWi-Fiを活用している。ところが、新興国を中心とした海外ではスマートフォンでのインターネットへのアクセスは急増しているものの、3Gの普及率はそれ程高くない。本稿では3Gの普及率とWi-Fiからのインターネットアクセスについて考察していきたい。

海外での3G普及率

以下にアジアや世界の新興国の携帯電話普及率と3Gの普及率を掲載する。日本のように携帯電話やスマートフォンを購入して利用するには、ほぼ全てが3GまたはLTEという環境ではない。 携帯電話普及率は100%を超えている国が多い。海外ではプリペイドでの利用が主流であり、ほとんどの人がプリペイドで利用している。つまり1人で複数枚のプリペイドのSIMカードを保有していることから携帯電話普及数が人口を超えることが多い。
 そして3G普及率の場合、3Gネットワークで利用できるSIMカードが販売された数がカウントされていることから、3Gの普及率は携帯電話の普及率と比すると高くない。

(表1)新興国での携帯電話普及率および3G普及率

(表1)新興国での携帯電話普及率および3G普及率

(当局発表資料等を元に筆者作成)

スマートフォンでのネットへのアクセスはWi-Fiから

一方で、3Gの普及率が高くない新興国においてもスマートフォンは広く普及し、インターネットにもアクセスしている。3Gの普及率が低いからと言ってスマートフォンが利用されていない訳ではない。
 そしてこれらの国々ではスマートフォンでのインターネットへのアクセスにはWi-Fiを利用することが多い。例えばインドネシアでは、3Gの普及率は16.8%だが、多くの人がスマートフォンを利用しインターネットにアクセスしている。彼らの多くはWi-Fiを利用している。町のあらゆるところに無料または低価格でWi-Fiにアクセスできるスポットがある。コーヒーショップやコンビニエンスストア、マクドナルドやバーガーキングのようなチェーン店ではWi-Fiに無料でアクセスできることから若者が多く集まっている。

データ通信を利用する際は3GのプリペイドまたはWi-Fiプランに加入する。そしてプリペイドのデータ通信の場合、残高を気にしながらデータ通信をしなくてはならない。それならば、無料(または低価格)でWi-Fiが利用できるところに行って、好きなだけ心おきなくスマートフォンでインターネットにアクセスする方が効果的である。
 さらに、制御信号やアプリのアップデートで通信費用がかかる(残高が減る)のは嫌だという心理が働くため、そのような通信は無料Wi-Fiスポットでやるもの、と思っている人も多い。これはプリペイド主流の新興国で共通している。日本のように、多くの人が3Gネットワークに常時接続して動画見ていることも少ないので、データオフロード対策も日本や先進諸国ほど進んではいない。

最近は現地の通信事業者も低価格なデータプランを提供している。そういうプランに入る人も増えている。Wi-Fiルータを持っている若者も多く見かけるようになった。しかし、東南アジア諸国の若者はWi-Fiが無料で利用できるコンビニやらコーヒーショップに集まって、スマートフォンやらラップトップを操作している。深夜のコンビニや24時間営業のファーストフードでは、そういう若者で溢れている。また大学などでは学内のあらゆる箇所でWi-Fiアクセスが可能なため、学生らが1日中スマートフォンやラップトップを操作している姿を見かける。

携帯電話の普及率を見ての通り、1人でスマートフォンもフィーチャーフォンも複数持参している人も多い。端末は中古市場が盛況で、中古のスマートフォンも大量に流通している。そのためスマートフォンの保有は多いが、その端末に入れているSIMは電話とSMSのみプラン(2G)で、ネットにはWi-Fiが無料(または低価格)のコンビニやコーヒーショップでアクセスしている。最近では、メッセンジャーアプリのWhatsAppやLINEが流行っているが、送信したメッセージがすぐに読まれていることは少ない(LINEは「既読」になるからそのことが確認できる)。Wi-Fiスポットに来た際に、それらメッセージが読まれて返信が届く。なお緊急時の連絡は電話かSMSを利用している。

通信事業者のライバルはWi-Fi

ここまで見てきたように3Gの普及率が低いからと言って携帯電話、スマートフォンでインターネットにアクセスしていない訳ではない。Wi-Fiが無料で利用できるスポットへ行き、そこで多くの仲間らと一緒に利用していることが多い。現地のモバイル通信事業者にとっての競合は、他社のモバイルネットワークよりも無料や低価格で利用できるWi-Fiになってきている。町のあらゆるところに無料や低価格のWi-Fiスポットがあったら、そこに行ってしまう。店にとってもWi-FIを無料または低価格で提供することは来店してもらうための重要な要素になっている。また長時間いて回転率が悪いと思うかもしれないが、長くいると例えばコーヒーだけでなくケーキやバナナなど他の商品も購入する人も多い。また時間制を設定して商品を購入した客にのみWi-Fiにアクセスできるパスワードを配っている店もよく見かける。
 そのようなスポットに集まりWi-Fiでスマートフォンからインターネットにアクセスする若者らを、いかに自社の3Gネットワークを利用してデータ通信をしてもらうかが現地の通信事業者にとって今後は重要になってくるだろう。モバイル通信事業者にとってWi-Fiはデータオフロードではなく、競合ネットワークなのである。

(図1)コンビニエンスストアや大学の構内で
スマートフォンやラップトップを利用している若者。

(図1a)コンビニエンスストアや大学の構内でスマートフォンやラップトップを利用している若者 (図1b)コンビニエンスストアや大学の構内でスマートフォンやラップトップを利用している若者

(図1c)コンビニエンスストアや大学の構内でスマートフォンやラップトップを利用している若者

(図1c)コンビニエンスストアや大学の構内でスマートフォンやラップトップを利用している若者

(図2)中古携帯電話売り場のほとんどがスマートフォンになっている。
フィーチャーフォンとスマートフォンを両方使い分けている。フィーチャーフォンを電話・SMSに利用して、スマホはWi-Fiでネットにアクセスしていることが多い。
中古スマホは電池の持ちが悪いから電源が利用できる店では充電しながら利用している人もよく見かける。

(図2a)中古携帯電話売り場のほとんどがスマートフォンになっている。 (図2b)中古携帯電話売り場のほとんどがスマートフォンになっている。

(筆者撮影)

*本情報は2013年3月17日時点のものである。

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