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Global Perspective 2013
2013年4月19日掲載

次世代新興国「MINT」の情報通信事情

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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かつて新興国の代名詞は「BRICs」と呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国だった。それらに次ぐ新興国の代名詞として色々な「造語」が登場している。今回は「MINT」の4カ国を取り上げる。他にも「CIVETS」(コロンビア、インドネシア、ベトナム、エジプト、トルコ、南アフリカ)などがある。このような用語は投資会社やメディアを中心に作られた用語であるが、いずれにせよ次世代の新たな市場として注目されている国家を集めて呼びやすくしているにすぎない。
 「MINT」(メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコ)に関する経済成長や国家の状況に関するレポートは国内外の様々なメディア、レポート、学術研究で取り上げられているので、本稿では情報通信分野の動向を記していきたい。

「MINT」

今回取り上げる「MINT」は、メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコの4カ国である。日本でも2009年にパナソニックが拡販に取組む新興国市場として、「MINT」市場をあげたことを記憶している人もいるのではないだろう(※1)。つまり「MINT」は最近になって登場したわけではなく数年前から注目されていた。まずは「MINT」各国の状況を記す。

(表1)「MINT」各国の状況

(表1)「MINT」各国の状況

出典:公開情報を元に筆者作成(※2)

「MINT」の情報通信状況

以下に「MINT」各国の情報通信の状況に関するデータを記す。

(表2)「MINT」の情報通信産業状況

(表2)「MINT」の情報通信産業状況

出典:公開情報を元に筆者作成(※3)

若い人口層
 今回取り上げる「MINT」は、メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコの4カ国である。日本でも2009年にパナソニックが拡販に取組む新興国市場として、「MINT」市場をあげたことを記憶してい「MINT」の国々は平均年齢も若い。ナイジェリアは17.9歳と10代だが、他3ヶ国も20代である。60歳以上の人口も10%未満である。収入は決して多くないが、携帯電話やスマートフォン、Facebookに代表されるソーシャルメディアへの関心は非常に強い。また収入が決して多くないが人口層が厚い若者をターゲットにして、各社が様々なサービスや料金プランを提供している。また携帯電話やスマートフォンもコモディティ化しており、地場メーカの端末や中古のスマートフォンも人気がある。Appleやサムスンのスマートフォンは「若者たちの憧れ」の対象である。テレビは保有してないが、携帯電話を保有しているという人も多い。
圧倒的なプリペイド比率と急成長する携帯電話
 今回取り上げる「MINT」は、メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコの4カ国である。日本でも2009年にパナソニックが拡販に取組む新興国市場として、「MINT」市場をあげたことを記憶してい「MINT」各国の携帯電話の主流はプリペイドである。使いたい時にSIMカードを購入して利用する。1人で複数枚のSIMカードを持っていることも多い。通信事業者も年中キャンペーンを行っていて、価格競争が激しい。トルコ以外では90%以上がプリペイドで利用している。これは「MINT」以外の新興国ではよく見られる現象である。

携帯電話の普及率はインドネシアでは100%を超えているが、それ以外の国ではまだ超えていない。都市部や富裕層は1人で複数枚のSIMカードを保有しているが、地方や貧困層などとの格差が大きい。若者の多くは地方から職を求めて大都市圏に集まってくる。大都市に来ても全員が仕事に就ける訳ではない。それが大都市の治安を悪化することに繋がることもある。

インターネットへのアクセスはモバイル、Wi-Fiから
 今回取り上げる「MINT」は、メキシコ、インドネシア、ナイジェリア、トルコの4カ国である。日本でも2009年にパナソニックが拡販に取組む新興国市場として、「MINT」市場をあげたことを記憶してい携帯電話の加入者は各国で非常に伸びている。一方で3Gの加入者数とその比率およびインターネットの利用者数は決して多くない。
 パソコンでのインターネット利用者数よりもFacebook利用者数が多いのは、その利用者の多くが携帯電話からアクセスしている。
 一方で日本のように携帯電話は3GまたはLTEという環境ではない。多くの若者が携帯電話では「電話とショートメッセージ」のみに対応した2G(GSM)対応のプリペイドSIMカードを利用している。最近では携帯電話だけでなくスマートフォンも各国で浸透してきている。それでも3Gの加入者は多くはない。携帯電話やスマートフォンでのインターネットアクセスは無料や安価なWi-Fiスポットに行き、そこで接続していることが多い。3G対応でデータ通信が可能なSIMを購入しても、日本のように3Gネットワークが国のあらゆる所で完備されているとは限らない。それなら無料または安価で利用できるWi-Fiスポットで利用した方が効率的である。

まだまだ期待できる「MINT」市場

以下に「MINT」各国の人口ピラミッドを示す。上述したように若者が圧倒的に多い。ナイジェリアは15歳以下の人口だけで約6,800万もいる。経済も成長しており、これからますます中間層の人口も増大してくるだろう。彼らが購買力をつけることによってますます経済発展をしていくことだろう。

(表3)「MINT」の人口ピラミッド

(表3)「MINT」の人口ピラミッド

「MINT」が注目されているのは、人口(市場)規模や経済成長、外国企業の投資環境、政情の安定性などからだろうが、今回取り上げた「MINT」の特徴は多くの新興国で共通していることである。各国の国内経済は世界経済や各国の様々な環境に一時的に左右されることが多いが、中長期的に見ると「BRICs」も「MINT」もまだまだこれからも成長の余地がある。

*本情報は2013年4月19日時点のものである。

※1 パナソニック(2009)同社では、「MINTS+B」とは、メキシコ・インドネシア・ナイジェリア・トルコ・サウジアラビアの5カ国にバルカン諸国を加えた国々を「BRICs」と同様に拡販対象の市場とした。
http://panasonic.co.jp/jobs/about/global/
ロイター(2009)のインタビューにもある。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-12650420091126

※2 人口:世界銀行。GDP、経済成長率等:各国当局。出生率、平均寿命、15歳以下および60歳異常の人口:WHO

※3 携帯電話加入者等:各国当局。プリペイド、ARPU:各社。Facebook利用者:Socialbakers

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