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Global Perspective 2013
2013年4月25日掲載

インドネシアで活躍する「JKT48」

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

最近の日本ではAKB48グループをメディアで見かけない日はない。AKB48グループには上海とジャカルタでも同様のグループで活躍している。それぞれSHN48(上海)、JKT48(ジャカルタ)と称されている。日本のAKB48からそれぞれのチームに2名ずつ移籍して活躍していることから、AKBグループのファンの間では有名なのだろう。今回はインドネシアで活躍するJKT48とインドネシア市場に注目してみたい。とはいえ、筆者はそこまでJKT48について熟知している訳ではないため、網羅的に述べることは出来ない旨は御容赦頂きたい。

インドネシアで活躍するJKT48

JKT48は、2011年9月にメンバーのオーディションを行い、デビューした海外で初のAKB48グループである。日本ではあまり知られていないかもしれないが、インドネシアでは「ポカリスエット」や「ヤマハ」、「Sharp」のCMなどに出演しており、よく見かける。また筆者は2013年2月にインドネシア大学で講義をする機会があったが、学生らは日本のAKB48も地元のJKT48についてもよく知っていた。大活躍と言ってよいのではないだろうか。

(図1)ジャカルタ近郊の道路沿いにあるJKT48を起用した「ポカリスエット」の看板

(図1)ジャカルタ近郊の道路沿いにあるJKT48を起用した「ポカリスエット」の看板

(筆者撮影)

ジャカルタの「FX」というショッピングモールにはJKT48専用劇場が2012年9月にオープンし、多くのインドネシア人の若者で賑わっている。その様子は日本でAKBを応援するファンの姿と変わりない。

(図2)ジャカルタ「FX」のJKT48専用劇場の前にいるインドネシアの若者たち

(図2)ジャカルタ「FX」のJKT48専用劇場の前にいるインドネシアの若者たち

(筆者撮影)

通信事業者Indosatのコンテンツとして登場したJKT48

2013年4月からはインドネシアの2位の通信事業者IndosatのVAS(Value Added Service:付加価値サービス)としてJKT48のコンテンツが配信された(※1)。「JKT Card Battle(JKTカードバトル)」というゲームやショートメッセージ(SMS)で配信されるダイアリー、写真、音声、音楽(着メロ)などが有料で配信される。料金の例としてゲームは1日パッケージで550ルピア(約5.5円)、1週間で3,080ルピア(約30円)、1カ月で10,615ルピア(約106円)などから選べる。同社の音楽配信コンテンツを見ると、2013年4月24日時点でJKT48の曲がベスト10のうち1位と4位に2曲入っていた。これらの音楽コンテンツをダウンロードしてもファンは握手券を入手できる訳ではないから、純粋に楽曲として人気があるのだろう。

インドネシアは人口約2億4,000万で、携帯電話の加入者数が約2億8,100万で、加入率は117%である。これはプリペイドが主流のインドネシアでは人々が1人で複数枚のプリペイドのSIMカードを購入し、その数がカウントされるため、人口を超えている。各通信事業者がプリペイドSIMを購入し、チャージしてもらうために年中、様々なキャンペーンを実施している。主要な事業者6社が激しい顧客獲得競争を行っている。
 そのため人々も次から次にSIMカードを買い替えることに慣れているので、通信事業者に対して愛着はあまりない。通信事業者側もジャカルタのような大都市では「ネットワークの繋がりの良さ」と「料金」以外での差別化する要素がなくなりつつあり、またマーケティング費用も負担になっている。IndosatのプリペイドARPU(月間平均利用額)は約200円で、これはどこの事業者も同じ程度である。
 インドネシアでは日本と同様にスマートフォンも普及している。一方で3Gの普及率は16.6%と高くない。これは3G対応のSIMカードの販売されている率である。多くの人が無料または低価格のWi-Fiスポットでインターネットにアクセスしている。
 競争が激しいインドネシアの携帯電話市場において、IndosatがJKT48のコンテンツを配信することによって、どの程度の訴求力があり「差別化」になるのかは注目していきたい。JKT48は同社のテレビ広告にも出演している。

JKT48が出演するIndosatのテレビ広告

今までの広告出演の多くは日系企業であることから、日系企業と関係のないインドネシアのIndoastの広告に出演したこともインドネシア市場においてJKT48が受容されてきたことの証左ではないだろうか。

(図3)Indosatのショートメッセージ(SMS)の宣伝を行うJKT48

(図3)Indosatのショートメッセージ(SMS)の宣伝を行うJKT48

(出典:Indosat)

(図4)Indosatでの人気「音楽(着メロ)」ランキング
トップ10のうち1位と4位がJKT48の曲(2013年4月24日現在)

(図4)Indosatでの人気「音楽(着メロ)」ランキング<br>トップ10のうち1位と4位がJKT48の曲(2013年4月24日現在)

(出典:Indosat)

