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Global Perspective 2013
2013年5月27日掲載

「Sailfish OS」スマートフォンは「Jolla」自身が販売するのか

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

Nokiaで「MeeGo」開発を行っていたメンバーらが立ち上げたフィンランドのベンチャー企業「Jolla」は2013年5月20日、「Sailfish OS」を搭載したスマートフォンを公開した。「Jolla」と「Sailfish OS」については以前にも本レポートで取り上げたので会社設立の経緯などについてはそちらを参考にしてください。

今回公開したスマートフォンは「Sailfish OS」を搭載し、Androidアプリとの互換性もあるという。「Sailfish OS」はモバイルLinux「Mer」を基盤としている。「Mer」は「MeeGo」をベースにしており、互換性レイヤーを利用してAndroidのアプリケーションも動く。 端末価格は399.99ユーロ(約5万円)を想定しており、同社サイトでは事前予約も開始した。但し出荷は2013年末になる。

(図1)「Jolla」が公開した「Sailfish OS」搭載のスマートフォン

(図1)「Jolla」が公開した「Sailfish OS」搭載のスマートフォン

(図1)「Jolla」が公開した「Sailfish OS」搭載のスマートフォン

(出典:Jolla)

4.5インチディスプレイ、デュアルコアプロセッサー搭載、16GBの内部ストレージ、microSDカードスロット、取り替え可能なバッテリーを備えている。一部の地域では LTEにも対応する予定。また着せ替え可能な背面パネルがあり、背面パネルの種類によってOSの見た目や機能が変わる仕組みも用意されている。機能、価格ともにハイエンドな端末である。

「Jolla」自身が販売するのか?

今回、「Jolla」は自身のサイトで端末の事前予約を始めた。2012年末に「Sailfish OS」を公開した際には、導入を予定している通信事業者はフィンランド第3位のDNAと決定していたが、具体的に製造するメーカーについて決定していなかった。今回も製造を予定しているメーカーについては明らかにしていない。端末には「Jolla」の名前が入っていることから、OEMメーカーが製造した端末を「Jolla」のブランドとして販売することになるのだろう。

「Jolla」としては主要なメーカーから端末が出荷された方が彼らのマーケティングチャネルなどを活用して販売することも可能であるから、主要メーカーが「Sailfish OS」を搭載した端末を製造してくれることを期待していただろう。しかし、現在スマートフォンを製造している主要な端末メーカーはAndroidを中心としたスマートフォンの製造に集中しており、新たなOSを搭載して端末を製造する人的、資本などのリソースがある会社はない。まだ将来どうなるかわからない「Sailfish OS」の端末製造に踏み切る主要メーカーが現時点では登場していない。
現時点では「Jolla」のサイトで事前予約を行っているが、今後も「Jolla」自身が自社で販売を続けていくには販売チャネルやユーザーサポートなどの観点から限界があるだろう。とはいえ、主要メーカーでの製造、販売が難しい場合は自社で販売するしかない。もしかすると、現在の「Jolla」には複数の主要メーカーに対して新しいモバイルOSである「Sailfish OS」を配布して開発、製造をフォローするだけのリソースがないのかもしれない。

いずれにせよ、まずは「Sailfish OS」搭載端末を市場に投入することによって世界のユーザーに対して、端末の性能、既存Androidアプリケーションとの互換性やユーザインターフェースなどを体感してもらう必要がある。

(表1)モバイルOSの提供会社と主要な端末メーカー

(表1)モバイルOSの提供会社と主要な端末メーカー

(筆者作成)

「Jolla」の端末が出荷される2013年末に向けて

「Jolla」から「Sailfish OS」を搭載したスマートフォンが出荷されるのは2013年末とされている。Androidのアプリケーションと互換性があるとはいうものの、多数の端末バリエーションがあるわけでもなく、価格は399.99ユーロと決して安くはない。まずは「新しいものが好き」なイノベーターやアーリーアダプターといった層が購入するターゲットだろう。

2013年末には、サムスンやアップルといった主要メーカーからも新機種が登場するだろうし、さらには他のOSを搭載した端末も彼らに挑んでくるはずだ。新しいOS、端末であるから注目度も高いため、中途半端な作りでは市場に受け入れられないことは「Jolla」も十分理解しているだろう。それはもちろん「Jolla」だけの問題ではない。2012年から13年にかけて、新たなモバイルOSが続々と名乗りを上げている。新しいモバイルOSにとっては最初に市場に投入される端末は注目度が高く、利用者や市場の判断基準になるため非常に重要である。
スマートフォンとモバイルOSをめぐる競争環境はますます厳しくなってきている。モバイルOSの市場での動向はまだまだ注目が必要である。

【参考動画】

*本情報は2013年5月23日時点のものである。

(参考)

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