楽天インドネシアでもJKT48

楽天は2010年5月にインドネシアのメディアコムと合弁会社「PT楽天MNC」を設立した(出資比率は楽天が51%、メディアコムが49%)。そして2011年6月に共同でECモール「Rakuten Belanja Online」を開設、インドネシアでeコマース事業を展開した。まだインドネシアでは「Tokopedia」というECサイトの方が優勢な感はあるが、楽天も着実に浸透してきている。インドネシアでは中間層も増加し共働きも増えてきている。配送や支払いも整備されつつあることからeコマースはこれからも成長が期待できる。

そのインドネシア版の楽天においてデイリー人気商品ランキングが2013年4月24日時点で、トップ10のうち4位、6位、10位の3点がJKT48関連の商品であった。また、JKT48オフィシャルショップ(http://jkt48-official.shop.rakuten.web.id/)もインドネシア版の楽天にあり、TシャツやCDなどを販売している。また、同社のテレビCMにも出演している。

(図5)Rakuten Belanja Online(楽天インドネシア)でのデイリー人気商品ランキング(2013年4月24日時点)
トップ10のうち4位、6位、10位の3点がJKT48関連の商品

(図5)Rakuten Belanja Online(楽天インドネシア)でのデイリー人気商品ランキング(2013年4月24日時点)トップ10のうち4位、6位、10位の3点がJKT48関連の商品

出典:Rakuten Belanja Online(楽天インドネシア)

(図6)楽天インドネシアにあるJKT48のオフィシャルショップ

(図6)楽天インドネシアにあるJKT48のオフィシャルショップ

出典:Rakuten Belanja Online(楽天インドネシア)

JKT48が出演するRakuten Belanja Online(楽天インドネシア)のテレビ広告

今後も成長が期待されるインドネシア市場

インドネシアの平均年齢は28.5歳と非常に若い。中間層も急激に増加している。これからも様々な商品やサービスの消費が期待される。そのようなインドネシアで日本のAKB48の姉妹グループであるJKT48が活躍し人気があることは興味深い。他にも日本のマンガやアニメなどは人気がある。日本でのあらゆる情報がインターネットを経由して瞬時にインドネシアにも伝わる時代になっているから、インドネシアの若者も日本のことをたくさん知っている。「Oshimen」(推しメン)という言葉がそのまま現地通信事業者Indosatのプレスリリース文章でも使われている。JKT48のインドネシア語の曲でも所々に日本語が入っており、インドネシアの若者もそれに合わせて歌っている。またAKB48から移籍した日本人の高城さん、仲川さんは日本語とインドネシア語でTwitterやGoogle+で情報発信しており、多くのインドネシア人がフォローしている(※2)。

そして良い悪いは別として、インドネシアの多くの若者が様々なポップカルチャーなどに多くのお金を使っている。お金が流れることは経済発展にとって重要である。インドネシア人の平均月給は約25,000円(ジャカルタ)でこれからも成長が期待されている。現在のインドネシアでそのような分野で積極的な消費活動があることは無視できない。

筆者は幼少時の1980年代から約30年間インドネシアを往来しているが、当時日本の曲で一番有名だったのは五輪真弓の「心の友」であったことを思うと現在の日本のポップカルチャーがたくさん受け入れられているインドネシアは隔世の感を禁じ得ない。
 ジャカルタを訪問した際には、「FX」にあるJKT48劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。きっと新しいインドネシアを体験することができると思います。

(図7)インドネシアの人口ピラミッド
15歳以下の人口は全体の27%(約6,500万人)である。
60歳以上は全体の8%(約1,900万人)しかいない。

(図7)インドネシアの人口ピラミッド15歳以下の人口は全体の27%(約6,500万人)である。60歳以上は全体の8%(約1,900万人)しかいない。

(出典:US Census2012)

JKT48に関する現地での動画

以下にJKT48が出演している動画を掲載しておく。現地での様子などを垣間見ることができる。お楽しみください。

JKT48の現地でのライブの様子。日本と変わらない。

JKT48が出演するヤマハのテレビ広告。

JKT48に移籍した仲川さん、高城さんが出演するポカリスエットのテレビ広告。

JKT48が出演するSHARPの「AQUOS」

JKT48が出演する花王の「ロリエ」

JKT48が出演するグリコの「Pocky」

(参考)

  • JKT48 日本語ページもあり劇場のチケット予約もできる。

*本情報は2013年4月24日時点のものである。

※1 Indosat Press Release(2013) “Dukung Komunitas Penggemar
Indonesia Girl Group JKT48”Apr 8, 2013 (インドネシア語)
http://www.indosat.com/Public_Relations/Press_Release_Photo_Gallery/
Dukung_Komunitas_Penggemar_Indonesia_Girl_Group_JKT48

※2 高城さんの公式Twitter
仲川さんの公式Twitter
高城さんのGoogle+
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